感染症ニュース

【感染症ニュース】風しん・先天性風しん症候群 国立感染症研究所「風疹急増に関する緊急情報:2019年1月9日現在」全文

 国立感染症研究所 感染症疫学センターは、2019年1月15日「風疹急増に関する緊急情報:2019年1月9日現在」を公開しました。その全文を掲載します。

 風疹流行に関する緊急情報:2019年1月9日現在
 国立感染症研究所感染症疫学センター

 2019年第1週の風疹患者報告数は45人であった(図1,2-1,2-2:2019年第1週は赤●で示す)。なお、第1週(12月31日〜1月6日)に診断されていても、2019年1月10日以降に遅れて届出のあった報告は含まれないため、解釈には注意が必要である。

 2008年の全数届出開始以降の風疹ならびに先天性風疹症候群の報告数を示す(図3)。過去には2012年に2,386人、2013年に14,344人の風疹患者が報告され、この流行に関連した先天性風疹症候群が45人確認されたが、2019年1月9日現在、2018年の流行による先天性風疹症候群の報告はない。(図3)。

 「風しんに関する特定感染症予防指針(厚生労働省告示第百二十二号:平成26年3月28日)」では、「早期に先天性風疹症候群の発生をなくすとともに、平成32年度までに風疹の排除を達成すること」を目標としている。先天性風疹症候群の発生を防ぐためには、妊婦への感染を防止することが重要であり、妊娠出産年齢の女性及び妊婦の周囲の者のうち感受性者を減少させる必要がある。また、現在の風疹の感染拡大を防止するためには、30〜50代の男性に蓄積した感受性者を早急に減少させる必要がある。このため、厚生労働省は2019年〜2021年度末の約3年間にかけて、これまで風疹の定期接種を受ける機会がなかった昭和37年4月2日〜昭和54年4月1日生まれの男性(現在39〜56歳)を対象に、風疹の抗体検査前置した上で、定期接種(A類)を行うことを発表した。

 2013年の流行以降は、2014年319人、2015年163人、2016年126人、2017年93人と減少傾向であったが(図2-1,2-2,3)、2018年は第42週(10月15日〜10月21日)の218人をピークとして、2,917人が報告された(図3)。

 地域別には東京都(8人)、神奈川県(7人)、福岡県(6人)、茨城県(3人)からの報告が多く、埼玉県、千葉県、富山県、愛知県、大阪府、山口県、佐賀県(各2人)からも複数報告された(図4、図6)。人口100万人あたりの患者報告数は全国で0.4人であり、佐賀県が2.4人で最も多く、次いで富山県の1.9人、山口県1.4人、福岡県1.2人、茨城県1.0人が続いた(図5)。関東地方からの報告数が22人で最も多いが、九州地方から9人、中部地方から6人、近畿地方から4人、中国地方から3人、東北地方から1人が報告された。北海道、四国地方からの報告はなかった(図4,6)。

 報告された風疹患者の症状(重複あり)は、多い順に発疹45人(100%)、発熱42人(93%)、リンパ節腫脹26人(58%)、結膜充血21人(47%)、関節痛・関節炎12人(27%)、咳9人(20%)、鼻汁6人(13%)、血小板減少性紫斑病0人(0%)、脳炎0人(0%)であった。その他として、咽頭痛2人、下痢2人、吐気1人、腹痛1人、血小板減少1人、倦怠感1人、眼脂1人、口内炎1人、中耳炎1人(重複有)が報告された。発熱、発疹、リンパ節腫脹の3主徴すべてがそろって報告されたのは26人(58%)であった。また、発熱初発日と発疹初発日が報告された39人のうち、発熱と発疹が同日に出現した人が11人(28%)、発熱より発疹が先に出現した人が4人(10%)、発疹より発熱が先に出現した人が24人(62%)であった。

 検査診断の方法(重複あり)は、PCR法によるウイルス遺伝子の検出21人(47%)、この内1人については遺伝子型の記載があり、1Eであった。血清IgM抗体の検出は12人(27%)で、ペア血清による風疹抗体有意上昇は1人(2%)であった。

 推定感染源は、45人中、特に記載がなかった者が39人(87%)と最も多く、不明と記載された者が2人(4%)であった。また、何らかの記載があった4人(9%)中、職場の同僚・職場で流行等、「職場」と記載があった者が2人であり、通勤途中1人の記載があった。
 
 2018年1月から届出票に追加された職業記載欄では、会社員と記載されていた人が21人と最も多いが、特に配慮が必要な職種として保育士が1人報告された。医療関係者の報告はなかった。

 国外での感染が推定される症例はなかった(図10)。

 風疹はワクチンによって予防可能な疾患である。今回報告を受けている風疹患者の中心は、過去にワクチンを受けておらず、風疹ウイルスに感染したことがない抗体を保有していない集団である。予防接種法に基づいて、約5,000人規模で毎年調査が行われている感染症流行予測調査の2017年度の結果を見ると、成人男性は30代後半(抗体保有率(HI抗体価1:8以上):84%)、40代(同:77〜82%)、50代前半(同:76%)で抗体保有率が特に低い(図11,12,13-1)。2018年の風疹患者報告の中心もこの年齢層の成人男性であることから(図14)、この集団に対する対策が必要である。一方、妊娠出産年齢の女性の抗体保有率(HI抗体価1:8以上)は概ね95%以上で高く維持されていたが、妊婦健診で低いと指摘される抗体価(HI抗体価<1:8,1:8,1:16)の割合は20代前半で20%、20代後半で24%、30代前半で16%、30代後半で12%、40代前半で16%、40代後半で19%存在することから(図13-2)、特に妊娠20週頃までの妊婦の風疹ウイルス感染には注意が必要である。

 日本において風疹ワクチンは、1977年8月〜1995年3月までは中学生の女子のみが定期接種の対象であった(図15)。1989年4月〜1993年4月までは、麻疹ワクチンの定期接種の際に、麻疹おたふくかぜ風疹混合(MMR)ワクチンを選択しても良いことになった。当時の定期接種対象年齢は生後12か月以上72か月未満の男女であった。1995年4月からは生後12か月以上90か月未満の男女(標準は生後12か月〜36か月以下)に変更になり、経過措置として12歳以上〜16歳未満の中学生男女についても定期接種の対象とされた。2001年11月7日〜2003年9月30日までの期間に限って、1979年4月2日〜1987年10月1日生まれの男女はいつでも定期接種(経過措置分)として受けられる制度に変更になったが、接種率上昇には繋がらなかった。2006年度から麻疹風疹混合(MR)ワクチンが定期接種に導入され、1歳と小学校入学前1年間の幼児(6歳になる年度)の2回接種となり、2008〜2012年度の時限措置として、中学1年生(13歳になる年度)および高校3年生相当年齢(18歳になる年度)の者を対象に、2回目の定期接種が原則MRワクチンで行われた。

 これらのワクチン政策の結果、近年の風疹患者の中心は小児から成人へと変化している。妊娠20週頃までの女性が風疹ウイルスに感染すると、胎児にも風疹ウイルスが感染して、眼、耳、心臓に障害をもつ先天性風疹症候群の児が生まれる可能性がある。妊娠中は風疹含有ワクチンの接種は受けられず、受けた後は2か月間妊娠を避ける必要があることから、女性は妊娠前に2回の風疹含有ワクチンを受けておくこと、妊婦の周囲の者に対するワクチン接種を行うことが重要である。

 また、2013年の流行時には64人の血小板減少性紫斑病と11人の脳炎合併が報告されたが、2018年は13人の血小板減少性紫斑病と1人の脳炎合併が報告された。30〜50代の男性で風疹に罹ったことがなく、風疹含有ワクチンを受けていないか、あるいは接種歴が不明の場合は、早めにMRワクチンを受けておくことが奨められる。風疹の抗体検査、風疹含有ワクチン接種に対する費用助成をしている自治体が増加している。居住地の自治体のホームページ等を確認して、対象者に該当する場合は、風疹の抗体検査、風疹含有ワクチンの接種を積極的に受ける事が望ましい。風疹はワクチンで予防可能な感染症である。

<※本文に添付の図は、出典先のpdfをご覧ください>
▼出典 国立感染症研究所 感染症疫学センター
「風疹急増に関する緊急情報:2019年1月9日現在」2019年1月15日掲載
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/2019/rubella190109.pdf
感染症ニュース一覧
予防接種における間違いを防ぐために

注意してほしい感染症

2019年1月期

インフルエンザ(季節性)
ノロウイルス感染症
伝染性紅斑(りんご病)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ
咽頭結膜熱
溶連菌感染症
感染性胃腸炎
水痘
手足口病
伝染性紅斑
突発性発しん
百日咳
ヘルパンギーナ
流行性耳下腺炎
急性出血性結膜炎
流行性角結膜炎
マイコプラズマ肺炎
情報元:IDWR2019年第1週(2018年12月31日〜2019年1月6日)

流行の様子

インフルエンザ(季節性) ノロウイルス感染症 伝染性紅斑 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 

インフルエンザ(季節性)

1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続きます。通常は1週間前後の経過で軽快しますが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴です。主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染です。他に接触感染もあるといわれています。
インフルエンザの予防には、予防接種を受けることが有効です。予防接種を受けることで、発症率、重症化率の低減につながると言われています。インフルエンザの感染対策とてしては、飛沫感染対策として、咳エチケット。接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト―ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。
情報元:日本医師会、日本薬剤師会、日本大学薬学部、(株)EMシステムズ
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

ノロウイルス感染症

主な症状は、はき気、おう吐及び下痢です。通常は便に血液は混じりません。あまり高い熱とならないことが多いです。小児ではおう吐が多く、おう吐・下痢は一日数回からひどい時には10回以上の時もあります。
感染してから発病するまでの「潜伏期間(せんぷくきかん)」は1〜2日と他の感染症と比較して短い方であり、症状の持続する期間も数時間〜数日(平均1〜2日)と比較的短期間です。
既に他の病気があったり、大きく体力が低下している等がなければ、重症化して長い間入院しなければならないことはまずありませんが、ごくまれにおう吐した物を喉に詰めて窒息(ちっそく)することがありますので注意してください。

情報元:日本学校保健会
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

伝染性紅斑

妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。
4〜5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。
感染後10〜20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。
情報元:IDWR2019年第1週(2018年12月31日〜2019年1月6日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

12月のピークに向かって患者報告数が増加していくことが予想されます。今後とも溶連菌感染症の患者数の推移には注意が必要です。
溶連菌感染症の症状が疑われる場合は、速やかにかかりつけ医を受診しましょう。溶連菌感染症と診断され、抗菌薬が処方された場合は、医師の指示に従うことが重要です。途中で抗菌薬をやめた場合、病気の再燃や糸球体腎炎などの合併症を来すことが知られています。
溶連菌感染症は、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な症状が現れることは少ないといわれています。症状としては2〜5日の潜伏期間を経て、38度以上の発熱と全身倦怠感、のどの痛みによって発症し、しばしばおう吐を伴います。
また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発しんが広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、十分な抗菌薬の投与による治療をおこなわないと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などを引き起こすことが知られています。
主な感染経路は、発症者もしくは保菌者(特に鼻咽頭部に保菌している者)由来の飛沫による飛沫感染と濃厚な直接接触による接触感染です。物品を介した間接接触による感染は稀とされていますが、患者もしくは保菌者由来の口腔もしくは鼻腔由来の体液が明らかに付着している物品では注意が必要です。発症者に対しては、適切な抗菌薬による治療が開始されてから48時間が経過するまでは学校、幼稚園、保育園での集団生活は許可すべきではないとされています。
情報元:IDWR2019年第1週(2018年12月31日〜2019年1月6日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
びせいぶつ芸能社
風疹ゼロプロジェクト
「水ぼうそう・帯状疱疹」ホントのところ

予防接種トピックス

感染症発生動向調査による小児科定点(約3,000か所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000か所)からの報告数に基づいたデータ解析によります。
感染症発生動向調査とは(厚生労働省ホームページより)
すこやか201 知ってアクション!感染症の予防
すこやか201 知ってアクション!感染症の予防

予防接種スケジュール

※国立感染症研究所サイト

インフルエンザ情報

情報元:日本医師会、日本薬剤師会、日本大学薬学部、(株)EMシステムズ
インフルエンザ 1週間の推定患者数は約168万人、更 に患者数が増加して大規模な流行となる可能性があり、警 戒が必要(更新:2019/1/16)
 インフルエンザの1週間の推定患者数は約168万人で あり、前週の値(約・・・
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インフルエンザ 1週間の推定患者数は約168万人、更 に患者数が増加して大規模な流行となる可能性があり、警 戒が必要(更新:2019/1/16)
 インフルエンザの1週間の推定患者数は約168万人で あり、前週の値(約60万人)よりも3倍近い増加となり ました。既にインフルエンザの1週間当たりの患者数はか なり大きなものとなっていますが、この状況は今週も継続 するものと予想されます。 推定受診者数多い順…福井県、三重県、北海道、熊本県、 岐阜県、愛知県、高知県、鹿児島県、奈良県、静岡県 (監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長・国立感染 症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏)
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