「感染症・予防接種ナビ」は、広島テレビ放送が運営しており、厚生労働科学研究「ワクチンで予防可能な疾病のサーベイランスとワクチン効果の評価に関する研究」(研究代表者・鈴木基)の 「ワクチンの有効性、安全性、啓発に関する研究」(研究分担者・岡部信彦)の研究活動の一部に協力しています。
子育てに欠かせない「正しく信頼できる」感染症情報の発信と予防接種の啓発を、公的機関や専門医の監修と取材協力のもと、分かりやすく伝えるサイトです。
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新型コロナウイルス感染症

2019年末頃より「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」が中国の武漢市を中心に出現し、世界中で患者数が増加しています。

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感染症ニュース

【感染症ニュース】九州や大阪で本格的流行の兆し 乳幼児にインパクトが大きいRSウイルス感染症

 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年10週(3/6〜12)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたりの報告数は0.35。前週よりも0.01ポイント増加しました。都道府県別では、北海道の1.79をはじめ、佐賀と鹿児島で1を超えています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに感染するとされています。

 通常は感染してから2〜8日、典型的には4〜6日の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁などの症状が続きますが、大人や何度も感染している子どもでは、発症しても軽いかぜ程度か、あるいは無症状な場合もあります。

大人には単なるかぜでも、乳幼児がかかると命に関わることも

 しかし、初めて感染する乳幼児では、約7割は鼻汁など上気道炎症状のみで数日のうちに軽快するものの、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などの症状が現れます。特に乳児期早期(生後数週間〜数か月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。生後1か月未満の赤ちゃんがRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「大阪府でもRSウイルス感染症は増加しており、定点当たりの報告数は、前週との比較で60%増でした。RSウイルス感染症は都市部で流行が始まり、地方へと広がっていく傾向があります。現在九州地方や、大阪をはじめとする近畿地方で増加の兆しがありますが、これから中国地方や東海、関東地方にも広がっていくと予測され、要注意の感染症です」としています。

2021年には大流行!今年は?

 RSウイルス感染症は、過去5年間では2020年を除いて毎年流行しています。2018、19年のピークは9月頃でしたが、2021年は7月頃にピークを迎え、定点当たりの報告数が6ポイントまで上がりました。去年(2022年)は6月頃から全国的に増え始め、7月にピークが。そしてその後も9月に再び増加傾向になるなど、流行は長引きました。

 安井医師は、「RSウイルス感染症は、かつては秋から冬に流行のピークがあったのですが、徐々に早まり出して、近年は夏にピークを迎えています。ですので、今年これからどのように流行が進み、いつピークを迎えるかという予測は大変難しいです。ただ参考にしているのは、2021年の流行で、この年も春のこの時期から大阪などの都市部でRSウイルスの患者数が増え始めました。新型コロナの影響による移動制限もなくなり、これからは旅行やビジネスなど、人の移動が活発になってくると思いますが、それに合わせてRSウイルスも全国的に広がっていくのではないかと思っています」と語っています。

感染経路、予防方法、治療方法は?

 RSウイルス感染症は予防が難しい病気です。感染経路は飛沫感染と接触感染で、感染している人の咳やくしゃみ、会話している時の飛沫を浴びることで感染します。また、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり舐めたりすることで感染するので、保育所などで集団感染が起こることがあります。

 予防についてのワクチンは現在ありません。接触感染の予防としては、子どもたちが日常に触れる部分(おもちゃや手すり)などはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒し、流水・石鹸による手洗いかアルコール製剤による手指衛生が有効です。また特効薬はなく、治療は基本的には対症療法(症状を和らげる治療)になります。

少しでもかぜの症状があるときには、赤ちゃんに近づかないで

 安井医師は、「乳幼児はあまり外に行くことはないと思うので、RSウイルスに感染する原因は、外出先から帰ってきた大人やきょうだいからうつるということが多いと思います。赤ちゃんに接する人は、手指衛生などを心がけて、少しでも咳やくしゃみなどの症状があるときは、極力接しないようにする。どうしても接しなければならない時はマスクをして感染対策をするなど、とにかく乳幼児をRSウイルスから守っていただきたいと思います」と話しています。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年10週(3/6〜12)
大阪府:感染症発生動向調査週報2023年10週(3/6〜3/12)
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
感染症ニュース一覧
予防接種における間違いを防ぐために

注意してほしい感染症

2023年3月期

新型コロナウイルス感染症
インフルエンザ
ヒトメタニューモウイルス感染症
感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症)

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ
咽頭結膜熱
溶連菌感染症
感染性胃腸炎
水痘
手足口病
伝染性紅斑
突発性発しん
百日咳
ヘルパンギーナ
流行性耳下腺炎
急性出血性結膜炎
流行性角結膜炎
マイコプラズマ肺炎
情報元:IDWR2023年第10週(2023年3月6日〜2023年3月12日)

流行の様子

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) インフルエンザ(季節性) ヒトメタニューモウイルス感染症 ノロウイルス感染症
 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

一時期の流行状況からは、落ち着きをみせているものの、未だ流行は続いています。
集団生活の中で、子どもの間で感染が拡がっていくことが予測されます。また、学校での集団感染が発生し、子どもから家庭内にウイルスが持ち込まれるケースも増えると危惧しています。
学校でできる感染対策として、マスク着用や手洗いの励行に加え、教室内ではこまめな換気を行ってください。何より重要なのが、多くの方がワクチンを接種することです。
2022年9月から国内でも、オミクロン株対応ワクチンの接種が始まっています。
しかし、ワクチンを接種していても、感染しないわけではなく、周囲にうつさないわけでもありません。ワクチンを接種した後も決して安心しないでください。
ワクチン接種に加え、感染対策を徹底することで、ようやくウイルスに立ち向かえるのです。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

インフルエンザ(季節性)

インフルエンザは集団生活の場で広がる可能性があり、感染動向に注意が必要です。2月末時点で、ピークアウトの兆候が見え始めた感もありますが、手洗い・マスクの着用など基本的な感染対策はとるようにしてください。
インフルエンザの予防には、予防接種を受けることが有効です。3シーズンぶりの流行となりましたが、乳幼児が初めて感染すると重症化しやすいです。予防接種を受けることで発病率、重症化の低減につながると言われています。
予防接種を受けてから、抗体ができるまで約2週間かかり、効果は約5か月間持続しますので、流行前に早めに接種することを、おすすめします。
情報元:日本医師会、日本薬剤師会、日本大学薬学部、(株)EMシステムズ
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

ヒトメタニューモウイルス感染症

ヒトメタニューモウイルス感染症は、年代に関係なく感染します。2022年は夏に感染報告を多く耳にしましたが、例年はこの時期に流行します。
症状は、咳・鼻水・上気道炎ですが、重症化すると気管支炎などの下気道炎や肺炎を引き起こします。
また、発熱症状が、4-5日間続くこともあります。中でも注意が必要なのは、お子さんや高齢者です。ウイルスが発見されたのは、2001年と比較的最近で、国内の流行を示す全国的な統計データが無いのが現状です。
子どもは、生後6ヶ月頃から感染が始まりますが、一度の感染ではじゅうぶんな免疫が獲得できず、大人になっても感染を繰り返します。一方、感染を繰り返すごとに症状は軽くなります。初感染の子どもや免疫が低下している高齢者は注意が必要です。飛沫・接触による感染により広がるとみられており、マスク着用・手指衛生、そして感染者とタオルの共用を避けることが大切です。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

ノロウイルス感染症

感染性胃腸炎も注意してほしい感染症です。中でも、ノロウイルス感染症は、保育所や幼稚園・小学校などの集団生活でも多くみられる感染症です。
ノロウイルスに感染すると、多い時には10回以上のおう吐や下痢の症状が続きます。そのおう吐物や下痢便には、ウイルスが大量に含まれ、わずかな量のウイルスが体の中に入っただけで、容易に感染します。ノロウイルス感染症は有効とされるワクチンや薬がまだ開発されていないため、対症療法を行います。下痢止めを飲むと、ウイルスが体内に残ってしまうため、飲まないようにしましょう。嘔吐や下痢が続いている時は、脱水症状に注意して下さい。水分を補給する際には、電解質輸液が効果的です。
ウイルスが付着していると考えられる物品の消毒については、次亜塩素酸ナトリウム系(塩素系消毒剤)を用いて行いましょう。使用する濃度は500ppm以上が推奨されます。嘔吐や下痢などの症状が改善しても24時間は、自宅で様子をみるようにしましょう。症状がなくなったからといって、登園もしくは登校させると、集団感染につながるおそれがあります。
情報元:日本学校保健会
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
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「水ぼうそう・帯状疱疹」ホントのところ

予防接種トピックス

感染症発生動向調査による小児科定点(約3,000か所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000か所)からの報告数に基づいたデータ解析によります。
感染症発生動向調査とは(厚生労働省ホームページより)
すこやか201 知ってアクション!感染症の予防
すこやか2019 知ってアクション!感染症の予防

予防接種スケジュール

※国立感染症研究所サイト

インフルエンザ情報

情報元:日本医師会、日本薬剤師会、日本大学薬学部、(株)EMシステムズ
厚生労働省の2023年3月3日発表の「インフルエンザ に関する報道発表資料」では、2023年第8週(2/2 0−2/26)のインフルエンザ定点(全国約5000定 点医療機関)あたりの報告数は全国で11.32人。前週 の12.・・・
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厚生労働省の2023年3月3日発表の「インフルエンザ に関する報道発表資料」では、2023年第8週(2/2 0−2/26)のインフルエンザ定点(全国約5000定 点医療機関)あたりの報告数は全国で11.32人。前週 の12.56人から減少しました。都道府県別にみると、 石川で48.17人・岩手で41.37人と増加した地域 はあるものの、大都市圏では大阪14.74人(前週22 .09人)・東京8.53人(前週10.04人)・福岡 15.45人(前週19.84人)と落ち着きを見せ始め ました。感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井 良則医師は「3月は気候も穏やかになっていくため、流行 しているA型は、今後収束していく可能性が高いです。大 阪府ではインフルエンザが3週連続で減少し、ピークアウ トしたと言ってもいいでしょう。関東地方では今シーズン 大きな流行は見られませんでしたが、季節的に減っていく と考えられます。気がかりなのは、インフルエンザの流行 が収まったのちに、新型コロナの報告数がどのように推移 するのかです。こちらには注視が必要と考えています。」
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