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新型コロナウイルス感染症

2019年末頃より「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」が中国の武漢市を中心に出現し、世界中で患者数が増加しています。

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感染症ニュース

【感染症ニュース】「突然死につながる無呼吸発作も」RSウイルス感染症の患者が3週間ぶり増加 生後3か月以内の乳児への感染には特に注意

 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年19週(5/8〜14)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたりの報告数は1.04。3週間ぶりに増加しました。都道府県別では、和歌山の4.17を筆頭に、北海道、福井、大阪、兵庫、奈良、山口、鹿児島で2を超えています。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「ゴールデンウィークでやや報告数は減少していましたが、ゴールデンウィーク明けの19週のデータでは再び増加に転じました。この傾向はこれからも続くのではないかと予測しています。以前は例年冬に流行が広がる感染症として知られていましたが、年々流行時期が早くなり、去年や一昨年は7月頃にピークがありました。一昨年は1週間で2万人に迫る患者が発生する大きな流行となりましたが、今年も同様の流行になるのではないかと心配しています」と語っています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症は呼吸器の感染症で、症状としては、軽い風邪のような症状から、重い肺炎まで様々です。子どもがヒューヒュー、ゼイゼイと呼吸を苦しそうにしているときは、RSウイルス感染症かもしれません。

 RSウイルス感染症の原因となるRSウイルスは、日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発症を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに少なくとも1度は感染するとされています。

 RSウイルス感染症は、大人や、何度も感染したことがある子どもにとっては、風邪程度の症状で済むか、あるいは全く症状が出ない場合もあります。しかし、乳幼児、特に生後数週間から数か月の赤ちゃんがRSのウイルスに初めて感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状になることがあり、呼吸をすることが難しくなることもあります。突然死につながる無呼吸発作を起こすこともあります。また、高齢者においても急性のしばしば重症の下気道炎を起こすことがあり、過去には高齢者施設など長期療養施設内で集団感染が発生しています。

 RSウイルス感染症を予防するワクチンはありません。また、感染しても特効薬はなく、基本的には症状を和らげる対症療法で治療します。

RSウイルスはどのように感染?

 RSウイルス感染症は感染者の咳やくしゃみ、または会話をした際に飛び散る飛沫を浴びて吸い込む飛沫感染や、感染している人との直接の濃厚接触や、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり、またはなめたりすることによる間接的な接触感染で感染します。

RSウイルスの予防方法は?

 乳幼児にRSウイルス感染症をうつすのは、周りの大人やきょうだいなどです。少しでも咳など風邪のような症状があるときは、なるべく乳幼児に接しないようにすること。また接するときはマスクを着用することが重要です。また、子どもたちが日常に触れるおもちゃや手すりなどはこまめに消毒をする。手洗いやアルコール製剤による手指衛生も重要です。

様々な感染症が流行り始めている

 安井医師は、「新型コロナウイルス感染症が流行していたこの3年、様々な感染症が本来流行する時期に流行しないということが続いていましたが、咽頭結膜熱や溶連菌感染症など、この時期に流行していた感染症が今年は増加傾向にあります。新型コロナもこれから再流行の可能性もありますし、RSウイルス感染症も含めて、様々な感染症に注意しながら日々生活を送っていただければと思います」と語っています。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年19週(5/8〜14)、RSウイルス感染症とは
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
感染症ニュース一覧
予防接種における間違いを防ぐために

注意してほしい感染症

2023年5月期

RSウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
咽頭結膜熱

監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ
咽頭結膜熱
溶連菌感染症
感染性胃腸炎
水痘
手足口病
伝染性紅斑
突発性発しん
百日咳
ヘルパンギーナ
流行性耳下腺炎
急性出血性結膜炎
流行性角結膜炎
マイコプラズマ肺炎
情報元:IDWR2023年第19週(2023年5月8日〜2023年5月14日)

流行の様子

RSウイルス感染症 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 咽頭結膜熱
 

RSウイルス感染症

報告数
北海道
277
青森
26
岩手
26
宮城
31
秋田
10
山形
7
福島
37
茨城
12
栃木
16
群馬
20
埼玉
122
千葉
65
東京
95
神奈川
57
新潟
63
富山
30
石川
31
福井
64
山梨
2
長野
11
岐阜
59
静岡
46
愛知
122
三重
37
滋賀
59
京都
100
大阪
531
兵庫
265
奈良
90
和歌山
125
鳥取
3
島根
6
岡山
13
広島
103
山口
96
徳島
11
香川
11
愛媛
50
高知
7
福岡
174
佐賀
25
長崎
38
熊本
33
大分
52
宮崎
46
鹿児島
114
沖縄
25
本格的な流行に入りつつあり、全国的にも注意が必要です。
4月末時点では、西日本が流行の中心ですが、関東でもジワジワと増えており、流行が始まりそうな印象です。育児・保育に携わる方は、流行状況に注視してください。
RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2〜8日、一般的には4〜6日で発症します。特徴的な症状である熱や咳は、新型コロナウイルス感染症と似ており、見分けがつきにくいです。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。
RSウイルス感染症は乳幼児に注意してほしい感染症で、特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。お子さんに発熱や呼吸器症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談してください。
感染経路は、飛沫感染や接触感染です。ワクチンはまだ実用化されていないため、手洗い、うがい、マスクの着用を徹底しましょう。家族以外にも保育士など、乳幼児と接する機会がある人は特に注意が必要です。
情報元:IDWR2023年第19週(2023年5月8日〜2023年5月14日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

一時期の流行状況からは、落ち着きをみせていますが、新型コロナウイルス感染症が無くなった訳ではありません。
2023年5月から、5類に移行しますが、気がかりなのはこれまで、国内で流行をみせていなかったBA2系統の「XBB.1.5」が検出されていることです。
重症化するかどうかなどの臨床データがじゅうぶんではない状況です。
現在、入院される方は少なくなったものの、症状が悪化され搬送されてくるのは、ワクチン未接種の方が多い印象です。
しかし、ワクチンを接種した後も、基本的な感染対策を続けるなど決して油断しないでください。体調不良の場合や医療機関・高齢者施設を訪問の際はマスクの着用は必須です。
気がかりなのは、今後、感染者数がどのように推移するかです。4-5月はこれまでも増えていた時期です。引き続き、注意が必要といえるでしょう。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、例年、冬季および春から初夏にかけての2つの報告数のピークが認められています。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がるので、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。
感染すると、2〜5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。
情報元:IDWR2023年第19週(2023年5月8日〜2023年5月14日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

咽頭結膜熱

咽頭結膜熱は、例年6月から7月にかけて流行がピークを迎える感染症です。症状は風邪とよく似ていますが、発熱、咽頭痛、結膜炎です。発熱は5日間ほど続くことがあります。眼の症状は一般的に片方から始まり、その後、他方に症状があらわれます。高熱が続くことから、新型コロナウイルス感染症とも間違えやすい症状です。吐き気、強い頭痛、せきが激しい時は早めに医療機関に相談してください。
感染経路は、主に接触感染と飛沫感染です。原因となるアデノウイルスの感染力は強力で、直接接触だけではなくタオル、ドアの取っ手、階段やエスカレーターの手すり、エレベーターのボタン等の不特定多数の人が触る物品を介した間接的な接触でも、感染が広がります。特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となります。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもあります。
予防方法は、流水・石鹸による手洗いとマスクの着用です。物品を介した間接的な接触でも感染するため、しっかりと手を洗うことを心がけてください。
情報元:IDWR2023年第19週(2023年5月8日〜2023年5月14日)
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
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予防接種トピックス

感染症発生動向調査による小児科定点(約3,000か所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000か所)からの報告数に基づいたデータ解析によります。
感染症発生動向調査とは(厚生労働省ホームページより)
すこやか201 知ってアクション!感染症の予防
すこやか2019 知ってアクション!感染症の予防

予防接種スケジュール

※国立感染症研究所サイト

インフルエンザ情報

情報元:日本医師会、日本薬剤師会、日本大学薬学部、(株)EMシステムズ
厚生労働省の2023年3月3日発表の「インフルエンザ に関する報道発表資料」では、2023年第8週(2/2 0−2/26)のインフルエンザ定点(全国約5000定 点医療機関)あたりの報告数は全国で11.32人。前週 の12.・・・
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厚生労働省の2023年3月3日発表の「インフルエンザ に関する報道発表資料」では、2023年第8週(2/2 0−2/26)のインフルエンザ定点(全国約5000定 点医療機関)あたりの報告数は全国で11.32人。前週 の12.56人から減少しました。都道府県別にみると、 石川で48.17人・岩手で41.37人と増加した地域 はあるものの、大都市圏では大阪14.74人(前週22 .09人)・東京8.53人(前週10.04人)・福岡 15.45人(前週19.84人)と落ち着きを見せ始め ました。感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井 良則医師は「3月は気候も穏やかになっていくため、流行 しているA型は、今後収束していく可能性が高いです。大 阪府ではインフルエンザが3週連続で減少し、ピークアウ トしたと言ってもいいでしょう。関東地方では今シーズン 大きな流行は見られませんでしたが、季節的に減っていく と考えられます。気がかりなのは、インフルエンザの流行 が収まったのちに、新型コロナの報告数がどのように推移 するのかです。こちらには注視が必要と考えています。」
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