水痘(水ぼうそう)とは
2020年9月4日更新
 
 
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概要

 水痘(水ぼうそう)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に初めて感染(初感染)した時に発症する急性のウイルス感染症です。水痘は麻疹と並んで感染力が極めて強く、水痘に対する免疫がなければ感染後2週間程度の潜伏期間を経て発疹が出現します。日本では小児を中心に年間約100万人が水痘に罹患していましたが、2014年10月から水痘ワクチンが定期接種となり、5歳未満の定点医療機関からの患者報告数は定期接種化直後の2015年から大きく減少しました。一方で、定期接種の機会のなかった成人の入院報告数が近年増加傾向にあります。

感染経路

 水痘の感染力は極めて強く、空気(飛沫核)感染、飛沫感染、接触感染によってウイルスは上気道から侵入し、ウイルス血症を経て、通常は2週間前後(10〜21日)の潜伏期間を経て発病すると言われています。水痘を発病している者と同じ空間を共有(同じ部屋、同じ飛行機の中等)した場合、その時間がどんなに短くても水痘に感染している可能性があります。この場合水痘の空気感染を防ぐことのできる物理的手段(N95等のろ過マスクの装着や空気清浄機の運転)として効果的なものは残念ながらありません。水痘の感染発病を防ぐことのできる唯一の予防手段はワクチンの接種のみです。

症状

 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)がまず上気道に感染し、その後ウイルスは血流に乗ってウイルス血症となります。このウイルス血症の段階を経て全身の発疹、倦怠感、発熱等の症状が出現していわゆる発症するのは通常は感染後2週間前後(10〜21日)を経てからです。水痘の特徴といえば全身性の発疹であり、この発疹は最初に頭皮、次いで体幹、四肢の順に出現しますが、体幹部の発疹数が最も多くなります。発疹は通常かゆみ(そう痒感)を伴っており、紅斑→丘疹→水疱→痂皮へと変化していきます。数日にわたって新しい発疹が次々と出現するので、急性期には紅斑、丘疹、水疱、痂皮のそれぞれの段階の発疹が混在することも水痘の特徴の1つです。健常な子どもが水痘を発症した場合、その殆どは数日間で治癒していきますが、まれではあるものの細菌の二次感染や髄膜脳炎、小脳失調、肺炎、肝炎などの合併症を起こすことがあります。成人や妊婦が水痘を発症した場合はこれらの合併症が起こる確率は小児よりも高くなります。また、有効な抗ウイルス薬が開発され予後は改善したものの、現在においても白血病や抗癌剤投与、免疫抑制剤投与、臓器移植後等で免疫抑制状態にある者が水痘を発症した場合、重症化して生命に関わることも珍しくありません。新生児が水痘を発症した場合も重症化します。

治療

 VZVの抗ウイルス薬であるアシクロビルやバラシクロビルを水痘が発症した後速やかに投与することによって、水疱の数と持続、かゆみ(そう痒感)の持続、発熱の期間の短縮などの症状の軽減が期待できます。水疱に対しては痒みを軽減して細菌の二次感染を防ぐことを目的とした軟膏が処方されて塗布されることが一般的です。

帯状疱疹について

 水痘を発症し、治癒したあとでも、VZVは終生その発症者の知覚神経節に潜伏感染し続けます。このVZVが潜伏感染している人が数年〜数十年を経て精神的ストレスや体力の低下、糖尿病等の他の疾患の合併等で免疫力が低下した状態となった時にこのVZVがその人の体内で「再活性化」を起こし、潜伏感染している神経節から神経束を傷害しながら前駆痛を伴いながら下行し、片側性の皮膚分節知覚帯(デルマトーム)に帯状疱疹を生じることがあります。前駆痛から始まって、皮疹の回復後も長期に続くことが多く、これを帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼んでいます。

 3人に1人が80歳になるまでに帯状疱疹を経験すると推定されています。また、1997年〜2017年の21年間にわたって宮崎県の皮膚科医会で実施された調査では、人口は減少しているにもかかわらず、発症率の変化率は全年代で徐々に増加しています。特に、年代別にみると、2014年10月の定期接種化後は、20〜40代の子育て世代での発症率が上昇しています。(国立感染症研究所ホームページ:https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2433-iasr/related-articles/related-articles-462/8235-462r07.html参照)

ワクチンについて

 水痘ワクチンは世界にさきがけて日本で開発された生ワクチンです。国内では1987年以降、任意接種のワクチンとして健康小児を中心に接種されてきましたが、2014年10月1日からようやく我が国でも他の国々(米国を含むアメリカ大陸各国、欧州、中国、韓国)と同様に定期接種(A類疾病)となりました。水痘の定期予防接種のスケジュールは以下の通りです(感染症・予防接種ナビ水痘ワクチン参照:http://kansensho.jp/loc/article.html?id=VC00000009)。水痘ワクチンは、前述したように白血病等に罹患して免疫抑制状態となっている患者が水痘を感染発症した場合に、重篤化もしくは致死的になることを防ぐ目的で開発されました。従って一定の基準を満たせば免疫抑制状態にある者でも接種は可能であり、ワクチン接種による重篤な副反応は、他の生ワクチンと比較しても非常に少ないです。一方、1回の接種で水痘の重症化はほぼ100%防げるものの、接種後に水痘に罹患すること(Breakthrough水痘と呼び、殆どが軽症です)も1回接種者の6〜12%に及びます。水痘ワクチンを2回接種した場合の効果は99%以上であると言われていますので、今回の定期接種化では水痘ワクチンの2回接種(1回目の接種から3か月以上あけて、標準的には6〜12か月あけて)することが推奨されています。

今後の動向について

 日本では2014年10月から水痘ワクチンが定期接種化され、定期接種化後、5歳未満の水痘報告数が速やかに減少しました(2000〜2011年平均比減少率:-78%)。1〜4歳は定期接種対象年齢であり、0歳の減少は幼児への水痘ワクチン2回接種の間接効果を示すものと考えられています。

 一方で、水痘罹患者、あるいは、入院例の中心となる年齢が年長児・成人へシフトしてきています。成人は重症化のリスクが高いです。

 また、帯状疱疹については、全世代で徐々に増加しており、特に定期接種化後、20〜40代の若年層で増加率が大きくなっています。従来、ブースター効果(自然感染による免疫の増強)により帯状疱疹が少なくなっていた子育て世代である若年層は、定期接種による水痘の減少によってその影響が少なくなり、その影響で発症率が上昇したものと思われます。

 2016年3月に阪大微研が製造する『乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」』について、「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」に対する「効果・効能」が追加承認されました(任意接種)。

参考資料として
・国立感染症研究所「水痘とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html
・国立感染症研究所(水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-idwrs/9159-varicella-20191016.html
・国立感染症研究所(帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタディ(1997-2017)」アップデート)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2433-iasr/related-articles/related-articles-462/8235-462r07.html
・岡部信彦,多屋馨子:予防接種に関する Q&A 集.一般社団法人日本ワクチン産業 協会,2019年
・厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 資料)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000213473.html
・ 国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチン ファクトシート」 平成 29(2017)年2 月10 日
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000207090_1.pdf
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
更新:2020/9

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