【感染症ニュース】千葉・埼玉で麻しん(はしか)患者相次ぎ確認… 医師「万博開催期間は前後も含め注意」
2025年3月12日更新
外国旅行での感染に注意!
外国旅行での感染に注意!
麻しん(はしか)は、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。感染すると約10日後に発熱やせき、鼻水と言った風邪のような症状が現れます。2〜3日熱が続いたあと、39℃以上の高熱と発しんが出現します。肺炎や中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎を発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1000人に1人と言われています。麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症すると言われており、発症者と同じ部屋にいるだけで感染することがあります。

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千葉・埼玉で患者報告

千葉県が2025年3月8日に発表した『麻しん(はしか)患者の発生について』によると、前日の3月7日、市川保健所管内の医療機関から麻しん患者の届出があり、検査を実施したところ、同日に陽性と判明。感染したのは、40代の男性で発熱、咳、鼻汁、結膜充血、発疹の症状があり、ワクチンの接種歴で、2月12日から15日にベトナムへの滞在歴があったとのことです。また、埼玉県が3月10日に発表した『麻しん(はしか)患者の発生について』よると、2025年3月6日に、0歳の男の子が、麻しんを発症。発熱、咳、鼻汁、発疹、結膜充血の症状があると言うことです。男の子は、今年1~2月に、ベトナムへの滞在歴がありました。その他、兵庫県明石市でも、ベトナムに渡航歴のある方の麻しんの患者発生が報告されています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は「今週も、麻しん患者の発表が各地でありました。海外で感染し国内に持ち込まれたと考えられるケースが多くなっています。今年に入ってからの患者報告の多くは、ベトナムでの滞在歴が報告されており、渡航者や帰国者は、注意が必要です。麻しんは、ベトナムなどの東南アジア地域だけでなく、アメリカ南西部での流行も報道されています。流行地域との往来などで、海外からの麻しんの持ち込みが続けば、いずれ国内循環する可能性も否定できません。特に、気がかりなのが、来月から開催される大阪・関西万博の開催です。開催期間は、10月までと約半年に亘るため、海外からの来訪客が長期的に増加します。開催期間の前後も含めて、じゅうぶんな注意が必要です。麻しんは、もっとも感染力が強い感染症で、同じ部屋にいるだけで感染する可能性があります。行政機関が利用した施設・交通機関を公表しているのは、そのためです。公表された施設を利用した方に、万が一、発熱などの症状があれば、まずは医療機関に、電話で相談してください。そして受診する際に、公共交通機関を利用することは避けてください」としています。

症状

典型的な麻しんの発症例では、感染後10~14日間の潜伏期を経て、以下の経過をたどります。
(1)カタル期:38℃前後の発熱、上気道炎症状等、経過中に頬粘膜にコプリック斑出現
(2)発疹期:39℃以上の発熱、頭頚部より発疹が出現して全身に広がる
(3)回復期
カタル期が最も感染力が強い時期となっており、カタル期で麻しんであることに気づかずに行動することが、感染を広げる原因となります。合併症として肺炎、中耳炎、脳炎、心筋炎等があり、2000年に大阪で麻疹が流行した際には入院率は40%を超えました。未だに有効な治療方法はありません。

ワクチン接種が最も有効な予防法

麻しんはワクチンで予防ができる感染症です。現在は定期接種となっており、1歳になった時と、小学校入学前の1年間の2回接種します(多くはMR=麻しん風しん混合ワクチンが接種されます)。ワクチンを接種すると1回で95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得でき、2回接種すれば、1回では免疫がつかなかった多くの方に免疫をつけることができるといわれています。

定期接種の期間を逃してしまったら…

麻しんワクチン(MRワクチン)は決められた期間であれば、公費で無料で受けることができます。その期間が過ぎてしまった場合でも自費になりますが、接種することはできるので、かかりつけ医などにご相談ください。現在、麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)の供給が不安定になっていることなどから、2025年度から、国が定期接種の2年間の延長措置を実施する旨を自治体に通知しています。気になる方は、医療機関やお住まいの市区町村などにお問い合わせください。

引用
厚生労働省:麻しんについて、麻しん風しん予防接種の実施状況
国立感染症研究所:麻疹

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏

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