【3月に注意してほしい感染症!】RSウイルス感染症堅調に増加 伝染性紅斑(りんご病)は増加の予測  医師「麻しんの患者発生状況を注視。3月以降も注意」
2025年2月28日更新
3月に注意してほしい感染症
3月に注意してほしい感染症
2025年3月に注意してほしい感染症について、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。

【3月に注意してほしい感染症!】RSウイルス感染症堅調に増加 伝染性紅斑(りんご病)は増加の予測 医師「麻しんの患者発生状況を注視。3月以降も注意」

【No.1】RSウイルス感染症

RSウイルス感染症が年明けから、徐々に増え始めています。大きな流行ではないですが、気がかりな動きです。RSウイルス感染症は、流行期間に地域差があるため、何とも言えないですが、3月中に増加してくるのではないかと予測しています。これまでの傾向としては、関西地方での流行は、比較的早く、その後、時間をかけて、ゆっくりと東日本へ流行の中心が移っていきます。2025年の流行がどのようになるか、その規模などの予測は困難ですが、注意してほしい感染症です。RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2~8日、一般的には4~6日で発症します。特徴的な症状である熱や咳は、新型コロナウイルス感染症と似ており、見分けがつきにくいです。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。RSウイルス感染症は、乳幼児に注意してほしい感染症で、特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。お子さんに発熱や呼吸器症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談してください。感染経路は、飛沫感染や接触感染です。お子さん向けのワクチンはまだ実用化されていないため、手洗い、うがい、マスクの着用を徹底しましょう。家族以外にも保育士など、乳幼児と接する機会がある人は特に注意が必要です。

【No.2】ヒトメタニューモウイルス感染症

ヒトメタニューモウイルス感染症は、年代に関係なく感染します。症状は、咳・鼻水・上気道炎ですが、重症化すると気管支炎などの下気道炎や肺炎を引き起こします。また、発熱症状が、4-5日間続くこともあります。中でも注意が必要なのは、お子さんや高齢者です。ウイルスが発見されたのは、2001年と比較的最近で、国内の流行を示す全国的な統計データが無いのが現状です。子どもは、生後6ヶ月頃から感染が始まりますが、一度の感染ではじゅうぶんな免疫が獲得できず、大人になっても感染を繰り返します。一方、感染を繰り返すごとに症状は軽くなります。初感染の子どもや免疫が低下している高齢者は注意が必要です。飛沫・接触による感染により広がるとみられており、マスク着用・手指衛生、そして感染者とタオルの共用を避けることが大切です。

【No.3】伝染性紅斑(りんご病)

伝染性紅斑は、2024年の後半から流行が始まり、東日本を中心に、患者報告数が多く上がっています。今後、1年をかけて、流行地域が全国に広がると予測しています。伝染性紅斑は、4~5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。感染後10~20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。2月上旬頃から、定点報告数は、減少をみせていますが、これまでの統計では、例年第7週付近を境に、上昇若しくは下降を見せます。2025年は、大きな流行が長期に渡ってみられなかったため、上昇していくと予測しています。注意してください。

【No.4】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、学校・幼稚園・保育園などでの流行が多くみられます。幼稚園・保育園・小学校など集団生活の場で流行することなどから、注意が必要です。患者報告数も、2025年第7週(2/10-16)時点で、ある程度の水準を維持しており、春休みに入る前まで、一定程度の報告数は出てくるものと予測しています。特に、小学校低学年のお子さんや幼稚園・保育園のお子さんは、注意が必要でしょう。溶連菌感染症は、例年、冬季および春から初夏にかけての2つの報告数のピークが認められています。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がるので、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。また、溶連菌感染症が増加すると、“劇症型”の患者報告数も増加します。併せて注意が必要でしょう。

【要注視】麻しん(はしか)

国内で、麻しん(はしか)の流行への懸念が高まっています。2025年明けから国内各地で、患者が相次いで確認されており、注意が必要な状況です。麻しんは、「はしか」とも呼ばれ、感染力が非常に強いことで知られています。感染後、10日から2週間ほどで、初期症状として、発熱・咳・鼻汁といった症状が出現。その後、39℃以上の高熱と全身性の発疹が現れるとされています。また、合併症として、肺炎・中耳炎を併発するケースもみられ、中には、脳炎を発症することもあるため注意が必要です。麻しんは、通常、春から夏にかけて流行する感染症です。しかし、春先のこの時期から、患者報告がなされていることや、2025年の万博の開催で海外からの訪問客の増加が見込まれていることもあり、2025年は、ある程度の数の患者発生がみられるのではないかと予測しています。ここ最近、流行は、鳴りを潜めていましたが、患者が、相次いで報告されていることや、感染力が高いこともあり、注意が必要です。多くの方は、ワクチンを既に接種されていると考えられますが、全くワクチンを接種していない方は、感染リスクが高く、今一度、接種履歴を確認した方がいいでしょう。また、接種履歴が不明な方は、抗体検査もできます。ワクチン接種のほかに、防ぐ手立てがないため、定期接種の対象年齢の方々(1歳児、小学校入学前1年間の幼児)は、早めに接種するようお願いします。

感染症に詳しい医師は…

大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「3月に最も注意してほしい感染症は、RSウイルス感染症を挙げました。年明けから堅調に増加しており、私の勤務先の小児科に、入院事例もありました。お子さんが罹患すると、症状が急激に悪化する場合もあり、注意が必要です。また、国がデータをとっていないため、正確な流行状況は不明ですが、ヒトメタニューモウイルス感染症も気がかりです。中国での流行が一部ニュースで報じられていたのも記憶に新しいところです。ヒトメタニューモウイルス感染症の症状は、すべての年齢層で鼻炎、咽頭炎、副鼻腔炎などの上気道炎から、気管支炎、細気管支炎、肺炎などの下気道炎まで引き起こしますが、大部分は症状が出ないか、上気道炎と言った、いわゆる“かぜ”の症状です。しかし、乳幼児・高齢者などでは、呼吸困難になることもあり、酸素投与が必要な肺炎になることも珍しくありません。重症化する場合は、高熱が持続し、呼吸が苦しそうになる呼吸器症状が出ます。お子さんにとっては、RSウイルス感染症同様、注意が必要な感染症です。そして、伝染性紅斑ですが、関東・東北地域の流行は、他エリアにも、徐々に波及し、第7週を境に、全国定点は上昇すると予測しています。妊婦さんに感染させないよう、周囲の方は、配慮してあげてください。特に、保育園・幼稚園などの施設で、“伝染性紅斑(りんご病)”の患者さんが発生している場合、掲示や連絡を徹底し、妊婦さんを近づけないでください。最後に、各地で、麻しんの報告があがっています。日本国内の麻しんについては“排除状態”とされていますが、日本人の国外からの持ち帰りや、海外からの訪日客も増加で、国内に継続的に流入する恐れがあります。万博の開催に伴い、海外から持ち込まれる機会が増加することも考えられます。3月以降もじゅうぶん注意してください」としています。

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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