国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2025年第6週(2/3〜9)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は0.96。これで5週連続の増加となりました。都道府県別の定点あたり報告数は山口2.70、奈良2.09、大阪1.76、北海道1.66、兵庫1.64、福井1.52、群馬1.49、徳島1.43が多くなっています。
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感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「RSウイルス感染症は、例年ならば春頃から患者数が増加していましたが、今年は立ち上がりが早く、年明けから増加しています。当院では0〜2歳のお子さんがRSウイルス感染症で入院しました。乳幼児がかかると、呼吸困難など重症化するおそれがあるので、早めに医療機関を受診することをお勧めします」と語っています。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする、乳幼児に多く認められる急性呼吸器感染症です。主な感染経路は、患者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手指や物品等を介した接触感染です。生後1歳までに50%以上の人が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染し、何度も感染するとされています。初感染の場合は発熱、鼻汁などの上気道症状が出現し、うち約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現するとされています。乳幼児のおける肺炎の約50%、細気管支炎の約50〜90%の原因がRSウイルス感染症と考えられています。RSウイルス感染症には特効薬はありません。治療は基本的には対症療法(酸素投与、点滴、呼吸管理など症状を和らげる治療)を行います。
RSウイルス感染症は、どのように感染するの?
RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。接触感染は、RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことにより、ウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったり、舐めたりすることで感染することを言います。また、飛沫感染は、RSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散るしぶきを浴びて、吸い込むことに感染することを言います。
安井医師「RSウイルスは生涯に何度も感染しますが、大人にとっては軽い風邪のような症状であっても、特に、初感染の乳幼児にとっては命に関わることもある感染症です。保護者や兄弟などが風邪のような症状がある時には、乳幼児になるべく近寄らないようにすることも大切です。また、乳幼児がRSウイルスに感染すると急激に症状が悪化することがあるので、こまめに様子を見る必要があります」
生後1か月未満の乳児は、特に注意を
感染による重症化リスクが高いのは、基礎疾患を有する小児(特に早産児や生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患が有る小児、神経・筋疾患やあるいは免疫不全の基礎疾患を有する小児等)や、生後6か月以内の乳児です。特に生後1か月未満の乳児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあるので注意が必要です。
医療機関への受診の目安は?
機嫌がよく、辛そうでなければ、慌てずに様子を見たり、かかりつけ医に相談してください。ただし、呼吸が苦しそう、食事や水分摂取ができない時は医療機関への受診をご検討ください。
引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2025年第6週(2/3〜9)、IDWR2024年第15号〈注目すべき感染症〉RSウイルス感染症
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年5月31日改訂)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏