2025年2月に注意してほしい感染症について、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【2月に注意してほしい感染症!】感染症全般に落ち着きもインフルエンザB型の流行の可能性 医師「溶連菌感染症も動向注視」
【No.1】インフルエンザ
インフルエンザは、2024年末に、現在の方法で統計を取り始めてから、過去最高となる全国定点64.39を記録しました。この流行の中心は、いわゆるA型と呼ばれるものでしたが、多くの患者報告数のあった九州を始めとする西日本も、年明けから、報告数が減少しています。A型の流行は、全国的には落ち着いて行くと予測しています。しかし、過去の例をみると、前年の12月までに、それほど流行していなかった地域が、年明けに患者発生数が急増することが多くあります。昨年末に、流行が大きくなかった地域は、引き続き、注意が必要でしょう。また、1月末時点で、その兆候は見られませんが、2025年2月に入り、いわゆるB型が流行する恐れもあります。既に、A型が流行した地域でも、引き続き注意が必要です。インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられています。日本でのインフルエンザの流行は、例年11月下旬から12月上旬にかけて始まり、1月下旬から2月上旬にピークを迎え3月頃まで続きます。しかし、今季はシーズン入り前から、一定程度の患者報告数があり、例年の同時期に比べると高い水準でのシーズン入りとなりました。一方で、地域差や増加の幅など流行の動向がつかみにくいため、注意が必要です。主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染で、他に接触感染もあるといわれています。飛沫感染対策として、咳エチケットや接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト-ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。引き続き、注意が必要でしょう。
【No.2】新型コロナウイルス感染症
1月末時点で、新型コロナ患者報告数は、徐々に増加していますが、大きな増加は無く、横ばい状態が続いています。2025年に入り、私の勤務先での新規入院患者も、減っています。しかし、患者数の推移については、注視していく必要があります。例年の増加の勢いは無いものの、新型コロナウイルス感染症は、罹患すると厄介な感染症であることは変わりません。特に、高齢者は、注意が必要です。
【No.3】RSウイルス感染症
2024年末辺りから、徐々に患者報告数が増加しており、患者報告数の動向に、注視しています。本格的な流行は、まだ先だと予測していますが、少しづつ増加している傾向がみられるため注意が必要です。RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2~8日、一般的には4~6日で発症します。特徴的な症状である熱や咳は、新型コロナウイルス感染症と似ており、見分けがつきにくいです。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。RSウイルス感染症は乳幼児に注意してほしい感染症で、特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。お子さんに発熱や呼吸器症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談してください。感染経路は、飛沫感染や接触感染です。ワクチンはまだ実用化されていないため、手洗い、うがい、マスクの着用を徹底しましょう。家族以外にも保育士など、乳幼児と接する機会がある人は特に注意が必要です。
【No.4】伝染性紅斑(りんご病)
伝染性紅斑は、2024年の後半から流行の兆しをみせ始め、東日本を中心に、患者報告数が多く上がっています。今後、1年をかけて、流行地域が全国に広がると予測しています。伝染性紅斑は、4~5歳を中心に幼児、学童に好発する感染症で、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19が病原体です。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることがありますが、実際には典型的な症状ではない例や症状が現れないケースもあり、様々な症状があることが明らかになっています。感染後約1週間で軽い感冒様症状を示すことがありますが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなります。感染後10~20日で現れる両頬の境界鮮明な紅斑があります。続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられます。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が現れることもあります。発熱はあっても軽度です。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と診断された時点では、抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は、ほとんどないといわれています。妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性があります。妊娠前半期は、より危険性が高いといわれていますが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告があります。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ですが重篤な合併症が知られています。
感染症に詳しい医師は…
大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「2025年1月末時点で、流行に大きな勢いがみられる感染症が無く、安堵しています。ランキングからは、外しましたが、溶連菌感染症も、例年並みには、報告数があがっているので注意してください。また、2025年第2週時点で、劇症型溶連菌感染症の報告が、68例あがっています。溶連菌感染症が流行すると、劇症型の患者報告数も増加します。併せて、注意が必要です。その他、マイコプラズマ肺炎は、2025年の年明けに、ある程度の患者報告数はありますが、減少していくと予測しています。新型コロナウイルス感染症については、私の勤務先では、今年に入り、新規入院患者も減少しています。しかし、高齢者・基礎疾患のある方が罹患すると厄介な感染症であることは変わりありません。不安な方は、ワクチン接種をご検討ください」としています。
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏