国立感染症研究所の2025年第3週(1/13-19)速報データによると、溶連菌感染症の全国の定点あたり報告数は1.84。前週の1.73から、6.4%増加しています。溶連菌感染症の警報開始基準値は、8.0ですので、大きな流行には至っていませんが、徐々に増加しています。
都道府県別にみると、茨城県(4.31)・富山県(4.14)・大分県(3.69)・佐賀県(3.52)・宮崎県(3.19)・福岡県(3.17)で定点3を超えています。溶連菌感染症の流行で、気がかりなのは、“劇症型”の患者も増加することです。国立感染症研究所の第3週の全数把握疾患データでは、今年に入っての報告数は、既に106例にのぼっています。
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感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「溶連菌感染症の動向についてですが、第3週(1/13-19)時点で、2024年12月の水準にもなっていないので、そこまで気に掛ける必要はないでしょう。溶連菌感染症は、学校が冬休みの期間中は減少し、冬休み明けに増加する傾向がありますが、増加しているとは言え、増え方自体は、まだ低いと言えます。また、第3週までの“劇症型溶連菌感染症”の累積報告数は、106例とのことですが、昨年同週は、139例で、ペースも、やや下回っています。こちらも現状は、気にしすぎることはないでしょう」としています。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。よく見られる疾患としては、急性咽頭炎のほか、膿痂疹(のうかしん)、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱(しょうこうねつ)があります。また菌の直接の作用ではないのですが、合併症として肺炎、髄膜炎、敗血症、あるいはリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことがあります。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。 治療にはペニシリン系の抗菌薬が用いられます。少なくとも10日間は確実に投与し、症状が改善しても服用し続けることが重要です。
溶連菌感染症の症状は?
主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎にかかると、合併症を引き起こす懸念があります。肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患。あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることが知られています。
治療法は?
治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2025年第3週
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏