厚生労働省が令和6年12月13日に発表した令和6年第49週(12/2-8)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について」によると、全国の定点当たり報告数は3.07。11月上旬から増加傾向が続いており、冬の本格的な流行が懸念されています。
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北海道、東北など北日本が流行傾向に
都道府県別では、秋田・大阪を除く45の都道府県で前週より増加。報告数の多い都道府県は、秋田9.31、北海道9.27、岩手8.21、青森6.03、山梨6.00、長野5.13、群馬4.59、岐阜4.48、宮城4.02など、北日本に多くなっています。
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「例年、年明けに新型コロナウイルス感染症の流行のピークがありますが、今年も11月以降じわじわと患者数が増加しています。今回の流行は大都市圏が少なく、北日本が多い傾向になっていますが、今まで流行があまり大きくなかった地域の患者数が多くなっている印象です。これらの地域の方は免疫を持っている方が大都市圏と比べると少なく、今回発症する方が多くなっているのではないかと考えています。現在インフルエンザが同時流行し、インフルエンザの患者数の方が多くなっていますが、それが落ち着いてくる来年1月以降、新型コロナウイルス感染症の患者がさらに増えてくるのではないかと予測しています」と語っています。
新型コロナウイルス感染症とは?
新型コロナウイルスは感染者の口や鼻から・くしゃみ・会話のときに排出されるウイルスを含む飛沫、またはエアロゾルと呼ばれるさらに小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内に近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分で混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。感染すると2〜7日の潜伏期間のあと、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、咳といった上気道症状に加え、倦怠感・発熱・筋肉痛・頭痛といった全身症状が生じることが多く、その症状はインフルエンザとよく似ています。オミクロン株が主流となった現在は、嗅覚・味覚障害の症状は減少しています。軽症の場合は1週間以内に症状が軽快することが多い一方、発症から3か月を経過した時点で何らかの症状が2か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかない場合には、罹患後症状(後遺症)の可能性を考える必要があります。
新型コロナウイルス感染症関連死亡例は、年間約5〜6万人
厚生労働省では、COVID-19関連死亡数について公表しています。それによると、新型コロナウイルスが、最も死亡に影響を与えて亡くなった例が、2022年は約3万4千人、2023年は約2万5千人。また、新型コロナウイルスが直接の死因には関係していないが、影響を及ぼして亡くなった例が、2022年は約2万6千人、2023年は約2万4千人いました。合計すると2022年は約6万人が、2023年には約5万人が新型コロナに関連して亡くなっています。
安井医師「これほど死亡例の多い感染症は、国内には他にありません。2023年5月に5類感染症になったことから、インフルエンザなど他の感染症と同じような印象を持たれる方も多いと思いますが、社会の一部の声を鵜呑みにすることは危険と考えています。特に高齢者、基礎疾患のある方にとって、新型コロナウイルスは命に関わる感染症です。また後遺症に苦しまれている方もいらっしゃいますし、引き続き感染対策や臨床現場での治療は高い意識を持って臨むことが重要であると考えています」
手洗い、部屋の換気を感染対策の基本に
流水・石けんによる手洗いは、手指など体についたウイルスを物理的に除去するために有効な方法です。また部屋の換気をしないと、ウイルスが部屋に留まり、感染する可能性が高まります。寒くなりましたが、締め切った部屋に長時間いる場合は、定期的に窓を開けて換気することを心がけてください。
引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について令和6年第49週(12/2-8)、死亡診断書(死体検案書)の情報を用いたCOVID-19関連死亡数の分析
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏