国立感染症研究所の2024年第43週(10/21-27)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点当たり報告数は1.94。冬の流行のピークに向けて増加傾向にあります。都道府県別の定点あたり報告数は福岡県4.57・愛媛県3.19・北海道3.17・新潟県3.11・富山県3.1・宮崎県3.08・鳥取県3.05・大分県3.03で「3」を超えています。
今回、ご紹介するのは、感染症・予防接種ナビに寄せられた5歳のお子さんの保護者からの経験談です。
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溶連菌経験談 5歳 広島県
5歳の娘の経験談です。その日は、普通にお風呂に入りご飯を食べて寝たのですが、夜中に娘の手が熱いことに気が付き、熱を測りました。熱を測ると37.5度。そんなに高くはないものの、唸りながら寝ていました。
翌朝、体温を測ると37.4度。少しだるそうにしていました。他に症状はなかったのですが、幼稚園を休んでかかりつけの小児科に行くことに。これだけの症状だったのですが、溶連菌感染症の検査をして溶連菌であることが判明しました。
薬は10日間間をあけずに飲むように言われ、飲み切りました。お兄ちゃんのときは、尿検査をした記憶があるのですが、尿検査をしていません。良くなったのですが、最近は尿検査をしないのかな?と心配になりました。咽頭痛などは、無かったようです。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「直接、診断した訳では無いので、不明な部分もありますが、比較的、症状は軽く済んだようですね。溶連菌の典型的な症状は、発熱・倦怠感・咽頭痛などです。尿検査が無かったとのことですが、丁寧な小児科などでは、検査するところもありますが、症状が再燃した場合に行われることが多いです。溶連菌感染症は、感染後10日前後に、に糸球体腎炎を発症する場合があり、血尿・タンパク尿・尿量減少などの症状がみられることがあります。今回のケースでは、処方薬を10日間、飲みきっており、症状も回復していることから、検査の必要がなかったものと考えられます。しかし、私が経験したお子さんの施設内でのケースでは、単純なペニシリンの抗生剤が効きにくく、再燃したり、糸球体腎炎を発症するケースがありました。この場合は、再検査を行い、別の種類の抗生剤を処方したところ、施設内での流行が収まった場合もありました。医療関係者の方には、知っておいて頂きたいケースです」としています。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。よく見られる疾患としては、急性咽頭炎のほか、膿痂疹(のうかしん)、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱(しょうこうねつ)があります。また菌の直接の作用ではないのですが、合併症として肺炎、髄膜炎、敗血症、あるいはリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことがあります。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。 治療にはペニシリン系の抗菌薬が用いられます。少なくとも10日間は確実に投与し、症状が改善しても服用し続けることが重要です。
溶連菌感染症の症状は?
主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎にかかると、合併症を引き起こす懸念があります。肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患。あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることが知られています。
治療法は?
治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第43週
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏