麻しんとは?
麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。感染すると約10日後に発熱やせき、鼻水と言った風邪のような症状が現れます。2〜3日熱が続いたあと、39℃以上の高熱と発しんが出現します。肺炎や中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎を発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1000人に1人と言われています。
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免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症する
麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症すると言われています。
排除状態にある麻しん
2015年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本は麻しんが排除状態にあることが認定されました。これは、海外に滞在した人が日本で発症したり、外国人の方が日本で発症したりする、あるいはその人達が海外から持ち込んだウイルスで感染するということはあっても、国内の麻しんウイルスに感染して患者が発生することはないということを示しています。
10月に埼玉、京都で患者が発生
しかし、今年に入って37例の麻しん患者が報告されています。10月19日には、埼玉県の40代の女性が発症。主な症状は発熱、咳、コプリック斑(麻疹に特徴的な症状で、発疹出現後2日目を過ぎる頃までに消えてしまいます。また、口腔粘膜は発赤し、口蓋部には粘膜疹がみられ、しばしば溢血斑を伴うこともあります。)、発しんです。また、10月23日には京都で40代の女性が麻しんを発症しました。主な症状は発熱、発しん、せき、鼻水、頭痛などです。埼玉では今年8例目、京都では今年3例目になります。いずれも感染経路などは公表されていませんが、近隣の店舗を訪れていることもあり、感染の拡大が懸念されています。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は、「麻しんの流行は、春から夏にかけて多いとされています。この時期の患者の発生は、正直、気がかりです。秋口での発生がある場合は、年明けころまで、注意が必要です。麻しんは感染力が強いですが、免疫があれば防ぐことができます。埼玉県の例では麻しんの予防接種歴がなかったということですが、ワクチン接種以外に防ぐ手立てはありません」と話しています。
ワクチン接種が最も有効な予防法
麻しんはワクチンで予防ができる感染症です。現在は定期接種となっており、1歳になった時と、小学校入学前の1年間の2回接種します(多くはMR=麻しん風しん混合ワクチンが接種されます)。ワクチンを接種すると1回で95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得でき、2回接種すれば、1回では免疫がつかなかった多くの方に免疫をつけることができるといわれています。
ワクチン接種率が低下している
しかし、近年麻しんを予防するワクチンの接種率が低下しています。2022年度の統計では、全国の麻しんワクチンの接種率は第1期が95.4%、第2期が92.4%です。
安井医師「麻しんに対する集団免疫の獲得には2回のワクチン接種率が95%以上であることが必要とされています。このままワクチンの接種率が低い状態が続くと、再び麻しんの流行が起こる可能性も否定できません。感染症はいつ感染するかわかりませんので、お子さんのワクチン接種は忘れずに受けていただきたいと思います」
定期接種の期間を逃してしまったら…
麻しんワクチン(MRワクチン)は決められた期間であれば公費で無料で受けることができます。その期間が過ぎてしまった場合でも自費になりますが接種することはできるので、かかりつけ医などにご相談ください。また、自治体によっては定期接種の機会を逃した方への接種費用の助成を行なっているので、お住まいの市区町村などにお問い合わせください。
引用
厚生労働省:麻しんについて、麻しん風しん予防接種の実施状況
茨城県報道発表資料:麻しん(はしか)患者の発生について(2024年11月1日)
京都府報道発表資料:麻しん(はしか)患者の発生について(2024年10月29日)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏