【感染症ニュース】31歳マイコプラズマ肺炎で10日間入院… 酷い咳・40℃近い発熱・倦怠感… 医師「症状が改善されない場合、耐性菌の可能性も視野に」
2024年10月25日更新
合併症にも注意を
合併症にも注意を
国立感染症研究所の2024年第41週(10/7-13)速報データによると、「マイコプラズマ肺炎」の定点あたり報告数は1.95。前週比では、微増でしたが、現在の方法で統計を取り始めてから過去最多を3週連続で更新しています。都道府県別では福井県(5.67)・京都府(4.29)・茨城県(3.54)・奈良県(3.33)などで高くなっています。マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を原因菌とする肺炎で、流行時には市中肺炎全体の20〜30%を占めることもあります。感染経路は飛沫感染(せきなどの飛沫を吸いこむ)、接触感染(患者と身近で接触する)です。患者は1〜14歳に多く、家庭内や学校などでしばしば集団感染が起こります。潜伏期間は感染後2〜3週間程度で、症状は発熱、全身倦怠感、頭痛、咳などで、熱が下がっても咳が長く(3〜4週間)続くことがあります。肺炎の場合でも比較的症状は軽く、肺炎に至らない気管支炎症例も多いとされています。しかし、重症化して入院治療が必要な症例もあります。
今回は、感染症・予防接種ナビに寄せられたマイコプラズマ肺炎の経験談をご紹介します。

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マイコプラズマ肺炎経験談 31歳 鹿児島県

発症前 子どもと関わる仕事をしている。9月の初めごろから、咳をしている子が何人かいてたが、マスクをきちんとしていたので、心配していなかった。
1日目 元気に1日過ごしていたが、夕方なんだか体がポカポカすると感じた。熱を測ったら、気が滅入ると思いそのまま早めに就寝。
2日目 朝起きた時からだるさを感じる。仕事が休みの日だったため、ゆっくりと過ごす。夕方、熱を測ると37.3℃。よく休みの日に熱を出すことはあるので、大したことないなと思って就寝。
3日目 変わらず倦怠感が続く。この日も仕事は休みだったためゆっくりと過ごす。夕方に熱を測ると38.2℃。明日の仕事までにさがればいいなと思いながら就寝するも、咳が出るようになり、眠れない。なんとか明け方近くに2時間ほど睡眠が取れた。
4日目 朝、熱を測ると36.7℃。下がってよかった、と安心して仕事場へ。昼間は咳もそこまで酷くなく、比較的元気に1日過ごす。夕方、少し頭痛を感じ、熱を測ると37.5℃。明日のためにもと早く布団に入るが、この日も咳のためほとんど眠れなかった。
5日目 朝の体温は36.5℃。この日は半日外での作業があったため、少し怠さを感じながらも、肉体労働。昼も咳が止まらなくなり始める。だるさと頭痛で昼食後熱を測るが、37.0℃。職場で関わりのある子どもがマイコプラズマ肺炎で入院していたため、もしかしたらと退勤後病院へ。病院の検温で、38.3℃。コロナとインフルの検査を受けたが陰性で、マイコプラズマの可能性が高いと、クラリスロマイシンを処方してもらう。家に帰って熱を測ると38.7℃。熱の割には全体的に元気で、カロナールさえあればいつも通り過ごせるほどだった。しかし咳が酷くて、晩ごはんは吐き、一睡もできなかった。
6日目 仕事を休む。昨日から薬はきちんと飲んでいるのに、朝39.0℃。昼39.4℃。夜39.6℃。カロナールが効く2時間くらいは熱が37℃台までさがるが、切れたらさらに高熱になる、を繰り返す。この日も咳はひどいが全体的には元気で、自力で買い物に行く。食欲もある。夜は咳がずっと出るため、座って眠ろうとするも眠れず、昼間の咳が少し落ち着いている時に眠る。
7日目 昨日と状況は変わらず、昼39.7℃。夜は39.8℃。熱は高いが、しんどい感じはあまりしない。ただ、夜の咳が酷くて、うとうとしていても咳のしすぎで息苦しくなり、起きることを繰り返していた。日中は特別息苦しさを感じることはなかった。
8日目 この日も朝測ると、39.8℃。さすがに熱が下がらなすぎると思い、同じ病院へ。病院では39.9℃。もう少し様子を見ましょうと言われたが、不安で別の病院を紹介してほしいと頼み込んだ。今思えば、情緒がかなり不安定で、興奮状態だったのかも。少し大きい病院を紹介してもらう。大きい病院に着き、パルスオキシメーターを指先につけると91%。そこから血液検査でPO2が45.3、CRPが20.56と分かり、なぜか肝機能の数値もかなり悪いと分かり、あれよあれよと言う間に入院することになった。ただ、自覚症状として息苦しさは一切なく、数値だけが悪かったので、不思議な感覚だった。診断としては、マイコプラズマ肺炎と低酸素血症。CTで、右の肺が特に白くなっていた。大きい病院に行けてよかった。マクロライド系のクラリスロマイシンが、これまで効いていなかったので、ステロイドとニューキノロン系のレボフロキサシンを点滴してもらう。経鼻カニューレでの酸素吸入も。
9日目から18日目 入院治療。レボフロキサシンがよくきいたのか、入院の翌々日から熱も37℃台へと下がった。数値も、入院して5日目にはほとんど正常値になる。咳も眠れるレベルまで落ち着いた。10日間入院して退院。変に全体的に元気だったが、感染症のため個室の外にはほとんど出ることができなかったので、入院生活後半は本当に退屈だった。
今 退院から1週間経つ。仕事も退院の翌々日から復帰した(マスクは必須)。咳はまだ長引いており、メジコンを飲んでも時々咳き込むが、それ以外に特に異常なく過ごせている。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は「経験談をお寄せいただき、ありがとうございます。直接、診察した訳では無いので、不明な点もありますが、肺炎を発症されたこと、お気の毒としか言いようがありません。内容を拝見しましたが、血中酸素飽和濃度やその他の数値・症状も、本当に危ない状態です。初診の病院で、薬剤のファーストチョイスがマクロライド系であったことについては間違っていないと思われます。しかし、症状が改善されない、今回のようなケースでは、医療関係者の方には、耐性菌の可能性を考慮して頂き、薬を変更するなどの処置を考えて頂きたいです。大きな病院に入院され、ニューキノロン系の薬に変更してから、症状が改善されているので、薬剤に耐性を持っていたと推測されます。症状が好転しない投稿者の方が、大きな病院での診察を希望した判断は、間違っていないと思います。少し、咳が長引いているようですが、一日も早い回復をお祈りしています。マイコプラズマ肺炎に大人が罹患した場合、小児科と違って、外来で検査することは、まずありません。私の勤務先にも、マイコプラズマ肺炎で入院された20代の方がいらっしゃいましたが、原因不明の風邪のような症状を抱えたまま、市販薬を服用しながら、1週間経過後に、どうにもならなくなり医療機関を受診された方がいらっしゃいました。このような感染症が流行していることを、皆さんも知っておいた方がいいと考えています」としています。

治療には抗菌薬(抗生物質)を使用、ただし従来の薬が効かない場合も

治療には基本的にはマクロライド系などの抗菌薬が処方されます。しかし近年、このマクロライド系の抗菌薬が効かない「耐性菌」が増えてきているとされています。
安井医師「私が勤務している大阪府内で診断された患者さんから検出されたマイコプラズマの多くが、マクロライド系抗菌薬に対して耐性遺伝子を保有しているとの報告も寄せられています。マクロライド系抗菌薬が効かなくても、他の抗菌薬で対応することはできますが、治療に関して注意が必要です」
なお、成人で肺炎を伴わない気管支炎であれば、抗菌薬による治療を行わないことが推奨されています。

合併症にも注意を

マイコプラズマ肺炎にかかると合併症を発症することもあり、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などを引き起こすことがあります。ギラン・バレー症候群は、一般的には細菌・ウイルス等による上気道の感染や下痢などの感染があり、1〜3週後に両足に「力が入らない(筋力低下)」「しびれる(異常感覚)」などで発症します。筋力の低下は急速に進行し、足全体や腕にもおよび、歩行時につまずく、階段を上がれない(運動まひ)に至ることがあります。さらに顔の筋肉がまひする、食べ物が飲み込みにくい、声が出にくい、物が二重に見える、呼吸が苦しいなどの症状が起こり、時には人工呼吸器が必要になることもあります。マイコプラズマ肺炎にかかった場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第41週(10/7-13)
厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)、重篤副作用疾患別対応マニュアル「ギラン・バレー症候群」

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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