国立感染症研究所の2024年第41週(10/7-13)速報データによると、手足口病の全国の定点当たり報告数は10.78、前週と比較すると約25%増加しています。都道府県別では愛媛28.25、山形26.61、富山25.25、宮城22.58、香川18.14、福島17.92、宮崎17.22、岩手16.75、埼玉16.40、栃木15.83、千葉15.46が多くなっています
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手足口病とは?
手足口病は、口の中や、手足などに水疱性の発しんが出る、ウイルスの感染によって起こる感染症です。子どもを中心に流行し、例年報告数の90%前後を5歳以下の乳幼児が占めています。感染してから3〜5日後に、口の中、手のひら、足底や足背などに2〜3mmの水疱性の発しんが出ます。発熱は約3分の1にみられますが、あまり高くならないことがほとんどであり、高熱が続くことは通常はなく、ほとんどの発病者は数日間のうちに治る病気です。治療のための特効薬はなく、対症療法になります。しかし、まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症や、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺など、さまざまな症状が出ることがあります。
コックサッキーウイルスA16が流行中
病気の原因となるウイルスは、主にコクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71(EV71)で、その他コクサッキーウイルスA10などが原因になることがあります。今年の夏はコクサッキーウイルスA6の感染がほとんどでしたが、現在はコックサッキーウイルスA16が多くなっています。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「夏に流行していたコクサッキーウイルスA6は手足や口などからだの末端だけではなく、広い範囲で発しんがでたり、熱が出たりして、水ぼうそうと見分けがつかないような症状が出ることがあります。一方、今流行しているコクサッキーウイルスA16は典型的な手足口病の症状を呈し、手足や口など体の末端に発しんが出現することが多く、熱はあまり出ることがありません」と話しています。
感染経路は?
手足口病の感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染です。特にこの病気にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは、子どもたちの同士の生活距離が近く、濃厚な接触が生じやすい環境であることなどから、注意が必要です。また、乳幼児では手足口病の原因となるウイルスに感染した経験がない者の割合が高いため、感染した子どもの多くが発病します。
手足口病の予防は?
手足口病には有効なワクチンはなく、発病を予防できる薬もありません。治った後も比較的長い期間、便などからウイルスが排泄されることがあり、小さな子どものおむつの交換などから感染することがあります。
一般的な感染対策は、手洗いをしっかりすることと、排泄物を適切に処理することです。保育施設などの乳幼児の集団生活では、子どもも職員も流水と石けんで十分に手を洗うことが重要です。また、タオルの共用はしてはいけません。
今までにはない手足口病の秋の流行
手足口病は統計を取り始めた2006年以来、秋に流行したことはないので、現在は異例の流行と言えます。夏とは異なるウイルスが流行しているので、夏にかかったとしても再び感染・発症する可能性があります。他にもマイコプラズマ肺炎、A群溶血性連鎖球菌咽頭炎(溶連菌感染症)などの感染症も流行しています。手洗いなどの手指衛生を忘れずに、日々感染対策を行いましょう。
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第41週(10/7-13)、IASR病原微生物検出情報「手足口病由来ウイルス」
厚生労働省:手足口病に関するQ&A
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏