国立感染症研究所の2024年第40週(9/30〜10/6)速報データによると、伝染性紅斑の全国の定点当たり報告数は0.27。全国的にはまだまだ低い数字ですが、神奈川1.05、東京0.99、埼玉0.75など、首都圏で患者数が増加しています。伝染性紅斑は新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以来、患者の発生はほとんどありませんでしたが、ここに来て各地で患者の発生が見られるようになりました。これから注意が必要な感染症です。
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別名「りんご病」とも呼ばれる、伝染性紅斑
伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因の感染症です。患者は5〜9歳が最も多く、ついで0〜4歳となっていますが、成人でも罹患することがあります。通常は飛沫また接触感染でうつります。10〜20日の潜伏期間のあと、この感染症の特徴である頬に赤い発しんが現れます。リンゴのように赤くなるので「リンゴ病」とも呼ばれることがあります。続いて手・足に網目状(レース状・環状)などと表現される発しんがみられ、胸・腹・背中にも現れることがあります。これらの発しんは1週間前後で消失しますが、中には長引いたり、一度消えた発しんが短期間のうちで再び出現することがあります。成人の場合は関節痛・頭痛などを訴え、関節炎症状により1〜2日歩行困難になることがありますが、ほとんど合併症を起こすことなく自然に回復します。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「伝染性紅斑が東京や神奈川など首都圏で急増しています。比較的ゆっくりと流行が広がる感染症なので、これからゆっくりと全国に広がっていき、1年ぐらいは、患者発生数が高い状況が続いていくと予測しています。伝染性紅斑は症状が出る頃にはウイルスの排出が終わっているため、予防が非常に難しい感染症です」と語っています。
症状が出る頃には、ウイルスの排泄はほぼ終わっている
伝染性紅斑の特徴として、頬が赤くなるなどの症状がありますが、その発しんが出る7〜10日くらい前に微熱やかぜのような症状(前駆症状)が見られることが多いとされています。実はその時期にウイルス血症を起こしており、ウイルス排泄量が最も多くなっています。そして、発しんが現れた頃にはウイルス血症は収束しており、ウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。つまり、知らないうちに感染し、他の人にもうつしている可能性があるのです。
心配な胎児感染
伝染性紅斑はかかっても症状としてはさほどではありませんが、妊婦がかかると胎児に影響があるという問題があります。妊婦が感染すると胎児の異常(胎児水腫)および流産があります。妊娠前半期の感染がより危険で、胎児死亡は感染から4〜6週後に生ずることがあると報告されています。また、妊娠後半期にも胎児が感染することがあり、妊娠のどの時期においても安心することはできません。しかし、風しんほどの危険性はなく、妊婦が感染しても分娩の経過や発育が正常であることも多いとされています。
妊婦が感染しない、させない工夫を
安井医師「伝染性紅斑の流行で心配なのは妊婦さんの感染です。きょうだいが通っている保育園などで伝染性紅斑の患者が出ている場合には、施設内への立ち入りを制限するなどの配慮が必要です。お迎えの時には園内までに入らない、行事の際にはしっかりとマスクを着用して、終わったらすぐに帰るなどの対応が必要です。大切なことは、伝染性紅斑の情報を園の職員と保護者全員がしっかりと共有すること。そして、感染した場合のリスクが高い妊婦さんを皆で協力しあって守ることが重要だと思います」
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年2024年第40週(9/30-10/6)、伝染性紅斑とは、IDWR2019年第14号〈注意すべき感染症〉伝染性紅斑(ヒトパルボウイルスB19感染症)
厚生労働省:伝染性紅斑
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏