【感染症ニュース】マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数が過去最多に! 20代男性の入院例も! 医師「成人はなかなか検査しない」
2024年10月21日更新
合併症にも注意を!
合併症にも注意を!
国立感染症研究所の2024年第40週(9/30-10/6)速報データによると、この週の「マイコプラズマ肺炎」の定点あたり報告数は1.94。前週からは約17%の増加で、現在の方法で統計を取り始めてから過去最多を更新しました。都道府県別では福井4.83、愛知4.27、青森4.17、大阪3.28、埼玉3.25、茨城2.92、東京2.88が多くなっています。

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マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を原因菌とする肺炎で、流行時には市中肺炎全体の20〜30%を占めることもあります。感染経路は飛沫感染(せきなどの飛沫を吸いこむ)、接触感染(患者と身近で接触する)です。患者は1〜14歳に多く、家庭内や学校などでしばしば集団感染が起こります。

潜伏期間は感染後2〜3週間程度で、症状は発熱、全身倦怠感、頭痛、咳などで、熱が下がっても咳が長く(3〜4週間)続くことがあります。肺炎の場合でも比較的症状は軽く、肺炎に至らない気管支炎症例も多いとされています。しかし、重症化して入院治療が必要な症例もあります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は、
「マイコプラズマ肺炎は子どもがかかる感染症というイメージがあるかもしれませんが、実際には成人も感染していて、当院では先日20代の男性がマイコプラズマ肺炎で入院されました。初診のクリニックから紹介があり、入院された方です。当初は原因がわからなかったのですが、検査の結果、肺炎マイコプラズマが検出されました。この方は10月のはじめから熱などかぜのような症状があり、市販薬を飲まれていたようですが、症状は改善せず、肺炎の症状を呈したため当院に入院されました。もう少し早く医療機関を受診していればとも思いますが、成人の方にマイコプラズマの検査をするというのはあまりないので、いずれにしても症状が重くなるまでマイコプラズマ肺炎という診断は難しかったかもしれません。ただ、成人にも流行が及んでいるのを実感しました」と話しています。

治療には抗菌薬(抗生物質)を使用、ただし従来の薬が効かない場合も

治療には基本的にはマクロライド系などの抗菌薬が処方されます。しかし近年、このマクロライド系の抗菌薬が効かない「耐性菌」が増えてきているとされています。
安井医師「私が勤務している大阪府内で診断された患者さんから検出されたマイコプラズマの多くが、マクロライド系抗菌薬に対して耐性遺伝子を保有しているとの報告も寄せられています。マクロライド系抗菌薬が効かなくても、他の抗菌薬で対応することはできますが、治療に関して注意が必要です」
なお、成人で肺炎を伴わない気管支炎であれば、抗菌薬による治療を行わないことが推奨されています。

合併症にも注意を

マイコプラズマ肺炎にかかると合併症を発症することもあり、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などを引き起こすことがあります。ギラン・バレー症候群は、一般的には細菌・ウイルス等による上気道の感染や下痢などの感染があり、1〜3週後に両足に「力が入らない(筋力低下)」「しびれる(異常感覚)」などで発症します。筋力の低下は急速に進行し、足全体や腕にもおよび、歩行時につまずく、階段を上がれない(運動まひ)に至ることがあります。さらに顔の筋肉がまひする、食べ物が飲み込みにくい、声が出にくい、物が二重に見える、呼吸が苦しいなどの症状が起こり、時には人工呼吸器が必要になることもあります。マイコプラズマ肺炎にかかった場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第40週(9/30-10/6)

厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)、重篤副作用疾患別対応マニュアル「ギラン・バレー症候群」

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏

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