【感染症ニュース】マイコプラズマ肺炎の定点報告数が過去最多を更新 さらに大きな流行になる可能性も! 医師「外来でマイコプラズマ診断のケースも」
2024年10月9日更新
咳が出る時は咳エチケットを!
咳が出る時は咳エチケットを!
国立感染症研究所の2024年第39週(9/23-29)速報データによると、この週の「マイコプラズマ肺炎」の定点あたり報告数は1.64で今年最多を更新。前週から約10%の増加、5週連続の増加となりました。都道府県別では福井5.33、埼玉4.25、岐阜3.40、東京2.96、愛知2.87、茨城2.77、京都2.71、広島2.70が多くなっています。

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マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を原因菌とする肺炎で、流行時には市中肺炎全体の20〜30%を占めることもあります。感染経路は飛沫感染(せきなどの飛沫を吸いこむ)、接触感染(患者と身近で接触する)です。患者は1〜14歳に多く、家庭内や学校などでしばしば集団感染が起こります。潜伏期間は感染後2〜3週間程度で、症状は発熱、全身倦怠感、頭痛、咳などで、熱が下がっても咳が長く続くことがあります。肺炎の場合でも比較的症状は軽く、肺炎に至らない気管支炎症例も多いとされています。しかし、重症化して入院治療が必要な症例もあります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は「マイコプラズマの定点当たり報告数1.64は、2014年以来過去最高の値となっています。2016年以来8年間大きな流行がなかったため、さらに大きな流行になっていく可能性が高いと予測しています。マイコプラズマの定点当たり報告数は大きな病院で症状が重い方をまとめたものなので、実際に感染している方はずっと多いと思います。外来でもマイコプラズマと診断されるケースは多いと聞いていますし、注意が必要です」と話しています。

治療には抗菌薬(抗生物質)を使用、ただし従来の薬が効かない場合も

治療には基本的にはマクロライド系などの抗菌薬が処方されます。しかし近年、このマクロライド系の抗菌薬が効かない「耐性菌」が増えてきているとされています。
安井医師「私の勤務先は、大阪府ですが、大阪府内の病院で診断された患者さんから検出されたマイコプラズマの多くが、マクロライド系抗菌薬に対して耐性遺伝子を保有しているとの報告も寄せられています。公的なデータは出ていませんが、このような報告もあることを知っておいてもいいでしょう。マイコプラズマ肺炎には、マクロライド系抗菌薬が効かなくても、他の抗菌薬で対応することはできますが、治療に関して注意が必要です」

感染しない・させないためには

感染経路はかぜやインフルエンザ、新型コロナウイルスなどと同じ飛沫感染です。患者の咳などに含まれる飛沫からから感染するので、咳の症状がある場合には、マスクを着用するなど、咳エチケットを守ってください。
咳エチケットは、飛沫感染でうつる感染症を他人に感染させないために、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。特に電車や職場、学校など人が集まるところで実践することが重要です。
・マスクをつける時は、取扱説明書をよく読み、正しくつけましょう。鼻からあごまでを覆い、隙間がないようにつけましょう。
・ティッシュで口や鼻を覆ったときは、使ったティッシュはすぐにゴミ箱に捨てましょう。
・マスクやティッシュ・ハンカチなどがない時に咳が出る時は、上着の内側やそでで覆いましょう。
そして、手を洗うことでも病原体が広がらないようにすることができます。

合併症にも注意を

マイコプラズマ肺炎にかかると合併症を発症することもあり、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などを引き起こすことがあります。マイコプラズマ肺炎にかかった場合は、医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第39週(9/23-29)
厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)、咳エチケットとは?

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏

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