国立感染症研究所の2024年第38週(9/16-22)速報データによると、伝染性紅斑の全国の定点当たり報告数は0.17。全国的にはまだ流行の兆しはありませんが、東京0.66、神奈川0.63、埼玉0.38、千葉0.25となっており、首都圏で患者数が増加しています。伝染性紅斑は新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以来、患者の発生はほとんどありませんでしたが、ここに来て各地で患者の発生が見られるようになりました。これから注意が必要な感染症です。
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別名「りんご病」とも呼ばれる、伝染性紅斑
伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因の感染症です。患者は5〜9歳が最も多く、ついで0〜4歳となっていますが、成人でも罹患することがあります。通常は飛沫また接触感染でうつります。10〜20日の潜伏期間のあと、この感染症の特徴である頬に赤い発しんが現れます。リンゴのように赤くなるので「リンゴ病」とも呼ばれることがあります。続いて手・足に網目状(レース状・環状)などと表現される発しんがみられ、胸・腹・背中にも現れることがあります。これらの発しんは1週間前後で消失しますが、中には長引いたり、一度消えた発しんが短期間のうちで再び出現することがあります。成人の場合は関節痛・頭痛などを訴え、関節炎症状により1〜2日歩行困難になることがありますが、ほとんど合併症を起こすことなく自然に回復します。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「新型コロナウイルス感染症が流行している間、他の感染症の流行は下火になっていましたが、今いろいろな感染症が次々と流行しています。伝染性紅斑もその一つで、現在はまだ流行とは言えませんが、今年に入り患者の発生が目立つようになってきました。特に東京、神奈川など首都圏で患者発生が多くなってきており、これから全国に流行が拡大する可能性があり、注意が必要です」と語っています。
症状が出る頃には、ウイルスの排泄はほぼ終わっている
伝染性紅斑の特徴として、頬が赤くなるなどの症状が出る頃には、ウイルスの排泄が終わっているということがあります。頬に発しんが出る7〜10日くらい前に微熱やかぜのような症状(前駆症状)が見られることが多いのですが、その時期にウイルス血症を起こしており、ウイルス排泄量が最も多くなっています。そして、発しんが現れた頃にはウイルス血症は収束しており、ウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。つまり、知らないうちに感染し、他の人にもうつしている可能性があるのです。
心配な胎児感染
伝染性紅斑はかかっても症状としてはさほどではありませんが、妊婦がかかると胎児に影響があるという問題があります。妊婦が感染すると胎児の異常(胎児水腫)および流産があります。妊娠前半期の感染がより危険で、胎児死亡は感染から4〜6週後に生ずることがあると報告されています。また、妊娠後半期にも胎児が感染することがあり、妊娠のどの時期においても安心することはできません。しかし、風しんほどの危険性はなく、妊婦が感染しても分娩の経過や発育が正常であることも多いとされています。
安井医師「風しんほど心配がないとはいえ、妊娠初期の感染は流産のおそれがあります。成人の不顕性感染の場合もあるので、知らないうちに感染し、また他の人にうつすなど、注意しても防ぐことは難しい場合があります。かぜのような症状がある時には、妊婦の方に近づかないなど、感染予防に気をつけていただきたいと思います」
(経験談)伝染性紅斑 3歳 東京都 2020年4月29日寄稿
最後に、4年前の経験談を紹介します。
「娘の顔が24日に赤くブツブツになりました。
3日前にバターたっぷりのパンを食べたせい?
2日前から広がり始めた水いぼのせい?
2日我慢して様子を見ました。
27日に小児科を受診しりんご病と診断していただきました。
顔はりんご病で赤く、皮膚が硬い、熱っています。
37.1度なので少し発熱
確かに1週間前あたりは鼻詰まりで朝起きることがありましたが
日中夜は元気でした。
初めてのことで頬の感じが不安です。
4、5日で治るということですが
明日明後日に良くなる気がしません。
同時に水いぼにもなってしまっているので、保湿と痒み止めを頂きました」
安井医師は…
「伝染性紅斑(リンゴ病)に感染した場合、発疹が出るまでがしんどいとされています。お子さんに鼻水の症状があった時期に感染があったのではないかと疑われます。一般的に、免疫のある方は問題ないのですが、大人が罹患した場合、足が痛くて動けなかったり、妊婦さんの場合は、流産の可能性もあります。この感染症がやっかいな点は、発疹が出るまでに時間があるため、誰が感染しているか分からないところです。幼稚園などで流行していると、知らないままウイルスが家庭に持ち込まれ、妊娠している母親も感染してしまうケースもあります。2018年や2019年にも、大きな流行がありましたが、ここしばらく流行がなかったため注意が必要です。」
感染症は「正しく知って正しく怖がる」ことが大切です。ぜひ、正しい知識を持って感染症に対応してください。
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年2024年第38週(9/16-22)、伝染性紅斑とは
厚生労働省:伝染性紅斑
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏