【感染症ニュース】マイコプラズマ肺炎全国定点1.22(9/2-8)で子どもたちの入院例も… 規模は大きな流行となった2016年と同程度に拡大! 医師「更なる増加と予測」
国立感染症研究所の2024年第36週(9/2-8)速報データによると、この週の「マイコプラズマ肺炎」の定点あたり報告数は1.22。各年の同じ週(第36週)の比較では、2005年以来過去最大の流行となっています。都道府県別にみると、兵庫県(3.21)・埼玉県(2.58)・大阪府(2.39)で高い値となっています。
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マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」に感染することによって起こる呼吸器感染症です。肺炎マイコプラズマは、自己増殖が可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類されています。小児や若い人の肺炎の原因としては比較的多いものの一つで、例年患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下ですが、成人の報告も見られます。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられますが、冬にやや増加する傾向があります。
感染経路は?
感染は患者のせきの飛沫を吸いこんだり(飛沫感染)、患者と身近で接触したりすることにより感染(接触感染)すると言われています。家庭のほか学校などの施設内でも感染の伝播がみられます。感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2〜3週間くらいとされています。
症状は?
発熱や全身けん怠感(だるさ)、頭痛、たんを伴わない咳などの症状がみられます。せきは少し遅れて始まることもあります。咳は熱が下がったあとも長期にわたって(3〜4週間)続くのが特徴です。多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎となり、重症化することもあります。一般には、小児の方が軽くすむといわれています。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は「マイコプラズマ肺炎は、4年周期で大きな流行が起こるといわれていて、2012年、2016年の夏季オリンピックが開催された年に大きな流行がありました。2020年は新型コロナウイルス感染症の流行があり、マイコプラズマ肺炎は大きな流行がありませんでしたが、今年は8年ぶりに大きな流行の兆しがすでに見えています。マイコプラズマ肺炎は潜伏期間が長く、流行は比較的ゆっくりと拡大していきます。この36週のデータは夏休み明けすぐのものですので、38週頃からは報告数がさらに増えていくのではないか予測しています。そして、11月から12月頃まで高い水準が続くのではないかと思います」としています。
肺炎で入院例も
安井医師の勤務する病院でも、マイコプラズマ肺炎が原因で入院する子どもが増えているとのことです。「現在、8歳と11歳の2人のお子さんが入院されています。入院されるのは、肺炎などの場合が多いのですが、従来よく使われていた薬が効かない耐性菌に感染している場合もあり、治療を行っています」と現状を語ります。
マイコプラズマ肺炎に対しては、従来からマクロライド系の抗菌薬が処方されていましたが、その薬に対して、耐性遺伝子を保有している菌に感染する人が増えています。
安井医師「大阪府内で診断された患者から検出されたマイコプラズマの入院例では、マクロライド系抗菌薬に対して、耐性を有しているという報告も寄せられています。かかりつけ医が、処方した薬の効果がみられず、入院に至るケースなので、実際の耐性菌の割合がどの程度か分かりませんが、治療に関しては注意が必要です。マクロライド系の抗菌薬が効かなくても、他の抗菌薬で治療は可能ですので、早めに治療を開始することが重要だと考えています」
成人や高齢者にも感染する
マイコプラズマ肺炎は、子どもだけではなく、高齢者を含む成人も感染します。
安井医師「当院でも、肺炎で入院された方が、検査をしてみるとマイコプラズマ肺炎だったというケースが増えています。町の病院では成人に対して肺炎マイコプラズマの検査を行うことは少ないので、データとしてはあまり多いとされていませんが、大人も高齢者も感染します。そして、高齢者の方は重症化する可能性が子どもや大人よりも高いと考えられます。マイコプラズマ肺炎はすでに流行していると考えて、感染対策を行っていただければと思います」
引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第36週(9/2-8)
厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏