【感染症ニュース】ヘルパンギーナ45歳 体重4㎏減・おびただしい数の口内炎 医師「CA6型は大人が発病するケースも」
2024年9月5日更新
症状が落ち着いても引き続き注意
症状が落ち着いても引き続き注意
国立感染症研究所の2024年第34週(8/19-25)速報データによると、ヘルパンギーナの定点あたり報告数は0.7。前週の0.5から、増加しています。ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎です。乳幼児を中心に夏季に流行する、いわゆる夏かぜの代表的疾患です。その大多数はエンテロウイルス属に属するウイルスに起因し、主にコクサッキーウイルスA群である場合が多いですが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスで発症する場合もあります。その他、エンテロウイルスが原因となる感染症は、手足口病が挙げられます。
今回、ご紹介するのは、「感染症・予防接種ナビ」に寄せられた、45歳の方の経験談です。

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ヘルパンギーナ経験談 45歳・北海道

8月14日 8歳の息子に口内炎。
8月17日 息子完治、この時、私(父親)も口内炎が舌の付け根あたりにできる。普段から口内炎はできやすいが、ここ最近は食事にも気を付けているし、筋トレもしながら体調管理はしていただけに不思議な感じがした。
8月19日 口内炎が3つほどできているが痛みは感じない。しかし気になる。
8月23日 変わらず口内炎を3つほどに止めているが、一つひとつがとても大きい。食事も食べにくくなってきている。嫌な予感はしていた。
8月26日 今まで食事はできていたのに、刺激や熱いものが非常に口に染みる。口内炎10。
8月27日 耳鼻科に行きヘルパンギーナの初期症状と診断。唾を飲むのも薬を飲むのも激痛。口内炎30。かなり覚悟をして飲まないといけない。食事はウィダーとプリン。プリンはカラメル部分が染みたからNG。
8月28日 会社行くも早退。熱は一度もでないが、喉の激痛からか常に不機嫌。喋るのも嫌なくらい。口内炎60。唾も飲み込まず20分くらい口に貯めてから、コップに吐き出す。いつ終わりがくるのだろうと不安な時期。
8月29日 本日、変わらず喉が激痛。口内炎100。あまりに多すぎて隣同士の口内炎が合体して大きく。かなり異常な状態。病院で診断してもらってから3日目だが我慢できずに今日も会社を昼で早退。
ほかの人の書き込みを見ると1週間から10日で完治のようなので、残り7日(9月5日頃?)は我慢してみようと思う。夜中は喉の激痛で起きるし、水も飲むのも覚悟がいる。昨日までは、痛み止めのジクロフェナクを起きている時だけ朝1錠、昼2錠、夜1錠にしていたが、これを6h毎に1錠服用に切り替えた。が、痛いものは痛い。2錠飲んだ時は、かなりかなり我慢してやっとゼリーが食べられるくらいだが、そんな痛い想いするくらいなら食べずに我慢の選択肢をとっている。食事は、27日夜にウィダーインゼリーとプリン、28日夜プロテインジュース、29日何も食べない。体重は4kg減った。この修行僧のような我慢をいつまでするのか苦しいけど、いつか終わりが来ると信じて耐えています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「お寄せ頂き、ありがとうございます。口内炎の症状、辛そうと思います。お大事にしてください。また、脱水症状には、くれぐれもご注意ください。ご存じの通り、ヘルパンギーナは、手足口病と同属性のエンテロウイルスが引き起こします。症状の現れ方によって、ヘルパンギーナ・手足口病と診断が変わるのですが、今回の方は、口内炎が多くみられたため、ヘルパンギーナと診断されたのだと考えられます。
国立感染症研究所の2024年の手足口病のエンテロウイルスの検出報告をみると、CA6型が最も多く検出されています。CA6型が流行すると、大人も発病するケースがあるので、子どもから大人まで、注意が必要です」としています。

ヘルパンギーナとは?

ヘルパンギーナの由来はドイツ語で「水泡(ヘルペス)」と「喉の炎症(アンギーナ)」です。その名の通り、熱と口の中の粘膜にできる水泡性の発しんが特徴の、急性のウイルス性咽頭炎です。主にコクサッキーウイルスA群により咽頭の入り口部分に小さな水泡ができたり、熱が出るウイルス性の感染症です。潜伏期間は2〜4日。乳幼児に多く、突然38〜40℃の熱が出て1〜3日間続きます。全身倦怠感、食欲不振、咽頭痛、嘔吐、四肢痛などがある場合もあります。患者の年齢は5歳以下が全体の90%を占め、1歳代が最も多く、次いで2、3、4歳代の順で多いとされています。

感染経路は?

感染経路は、接触感染を含む糞口感染と飛沫感染です。急性期に最もウイルスが排泄され、咳をした時の飛沫で感染が広がります。また、回復後にも2〜4週間の長期にわたり便からウイルスが検出されることがあります。

治療法、予防法は?

特別な治療法はなく、症状を和らげる対症療法になります。また予防については、ワクチンがなく、感染者との密接な接触を避ける、手指衛生を心がけることが重要です。

水分補給、栄養補給に注意!

ヘルパンギーナはのどに強い痛みがあることがあるので、食べ物、飲み物がとりにくくなることがあります。夏場は脱水の可能性もあるので、水分補給は重要です。子どもが、のどが痛くて水分をとるのを嫌がる時は、麦茶や牛乳、冷たいスープなど刺激の少ない飲み物がおすすめです。また、イオン飲料や経口補水液などもいいです。コップで飲みにくい時は、ストローを使ったり、スプーンで少量ずつ飲ませるなど、水分補給を心がけてください。同様に、食べ物ものど越しの良いものがおすすめです。シャーベットやゼリー、リンゴのすりおろしなどは、水分補給にもなります。冷ましたおかゆ、うどん、グラタンなどのど越しの良く、刺激の少ないものがいいでしょう。

症状が改善しても、手洗いなど衛生管理の徹底を

またヘルパンギーナは、症状が改善しても飛沫や鼻汁からは1〜2週間、便からは数週〜数か月にわたりウイルスが排出されます。保育所など子どもが集まる施設では、直った後も感染が広げないための衛生管理が重要です。おむつの処理をする時は、手袋をする。また、終わった後は手洗いを徹底することが重要です

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報速報データ2023年第34週
厚生労働省:ヘルパンギーナ(感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について)、感染症エクスプレス@厚労省vol.303(2017年6月30日)、わかりやすい感染症Q&A 11「ヘルパンギーナ」

大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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