現在、肺炎球菌ワクチンの定期接種は小児に対するものと、高齢者に対するものの2種類があります。このうち小児に対する肺炎球菌ワクチンが10月から変更になります。
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肺炎球菌、肺炎球菌感染症とは?
肺炎球菌は、ほとんどの子どもたちが持っているといわれる菌で、普段はノドなどに保菌していても特に症状はありませんが、何らかのきっかけで肺に侵入すると「肺炎」に、耳に入ると「中耳炎」に、血液に入ると「敗血症」に、脳や髄膜に入ると「髄膜炎」を起こします。これらが肺炎球菌感染症です。また、肺炎球菌は高齢者の肺炎の原因にもなり、誤嚥(ごえん)などで肺に侵入して、重篤な肺炎を起こすこともあります。今年はすでに高齢者を含む1,600人以上の方が、肺炎球菌が血液、髄液に入り込む「侵襲性肺炎球菌感染症」と診断されています。
肺炎球菌ワクチンとは?
肺炎球菌感染症を予防するのが、肺炎球菌ワクチンです。肺炎球菌ワクチンの定期接種は、小児と高齢者に対して行われています。小児に対する肺炎球菌ワクチンの定期接種は、初回接種については生後2か月以降7か月までの間に接種を開始し、27日以上の間隔をおいて3回。さらに3回目の接種を行ってから60日以上の間隔をおいて1回、計4回接種します。現在13価ワクチンと15価ワクチンの2種類があり、どちらも定期接種で使用されています。高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの定期接種は、65歳の方と、60〜64歳で心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方。同じく60〜64歳でヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能の方が対象で、23価ワクチンを1回接種します。
ワクチンの効果は?
ワクチンの効果は、小児の場合、肺炎球菌が血液や髄液から検出されるような重篤な肺炎球菌感染症にかかるリスクを95%以上減らすことができると報告されています。また、高齢者の場合は、23価ワクチンが対象とする23種類の血清型の侵襲性肺炎球菌感染症を4割程度予防する効果があります。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「私も長年、医師として感染症に関わってきましたが、肺炎球菌ワクチンの定期接種が実施されて以来、重篤な肺炎球菌感染症の患者は大きく減ってきたと実感しています。肺炎球菌ワクチンが定期接種になる以前は、肺炎等が判明してから、抗生剤を投与していましたが、却って耐性菌が増える結果を招いており、望ましい状況ではありませんでした。肺炎球菌は、多くのお子さんが、症状が現れない状態で保菌しながら、日常生活を送っていると考えられます。ワクチン普及後に、肺炎球菌感染症は、数が減りましたが、中には、肺炎・中耳炎・髄膜炎等を発症するケースもあります。髄膜炎を発症した場合、特にお子さんは、命にかかわる場合もありますので注意が必要です。また、お子さんなどから、高齢者に感染した場合は、肺炎・気管支炎などを引き起こす場合があります。注意が必要です。肺炎球菌には90種類以上の血清型があり、肺炎球菌ワクチンではその全てに対応しているわけではありませんが、ワクチンを接種することで感染のリスクを減らすことができます。高齢者は、誤嚥がきっかけで、肺炎球菌感染症を発症する場合もあります。小児も高齢者も定期接種対象の年齢時に接種を受けていただければと思います」と語っています。
小児に対する肺炎球菌ワクチンが20価に
小児に対する肺炎球菌ワクチンは現在13の血清型に対応する「13価」と15の血清型に対応する「15価」の2種類が定期接種となっていますが、2024年10月からは20の血清型に対応する「20価」が定期接種となります。また当面の間は15価も使用できるとされています。小児に対する肺炎球菌ワクチンは生後2か月から初回接種として3回接種しますが、原則として、同一のワクチンを接種することになっています。使用するワクチンの種類など、詳しくは接種を行う、かかりつけ医などにご相談ください。
引用
厚生労働省:第61回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会議事録、資料1「小児に対する肺炎球菌ワクチンについて」(2024年7月18日)、肺炎球菌感染症(小児、高齢者)、侵襲性肺炎球菌感染症
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏