【9月に注意してほしい感染症!】新型コロナ9月上旬まで要警戒 マイコプラズマ肺炎・溶連菌感染症は学校再開後の動向に注意 医師「インフルエンザ早ければ9月から流行」
2024年9月に注意してほしい感染症について、大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【2024年】9月に注意してほしい感染症!新型コロナ9月上旬まで要警戒 マイコプラズマ肺炎・溶連菌感染症は学校再開後の動向に注意 医師「インフルエンザ早ければ9月から流行」
【No.1】マイコプラズマ肺炎
最も注意して頂きたい感染症に、マイコプラズマ肺炎を挙げました。家庭・学校などで、広がる恐れがあります。学校再開後は、特に注意が必要です。別名、オリンピック病と呼ばれ、4年に一度、オリンピックの年に流行すると言われています。しかし、前回の東京オリンピック開催予定年であった2020年は、コロナ禍で流行することはありませんでした。2024年に入り、徐々に患者数の報告が増えており、今年は流行すると予測しています。8年間ほど流行していなかったため、流行すると入院される方も増加します。2024年8月中旬時点のデータをみると、年初から、大きく増加。秋口あたりから、本格的な流行に移行する恐れもあり、注意が必要です。マイコプラズマ肺炎とは、肺炎マイコプラズマを病原体とする呼吸器感染症です。飛沫感染による経気道感染や接触感染によって伝播すると言われています。感染には濃厚接触が必要と考えられており、保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭などでの感染伝播はみられますが、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くはありません。潜伏期間は、2~3週間とインフルエンザやRSウイルス感染症等の他の小児を中心に大きく流行する呼吸器疾患と比べて長いです。初期症状として、発熱、全身倦怠、頭痛などが現れた後、特徴的な症状である咳が出現します。初発症状発現後3~5日から始まることが多く、乾いた咳が経過に従って徐々に増強し、解熱後も長期にわたって(3~4週間)持続します。抗菌薬投与による原因療法が基本ですが、「肺炎マイコプラズマ」は細胞壁を持たないために、β-ラクタム系抗菌薬であるペニシリン系やセファロスポリン系の抗生物質には感受性はありません。蛋白合成阻害薬であるマクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)が第1選択薬とされてきましたが、以前よりマクロライド系抗菌薬に耐性を有する耐性株が存在することが明らかとなっています。近年その耐性株の割合が増加しつつあるとの指摘もあります。最初に処方された薬を服用しても症状に改善がみられない場合は、もう一度医療機関を受診していただくことをお勧めします。
【No.2】A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症) は、学校・幼稚園・保育園などでの流行が多くみられます。幼稚園・保育園・小学校など集団生活の場で、流行することなどから、注意が必要です。患者報告数も、2024年4月時点で、高い水準を維持しています。9月は、学校・幼稚園等の夏休みが明けるため、再び一定程度の報告数が出てくるものと予測しています。溶連菌感染症は、例年、冬季および春から初夏にかけての2つの報告数のピークが認められています。保育所や幼稚園の年長を含め、学童を中心に広がるので、学校などでの集団生活や、きょうだい間での接触を通じて感染が広がるので、注意しましょう。感染すると、2~5日の潜伏期間の後に発症し、突然38度以上の発熱、全身の倦怠感、喉の痛みなどが現れ、しばしば嘔吐を伴います。また、舌にイチゴのようなぶつぶつができる「イチゴ舌」の症状が現れます。まれに重症化し、全身に赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。発熱や咽頭痛など、新型コロナの症状と似ており区別がつきにくいため、症状が疑われる場合は速やかにかかりつけ医を受診しましょう。主な感染経路は、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、細菌が付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です。感染の予防には手洗い、咳エチケットなどが有効です。
【No.3】インフルエンザ
流行は落ち着きをみせていますが、なかなか減り切らず、ダラダラと患者報告数があがり続けています。2023年同様、例年と異なる状況で、予測は困難ですが注意が必要です。8月第32週(8/5-11)の全国の定点報告数でも0.38となっています。スタート地点が高い状態ですので、早ければ9月にも流行する可能性もあります。インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられています。日本でのインフルエンザの流行は、例年11月下旬から12月上旬にかけて始まり、1月下旬から2月上旬にピークを迎え3月頃まで続きます。しかし、今季はシーズン入り前から、一定程度の患者報告数があり、例年の同時期に比べると高い水準でのシーズン入りとなりました。一方で、地域差や増加の幅など流行の動向がつかみにくいため、注意が必要です。主な感染経路は、くしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染で、他に接触感染もあるといわれています。飛沫感染対策として、咳エチケットや接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられますが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在します。これらのことから、特にヒト-ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設では、インフルエンザの集団発生をコントロールすることは、困難であると思われます。引き続き、注意が必要でしょう。
【No.4】新型コロナウイルス感染症
8月中旬時点のデータでは、報告数は落ち着きをみせていますが、お盆明けから9月に向けて、どのような動きをみせるのか警戒が必要です。私の勤務先では、8月中旬に、いったん入院患者さんの数は、落ち着きをみせ始めていますが、それでも、毎日のように、患者さんが搬送されてきます。現在、KP.3と呼ばれる新たな株が流行をみせていますが、KP.3はオミクロン株の一種で、以前に流行したBA2.86から派生した株です。ワクチンや感染による中和抗体による免疫からの逃避の可能性が高く、感染しやすいというBA2.86の特徴はそのまま引き継いでいるものと思われます。また、発症しても症状には大きな違いはないと考えられます。2023年5月から、5類に移行し、一年余りが経過しました。現在、入院される方は少なくなったものの、症状が悪化され搬送されてくるのは、ワクチン未接種の方が多い印象です。これから気温が高くなる季節を迎えますが、室内の換気など、基本的な感染対策を続けるなど決して油断しないでください。体調不良の場合や医療機関・高齢者施設を訪問の際はマスクの着用は必須です。
【No.5】RSウイルス感染症
RSウイルス感染症が、なかなか減少しません。春の流行後に、落ち着くかに思えましたが、下げ止まらず一定の流行を維持している状態です。大きな流行ではありませんが、気がかりな動きです。RSウイルス感染症は、流行期間に地域差があるため、何とも言えないのですが、8月上旬に、九州各県や四国などで、比較的高い値を示している地域もあります。また、春に、大阪を中心とした関西地方では流行をみせたものの、2024年に関東をはじめ、東日本での大きな流行はみられていません。関東地方では、今後の動向に注視が必要です。乳幼児には、インパクトの強い感染症です。東海地方の医師からは、RSウイルス感染症で1歳児を救えなかったとの悲しいお話も耳にしました。本当に注意してください。RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2~8日、一般的には4~6日で発症します。特徴的な症状である熱や咳は、新型コロナウイルス感染症と似ており、見分けがつきにくいです。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。RSウイルス感染症は、乳幼児に注意してほしい感染症で、特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。お子さんに発熱や呼吸器症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談してください。感染経路は、飛沫感染や接触感染です。お子さん向けのワクチンはまだ実用化されていないため、手洗い、うがい、マスクの着用を徹底しましょう。家族以外にも保育士など、乳幼児と接する機会がある人は特に注意が必要です。
感染症に詳しい医師は…
大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「9月に最も注意してほしい感染症は、マイコプラズマ肺炎を挙げました。以前大きな流行があった2012年、2016年と同程度の高い水準となっています。いずれの年も夏以降さらに患者数は増え、秋ごろにピークを迎えました。今年もこれから秋に向けて流行が拡大するおそれがあります。秋口にかけ、注意が必要です。そして、低調ではありますが、インフルエンザの定点報告数の動向も気がかりです。夏休み明けから、学校・保育園等での感染は、増加すると考えられ、2023年同様、ダラダラとした流行が続くことも考えられます。こちらも注意してください。また、インフルエンザだけでなく、溶連菌感染症など学校等の集団生活で流行する感染症が増加することが考えられます。身の回りの流行に、注意してください」としています。
監修・取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏