【感染症ニュース】新型コロナ全国定点報告数が減少(7/29-8/4) 流行は9月上旬まで続くと予測 医師「心筋梗塞など症状発現後7~14日は要注意」
2024年8月9日更新
厚生労働省が令和6年8月9日に発表した令和6年第31週(7/29-8/4)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について」によると、全国の定点当たり報告数は13.29。前週と比較するとおよそ9%減少しています。都道府県別の定点当たり報告数では、佐賀が最も多く27.82。その他愛知、長崎では20を越えているものの前週と比較すると減少しています。現在の状況について、感染症に詳しい医師を取材しました。

【2024年】8月に注意してほしい感染症!新型コロナ8月末に向け増加の予測 医師「患者の受け入れ態勢限界迎えつつある」 RSウイルス感染症・インフルエンザの動向要注視

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、勤務する病院の状況をこのように話しています。「当院でも新型コロナで重症の肺炎の方が毎週2人ぐらい入院してきています。また、別の病気で入院された方が新型コロナに感染しているケースがあり、院内感染も起きています。報告数の伸びが鈍化しているようにも見えますが、夏休みに入り学校などでの感染機会が減ったことが一因として挙げられると考えています。しかし、これから帰省シーズンで人の流れが活発になりますし、お盆期間は、医療機関の休診で、いったん減少したように見えるものの、流行の勢いは9月上旬まで続くのではないかと予測しています」

新型コロナウイルス感染症とは?

新型コロナウイルスは感染者の口や鼻から、咳・くしゃみ・会話のときに排出されるウイルスを含む飛沫またはエアロゾルと呼ばれるさらに小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内に近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分で混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。

新型コロナウイルスに感染すると…

新型コロナウイルスに曝露すると、潜伏期間が1〜7日の後に発症します。症状はインフルエンザと類似しており、まず咽頭痛・鼻閉・咳などが現れ、発熱・倦怠感・頭痛等も起こります。軽症の場合は発症後1週間以内に症状は軽快することが多いのですが、発症してから3か月を経過した時点で何らかの症状が2か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかない場合は、罹患後症状(いわゆる後遺症)の可能性が考えられます。また、重症化リスクのある一部の患者は、肺炎、ARDS(急性呼吸逼迫症候群)や多臓器不全に至る場合があるので注意が必要です。

合併症で心筋梗塞や脳梗塞のおそれも…

新型コロナウイルスに感染することによって、合併症にかかるおそれもあります。
安井医師「よく知られているのは、新型コロナウイルスの合併症で心筋梗塞や脳梗塞が起こるということです。当院でも心筋梗塞など入院された方が新型コロナに感染していたという例がありました。おそらく新型コロナ感染が引き金になったと思われます」
新型コロナウイルス感染症の合併症としては、心血管系では急性期の不整脈、急性心障害、ショック、心停止の他、症状回復後の心筋炎など。血栓塞栓症としては、肺塞栓症や急性期脳卒中などが報告されています。多くは感染初期で症状が重くなる時期に合併症を起こしますが、回復期にも起こることがあります。
また安井医師は、「私はこれまで新型コロナの患者を1500人以上診察してきましたが、症状が現れた後3〜4日でよくなる人もいる反面、7日目以降に悪くなるという例も多くありました。その中には脳梗塞、心筋梗塞を起こされた方もいらっしゃいます。経験上7〜14日目辺りが実は要注意で、急激に症状が悪化するケースが見受けられます。新型コロナウイルスは、血管にあるACE2受容体を攻撃し傷つけます。その血管修復のため小さな血栓が生まれることが研究結果から分かっています。この血栓が脳梗塞・心筋梗塞を引き起こすと考えられており、入院された方に検査を行い、血液が凝固していないか状態を確認しています。こうしたことを考えると、新型コロナウイルスはただの風邪ではありません。かかったあとも経過をきちんと観察して、悪化することを防がなくてはなりません」としています。

少しでも症状がある場合は、医療機関を受診して、治療をうける

今、新型コロナウイルス感染症は街のクリニックなどでも診療が受けられます。軽症で入院の必要がない場合は解熱剤などの対症療法となりますが、病状の進行が予期される場合には抗ウイルス薬が処方されることがあります。
安井医師「新型コロナウイルス感染症は、今でも高齢の方は重症化リスクが高いと感じています。抗ウイルス薬は高価ですが、その後の重症化や罹患後症状を防ぐことを考えれば、体内のウイルス量を早く減らすためにも、服用することは重要だと思います。担当の医師とよく話をして、最善の治療をしていただけるといいと思います」

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について令和6年第28週(7/8~14)、新型コロナウイルス感染症診療の手引第10.1版(2024年4月)
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

関連記事


RECOMMEND