【感染症ニュース】マイコプラズマ肺炎8年ぶりの流行のピークは秋頃か… 発熱・肺炎・長引く咳などに注意 医師「かかるとキツイ」
2024年7月31日更新
大人も子どもも感染注意!
大人も子どもも感染注意!
国立感染症研究所の2024年第29週(7/15-21)速報データによると、この週の「マイコプラズマ肺炎」定点あたり報告数は0.7。この1か月でほぼ倍増しています。去年、中国で大きな流行があったマイコプラズマ肺炎。日本では4年周期でオリンピックがある年に流行を繰り返してきましたが、新型コロナウイルスの影響で4年前の2020年には流行はありませんでした。しかし今年は8年ぶりの流行の兆しが見え始めています。

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マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」に感染することによって起こる呼吸器感染症です。肺炎マイコプラズマは、自己増殖が可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類されています。小児や若い人の肺炎の原因としては比較的多いものの一つで、例年患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下ですが、成人の報告も見られます。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられますが、冬にやや増加する傾向があります。

症状は?

発熱や全身けん怠感(だるさ)、頭痛、たんを伴わない咳などの症状がみられます。せきは少し遅れて始まることもあります。咳は熱が下がったあとも長期にわたって(3〜4週間)続くのが特徴です。多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎となり、重症化することもあります。一般に、小児の方が軽くすむといわれています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は、「私は2024年、マイコプラズマ肺炎が大流行すると考えています。4年周期で流行をみせますが、本来、流行するはずの2020年は、新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、2020年以来大きな流行をみせませんでした。そのため、2016年の流行から、多くの方が感染していない状況となっており、いったん流行が始まると、大きな流行になると予測しています。通常、マイコプラズマ肺炎の定点報告数は、ゆっくりと上昇しますが、この1か月で患者数が増え始めてきました。秋から冬にかけて更に患者数が増えていくのではないでしょうか。マイコプラズマ肺炎は、子どもも大人もかかりますし、肺炎になって入院が必要になる方もいる感染症です。感染力は、そこまで強いとは言えないですが、家族間・学校・会社の同僚など接触時間が長い関係の人の間で広がりやすいです。発症すると、苦しいですし、体調的にもキツイです。これから警戒が必要な感染症です」と語っています。

感染経路は?

感染は飛沫感染が多く、患者のせきの飛沫を吸いこんだり、患者と身近で接触したりすることにより感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染の伝播がみられます。感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2〜3週間くらいとされています。

予防法は?

飛沫感染はインフルエンザや新型コロナなどでも起きるので、同じ感染対策が有効です。普段からの手洗い、そして部屋の換気。患者の咳から感染するので、咳の症状がある場合にはマスクを着用するなど、咳エチケットも重要です。

治療には抗菌薬(抗生物質)が有効だが、耐性菌が増えている

治療には抗菌薬が有効ですが、近年マイコプラズマ肺炎に通常使用されている抗菌薬が効かない「耐性菌」が増えてきているとされています。
安井医師は「通常マクロライド系の抗菌薬が用いられますが、それが効かない耐性菌の出現が問題になっています。しかしその場合でも他の抗菌薬で治療が可能ですので、早めに医療機関で診断を受けて、適切な治療を受けることが重要です」と語っています。以前安井医師が診察をした患者は、発熱からほぼ一週間で肺炎が悪化、呼吸不全に陥り、人工呼吸器が必要になったそうです。
安井医師「マイコプラズマ肺炎は抗菌薬による治療が可能ですが、正しく診断されていないと、正しい治療を行うことが出来ません。この夏、新型コロナウイルス感染症の流行も拡大していますが、治療法は感染症によって違いますので、原因を早く特定し適切な治療を受け、重症化を防いでいただければと思います」

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第29週(7/15-21)、マイコプラズマ肺炎とは
厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長 安井良則氏

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