【感染症ニュース】新型コロナ全国定点13.62(7/15-21) 九州地方高く、関東・東海地方など大都市圏でも増加 医師「発熱時はコロナ疑って」
2024年7月31日更新
高齢者施設や医療機関ではマスクを!
高齢者施設や医療機関ではマスクを!
厚生労働省が2024年7月26日に発表した2024年第29週(7/15-21)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、全国の定点当たり報告数は13.62。前週(7/8-14)の11.18と比べ、21.8%増加しています。都道府県別にみると、佐賀県(31.08)・宮崎県(29.72)・鹿児島県(27.38)・熊本県(27.13)・大分県(24.02)の順に高くなっています。また、福岡県(19.44)・長崎県(23.13)も、高い値となっており、九州地方で大きな流行となっていることが分かります。
そのほか、愛知県(20.82)・大阪府(12.72)と言った大都市でも、多くの患者報告があがっています。現状について、感染症に詳しい医師に聞きました。

【2024年】8月に注意してほしい感染症!新型コロナ8月末に向け増加の予測 医師「患者の受け入れ態勢限界迎えつつある」 RSウイルス感染症・インフルエンザの動向要注視

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「新型コロナウイルス感染症の患者報告数が、全国的に急増しています。エリア別にみると、特に、多くの患者報告が九州地方からあがっています。いったんピークをつけたような動きにも見えますが、今後の見極めが必要な時期です。身の回りの感染も増えていると考えられますので、注意が必要です。また、関東地方や愛知県や大阪府と言った大都市圏での急増も気がかりです。大阪府では、2024年当初の冬の流行のピークを超えています。今後、多くの地域で、本格的な流行が始まりピークに向かって伸びていくでしょう。8月中、本州では、こう言った状況が続くと予測しています。
大阪府にある私の勤務先では、増床したにも関わらず、満床状態が続いており、新たな患者さんの受け入れが困難な状況になっています。また、関東地方に勤務する医師から耳にしたのですが、発熱外来を訪れた6人の方の検査をしたところ、全ての方が新型コロナ陽性だったとの話も耳にしました。現在の状況で、もし発熱があれば、まずは新型コロナを疑った方がいいでしょう。健康に不安のある方は、今一度、感染対策を見直すことも肝要です。広いオフィスで、換気もできている会社などは、気にしすぎることはありませんが、屋内で不特定多数が集まり、飛沫が飛び交うような施設・イベントに出かけることや、換気が不十分な密室での集まりは、感染リスクが高まるでしょう。医療機関の受け入れ態勢の状況を考えると、自分の身は、自分で守るしかありません」としています。

新型コロナウイルス感染症とは?

新型コロナウイルスは感染者の口や鼻から、咳・くしゃみ・会話のときに排出されるウイルスを含む飛沫またはエアロゾルと呼ばれるさらに小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内に近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分で混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。感染すると2〜7日の潜伏期間のあと、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、咳といった上気道症状に加え、倦怠感・発熱・筋肉痛・頭痛といった全身症状が生じることが多く、その症状はインフルエンザとよく似ています。オミクロン株が主流となった現在は、嗅覚・味覚障害の症状は減少しています。軽症の場合は1週間以内に症状が軽快することが多い一方、発症から3か月を経過した時点で何らかの症状が2か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかない場合には、罹患後症状(後遺症)の可能性を考える必要があります。

夏の感染対策のポイント

感染対策としては従来どおり、「換気」「手洗い・手指消毒」が有効です。冷房を入れていても換気を心がけ、換気扇も活用してください。ウイルスは手から目や鼻、口に入ることがあるので、流水や石けんによる手洗い、アルコール製剤などでの手指消毒が有効です。また、高齢者や基礎疾患のある方が感染すれば、重症化リスクが高まります。夏休みやお盆で帰省するなど高齢の方と会う場合や、大人数で集まる場合は、感染予防を心がけ体調を整えるようにしましょう。夏の暑さのある中で、屋外でのマスク着用は、現実的ではありませんが、医療機関や高齢者施設など感染した場合のリスクが高い方がいらっしゃる施設を訪問するときには、感染させないためにもマスクの着用が効果的です。

ワクチン後期間経過で抗体価が低下?

安井医師は医療現場の状況をこう語っています。「現在流行している株がKP.3.3に置き換わっても、症状はそれほど変化していないと感じています。しかし肺炎の方が多くなっていて、高齢者の方でも肺炎がみられるようになりました。これは以前にはなかったことです。原因として考えられるのは、ワクチンを接種してから多くの方が6か月以上経過していて、抗体価が下がっているのではないかということです。今年の秋冬に自治体による定期接種が予定されていますが、この夏の流行は重症化に十分注意する必要があると思います」

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について令和6年第28週、新型コロナワクチンQ&A、新型コロナワクチンについて
国立感染症研究所感染症疫学センター:新型コロナウイルス感染症サーベイランス月報発生動向の状況把握2024年6月

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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