【感染症ニュース】夏の流行は火がついた? 新型コロナ定点報告数が前週の1.25倍に急増 医師「全国的に流行拡大」
2024年7月10日更新
今年の夏も流行?
今年の夏も流行?
厚生労働省が2024年7月5日に発表した令和6年第26週(6/24-30)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について」によると、全国の定点当たり報告数は5.79。前週と比較すると1.25倍となり、急激に増加しています。4月の終わりを底に、8週連続で増加しています。

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沖縄は高水準で流行が継続。鹿児島、熊本、宮崎、佐賀など九州で流行拡大

都道府県別の定点当たり報告数では沖縄は29.91で、30に迫る勢いです。そのほか鹿児島15.42、熊本12.21、宮崎11.78、佐賀11.26で九州地方が多くなっています。この先、新型コロナウイルス感染症は全国的な流行に広がっていくのでしょうか。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「新型コロナウイルス感染症の再流行の火がついたと見ています。昨年も夏に流行しましたが、今年は特に空梅雨(からつゆ)傾向にある地域で気温が高い状態が続いており、昨年の夏と同じく新型コロナウイルスが広がりやすい気候になっていることが原因になっているかもしれません。特に暑さが続いている沖縄や九州では患者が多く、本格的な夏を迎えるこれから、全国的に流行が拡大していく可能性もあります」と語っています。

新型コロナウイルス感染症とは?

新型コロナウイルスは感染者の口や鼻から、咳・くしゃみ・会話のときに排出されるウイルスを含む飛沫またはエアロゾルと呼ばれるさらに小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内に近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分で混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。感染すると2〜7日の潜伏期間のあと、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、咳といった上気道症状に加え、倦怠感・発熱・筋肉痛・頭痛といった全身症状が生じることが多く、その症状はインフルエンザとよく似ています。オミクロン株が主流となった現在は、嗅覚・味覚障害の症状は減少しています。軽症の場合は1週間以内に症状が軽快することが多い一方、発症から3か月を経過した時点で何らかの症状が2か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかない場合には、罹患後症状(後遺症)の可能性を考える必要があります。

新たな変異株KP.3が急増

国立感染症研究所感染症疫学センターでは、新型コロナウイルスに関するデータを発表していますが、第18から21週にかけての調査では、その期間に検出した新型コロナウイルスはBA.2系統が75.37%。特にKP.3という株が54.48%と最も多くなりました。KP.3はオミクロン株の一種ですが、ワクチンや感染による中和抗体による免疫からの逃避の可能性が高く、以前感染したことがある人でも、再感染しやすいと言われています。一方、症状については過去に流行したBA2.86などとそれほど変わらないと見られています。

安井医師の勤務する病院では…

では、実際の医療現場は今、どの様になっているのでしょうか。安井医師は勤務する大阪の病院の状況をこのように話しています。「当院には連日複数の患者が入院してきて、流行の拡大を感じています。多くは80代、90代ですが、100歳以上も入院しています。高齢の方は家庭内感染や高齢者施設やデイケアセンターなどで感染しているケースが多いのではないかと思われます。このような施設では、お見舞いに来る方など外からウイルスが持ち込まれるケースも否定できません。現在、流行している新型コロナの症状は、そこまで重くないと考えている方もいらっしゃいますが、それでも、50代、40代と言った比較的若い年齢層の方が肺炎などを起こし、中には、挿管が必要なケースもあります。また、リハビリ施設でのクラスター発生も耳にします。これから1か月は新型コロナの感染に注意する必要があると感じています。」

高齢者などに接する時は、マスクなど感染対策を

一方、そのリハビリ施設でスタッフの感染は今のところないそうです。医師や看護師・スタッフなどは、入所者の方と接する時には必ずマスクや手指消毒などの感染対策を十分に行っているため、クラスターが発生した場合でも感染するケースはほとんどないとのことです。暑い夏で、普段からマスクを着用するのは、熱中症を防ぐためにも無理があると思いますが、高齢者など感染した場合のリスクが高い方と接する時などは、マスクなど感染対策をお願いします。

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について令和6年第26週(6/24~30)、新型コロナワクチンQ&A、新型コロナワクチンについて
国立感染症研究所感染症疫学センター:新型コロナウイルス感染症サーベイランス月報発生動向の状況把握2024年5月

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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