国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年第13週(3/25-31)によると、全国のRSウイルス感染症の定点あたり報告数は0.8。前週の0.58から、およそ38%増加しています。関西地方・北関東などで流行がみられ、関西地方の大阪府では、前週の2.23から、2.63に増加。周辺の奈良県では、前週の1.88から3.38へ大きく増加し、京都府でも、前週比で2倍以上に増えています。また、関東地方でも、栃木県(1.08)・群馬県(1.15)・埼玉県(1.25)で定点報告数が1を超えてくるなど、注意が必要です。RSウイルス感染症は、乳幼児…特に生後1か月未満の子どもが感染すると突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。
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感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「大阪府では、RSウイルス感染症の報告がさらに増加しており、翌14週以降も更に増え続ける見込みで、2023年のピークに近づいています。流行が早く始まり、早めに収束する可能性もありますが、流行状況には、注視が必要です。一方、RSウイルス感染症は、増え始めると、勢いがなかなか収まらないのが特徴です。関西地方では、大阪府を中心に奈良県・京都府などに広がりを見せていますし、北関東から、東京都・神奈川県などの周辺大都市に、今後、波及するおそれもあり、注意が必要です。いずれ全国に広がりをみせると考えられますが、現時点で、流行規模などの予測は、困難です」としています。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症は、RS(respiratory syncytial)ウイルスを病原体とする呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の人が1度は感染するとされています。症状としては、発熱や鼻汁などの軽い風邪のような症状から重い肺炎まで様々です。初回の感染時にはより重症化しやすいといわれており、特に生後6か月以内にRSウイルスに感染した場合は、細気管支炎、肺炎など重症化する場合があります。
乳幼児の感染には要注意!
RSは生涯にわたって感染を繰り返しますが、幼児期における再感染での発症はよくみられ、その多くは軽い症状です。また、成人では通常は感冒用症状のみです。初感染の乳幼児においても約7割は鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに警戒しますが、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などが出現します。重篤な合併症として注意すべきものには、無呼吸発作、急性脳症等があります。生後1か月未満の児がRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、また突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。
RSウイルスの感染経路は?
RSウイルスは主に接触感染と飛沫感染で感染が広がります。RSウイルスに感染している人との直接の接触や、感染者が触れたことによりウイルスがついた手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップなど)を触ったり、舐めたりすることで感染する接触感染。あるいはRSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、あるいは会話などをした際に口から飛び散る飛沫を浴びて吸い込むことによる飛沫感染で広がります。乳幼児に関しては、周りの大人やきょうだいから感染することが多く、風邪のような症状があるときには乳幼児になるべく近づかないなどの配慮が必要です。
引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2024年13週
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A(令和6年1月15日改訂)、
大阪府感染症発生動向調査週報(速報)2024年12週
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏