国立感染症研究所の2024年第7週(2/12-18)速報データによると、RSウイルス感染症の全国の定点あたりの報告数は0.15。前週の0.14から、7.1%増加しています。都道府県別にみると、北海道0.64・福島県0.43・和歌山0.4・栃木県0.27・福井県0.24となっていますが、全国的に、低調な水準となっています。しかし、感染症に詳しい医師は、今後の発生動向を注視していると言います。
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感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「RSウイルス感染症の患者報告数は、現在、急増こそしていませんが、着実に増え始めています。大阪府では、翌第8週に、伸びをみせており、全国的に、近々、急増する可能性があります。全国的な流行は、4月頃と予測していますが、地域によっては、前倒しになる可能性もあります。RSウイルス感染症で、最も気がかりなのは、乳幼児の感染です。RSウイルス感染症が増え始めると、乳幼児の入院が増えます。場合によっては命に関わる感染症ですので、小さなお子さんがいらっしゃるご家庭は注意が必要です」としています。
RSウイルス感染症とは…
RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスが伝播することによって発生する呼吸器感染症です。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の小児がRSウイルスの初感染を受けるとされています。乳幼児期においては非常に重要な疾患であり、特に生後数週間~数か月間の時期においては母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こします。
症状
潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされています。発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日間続き、初感染の小児の20~30%では、その後、下気道症状があらわれると言われています。感染が下気道、とくに細気管支に及んだ場合には特徴的な病型である細気管支炎となります。細気管支炎は、炎症性浮腫と分泌物、脱落上皮により細気管支が狭くなるに従って、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などがあらわれます。痰(たん)の貯留により無気肺を起こすことも珍しくありません。心肺に基礎疾患を有する小児では、しばしば遷延化・重症化します。発熱は、初期症状として普通に見られますが、呼吸状態の悪化により入院が必要となったときには、体温は38℃以下や平熱となっている場合が多いです。RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとの報告もあります。また、低出生体重児や心肺系に基礎疾患や免疫不全が存在する場合は重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きいです。
予防にはマスク着用・手指衛生を
RSウイルス感染症には特効薬はなく、感染した場合、治療は基本的には症状を和らげる治療=対症療法を行います。またワクチンはなく、飛沫感染と接触感染に対する予防が有効です。咳などの呼吸器症状がある場合は、飛沫感染対策としてマスクを着用して0歳児、1歳に接することが大切です。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系消毒剤などで消毒し、流水・石鹸による手洗いか、アルコール製剤による手指衛生が重要です。
周囲からの感染に注意
重症化しやすい乳児や基礎疾患のある子どもにRSウイルスをうつすのは、まわりの大人やきょうだいです。RSウイルスは生涯に何度も感染しますが、大人にとってはただの風邪か、無症状の場合もあります。特にRSウイルス感染症が流行している地域では、自分が感染している可能性もあると思って、乳幼児に接してください。
引用
国立感染症研究所『RSウイルス感染症とは』
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏