【感染症ニュース】溶連菌感染症全国定点2.83 医師「抗菌薬で治療可能。治療遅れは、長引くことも」
2024年1月26日更新
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流行地域とその周辺は注意
流行地域とその周辺は注意
国立感染症研究所の2024年第2週(1/8-1/14)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点あたりの報告数は2.83。前週(第1週)1.73と比較し、およそ1.64倍の増加となりました。前週の第1週は、年始休暇の関係で、実診療日数が少ないため比較は難しいですが、今後の動向には注意が必要です。
全国的に患者が発生しており、北海道(4.2)・山形県(5.68)・富山県(4.52)・鳥取県(4.84)・福岡県(5.71)など、日本海側で多くの報告があがっています。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。略して「溶連菌感染症」ということもあります。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。

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感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室長の安井良則医師は「溶連菌感染症は、様々な合併症を併発する可能性があるので、早期治療が重要です。発熱やノドの痛みなど、初期に起こる症状がある場合は、早めに医療機関を受診していただければと思います。溶連菌感染症は抗菌薬で治りますが、治療が遅れると、それだけ症状が長引くおそれがあります。溶連菌は、薬に対する耐性菌も存在し、効果が薄い薬もあります。また、途中で服用を止めてしまうと、症状が、ぶり返す場合もあります。しっかり治療することが必要です。大阪府では、翌第3週も増加しており、流行地域とその周辺は、まだまだ注意が必要でしょう」としています。

溶連菌感染症の症状は?

主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂疹(のうかしん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎など、さまざまな症状を呈します。潜伏期間は2〜5日。突然の発熱と全身倦怠感、ノドの痛みなどが起こり、しばしば嘔吐を伴うことがあります。その後、舌がいちご状に赤く腫れ(苺舌)、全身に鮮紅色の発しんが出る「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがあります。また、発しんがおさまった後、指の皮がむけることがあります。伝染性膿痂疹は「とびひ」とも呼ばれています。発症初期には水疱(水ぶくれ)がみられ、化膿したり、かさぶたを作ったりします。また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎にかかると、合併症を引き起こす懸念があります。肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患。あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることが知られています。

治療法は?

治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬ですが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能です。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要です。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤が使用される場合があります。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第2週(1/8-14)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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