国立感染症研究所の第46週(11/6-12)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は3.3。過去最多を更新した前週の3.23からは、微増でしたが、それでも増加が続いています。現在の方法で集計を始めた1999年以来最多であり、全国でも患者報告数が3を超える警報レベルが継続しています。都道府県別では、北海道が6.88と最多となりました。また先週、最多であった福岡県は、6.58(前週7.41)と減少に転じましたが、患者報告数は、まだまだ高い値を示しています。
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感染症の専門医は…
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「咽頭結膜熱が、過去最多を更新しました。ここ3年間、大きな流行がみられなかったのが要因と考えられます。咽頭結膜熱は、アデノウイルスに感染することによって起こる感染症で、ウイルスが検出され、発熱・ノドの痛み・結膜炎の3つの症状が揃って、初めて咽頭結膜熱という病名がつきます。しかしその3つが揃わない場合もあるので、最近は『アデノウイルス感染症』と呼ぶ場合もあります。検査キットがあるため、小児科などで判定が可能です。幼稚園・保育園などお子さんの間での流行を耳にしますが、お子さんは、免疫をつけて成長していきます。但し、お子さんの体調がすぐれない場合は、保護者の方は、すぐに医療機関を受診させてください」としています。
咽頭結膜熱とは?
咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39℃の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。
感染経路は?流行時期は?
咽頭結膜熱は、通常飛沫感染、あるいは手指を介した接触感染でうつります。プールの水や、タオルを共用することで感染が広がることで「プール熱」と呼ばれることもあります。なお、プール熱という名前の方が一般的に知られるようになり、プールに入ったら感染してしまうなどというイメージを持っている方もいらっしゃいますが、残留塩素濃度の基準を満たしているプールの水を介して感染することはほとんどありません。かつては例年、夏に流行のピークがあり、秋から冬にかけても患者が増加傾向になりました。しかし、今年の流行の傾向は過去には全くなかったことです。
引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第46週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」
厚生労働省:咽頭結膜熱について
取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏