国立感染症研究所の第41週(10/9-15)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は1.75。前週からは0.12ポイントの減少となりましたが、過去10年で最多を継続中です。都道府県別では、福岡、沖縄、奈良、佐賀、大阪で警報レベルを超える流行となっています。
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【2023年】10月に注意してほしい感染症!専門医が予測「インフルエンザ流行加速 コロナは減少するか見極め必要 季節外れの流行のアデノウイルス感染症も…」 要注意は梅毒
咽頭結膜熱とは?
咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39度の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。
感染症に詳しい医師は…
感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、
「咽頭結膜熱は例年であれば12月頃にピークがありました。現在は例年と大きく違う時期での流行となっているので、これからさらに大きな流行となるのか、それとも減少していくのか、予測をするのが非常に困難です。咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因の感染症ですが、アデノウイルスには様々な型があり、型によっては流行性角結膜炎など、様々な症状の病気を引き起こします。アデノウイルスに感染しやすい状況が続いていると思いますので、感染対策など流行に対する警戒が必要です」と語っています。
「流行性角結膜炎」もアデノウイルスが原因の感染症
アデノウイルスには51種類の血清型および、52型以降の遺伝型があり、型によって呼吸器感染症、流行性角結膜炎、出血性膀胱炎、胃腸炎など、さまざまな病気を引き起こします。流行性角結膜炎は、咽頭結膜熱と同じく眼の病気ですが、その症状は大きく異なります。広島県では、2023年10月12日に「流行性角結膜炎」警報が発令されています。安井医師は、「咽頭結膜熱はノドの痛み、発熱、結膜炎が主な症状ですが、流行性角結膜炎は、発熱などはなく眼の症状だけの感染症です。ですが、急に発症して眼やまぶたが腫れ上がり、角膜にまで症状が及ぶことがあります。接触感染でうつりますが、非常に感染力が強いので注意が必要です。あまりに感染力が強いため、過去には、病棟閉鎖したこともあります。流行性角結膜炎と診断された場合は、コンビニなどに立ち寄ることも勧めません」と語っています。
流行性角結膜炎は、病院や職場、家庭など患者との接触で感染
流行性角結膜炎は患者からの感染が多く、病院の医師・看護婦などの医療従事者、さらに病院や職場、家庭など人が濃密に接触する場所で流行するケースがあります。ウイルスにより汚染されたティッシュペーパー、タオル、洗面器などに触れたり、患者が触ったドアノブや手すり、エレベーターのボタンなどに触れたりすることから感染することがあります。ウイルスが付着した手で目をこすり、感染してしまうのです。潜伏期は8〜14日。急に発症し、涙が流れ、まぶたが腫れ上がります。耳前リンパ節の腫れを伴うこともあり、角膜に炎症が及ぶと透明度が低下し、混濁が数年続くこともあります。新生児や乳幼児では偽膜性結膜炎を起こし、細菌の混合感染で角膜穿孔を起こすことがあるので注意が必要です。
治療は対症療法
アデノウイルス全般について有効な薬剤はなく、治療は対症療法的に抗炎症剤の点眼を行います。角膜に炎症が及び混濁が見られるときにはステロイド剤の点眼、細菌の混合感染の可能性に対しては抗菌剤の点眼を行います。
今年の流行性角結膜炎の報告数は、1万人を超える
国立感染症研究所の第41週(10/9-15)速報データによると、流行性角結膜炎の全国の定点あたりの報告数は0.83。全国およそ700の眼科からの報告となりますが、今年の報告数は合計1万人を超えています。アデノウイルスによる感染症が流行している時期には、流行性角結膜炎の可能性も考えておく必要があります。
引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第41週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」「流行性角結膜炎とは」
厚生労働省:「流行性角結膜炎」
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏