【感染症ニュース】咽頭結膜熱 全国定点報告数は過去10年で最多に 日頃から飛沫・接触感染対策を
2023年10月13日更新
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おむつの交換で広がることも
おむつの交換で広がることも
国立感染症研究所の第39週(9/25-10/1)速報データによると、咽頭結膜熱の全国の定点あたりの報告数は1.81。前週から約0.5ポイント増加し、過去10年で最多となっています。福岡、沖縄、大阪、奈良など西日本が多くなっていますが、ほとんどの都道府県で増加しています。別名「プール熱」とも呼ばれており、春から夏にかけて流行する感染症です。主にアデノウイルス3型(他に1、2、4、5、6、7型等でもみられる)に感染することによってみられる咽頭炎、結膜炎を主とする急性ウイルス性感染症です。なお、「プール熱」という名前の方が一般的に知られるようになり、プールに入ったら感染してしまうなどというイメージを持っている方もいらっしゃいますが、残留塩素濃度の基準を満たしているプールの水を介して感染することはほとんどありません。


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咽頭結膜熱とは?

咽頭結膜熱とは、アデノウイルスが原因の感染症です。症状としては、38~39度の発熱、ノドの痛み、結膜炎があります。5〜7日の潜伏期間の後に発症。まず発熱があり、頭痛、食欲不振、全体倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎に伴う結膜充血、眼痛などがあり、3〜5日程度持続します。特に治療法はなく、対症療法が中心となります。子どもに多い感染症で、罹患年齢は5歳以下が約6割を占めているというデータもあります。生後14日以内の新生児に感染した場合は、全身性感染を起こしやすく、重症化する場合があることが報告されています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、
「咽頭結膜熱は例年であれば7〜8月に感染のピークがありましたが、今年は9月から急増しています。過去の傾向が当てはまらないため、この先更に増えていくのか、それとも流行が収まるのか、予測が難しくなっています。また、咽頭結膜熱の原因であるアデノウイルスにはいろいろな血清型があり、その型によって呼吸器感染症や流行性角結膜炎、出血性膀胱炎など様々な症状を呈します。アデノウイルスは予防が難しいので、感染対策に気をつけていただければと思います」と語っています。

アデノウイルスの感染経路は?予防法は?

咽頭結膜熱などを起こすアデノウイルスは、飛沫感染、接触感染などでうつります。
・飛沫感染
感染している人や咳やくしゃみ、会話をした際に、病原体が含まれた小さな水滴(飛沫)が口から飛び、これを近くにいる人が吸い込むことで感染します。飛沫が飛び散る範囲は1〜2メートルです。子どもたちが遊ぶ時などは距離が近く、また感染したことがなく免疫がない子どもが多いため、集団感染が起こりやすくなります。保育所や幼稚園などでは、咳やくしゃみなどの症状がある場合、登園を控え、まわりにうつさないようにすることが重要です。
・接触感染
感染源に直接触れること(握手、だっこ、キスなど)や、汚染されたもの(ドアノブ、手すり、遊具など)に触れることでアデノウイルスが手に付着し、その手で口や鼻、眼などを触ることでも感染します。感染者が使用したタオルなどを共用することで感染することもあります。小さいお子さんではおもちゃをなめたりすることもあり感染を防ぐことは難しいですが、接触感染に最も重要な対策は手洗いなどにより手指を清潔に保つことです。小さな子どもは大人が手伝ってあげて、正しい手洗いの仕方でウイルスを除去することが重要です。

症状がなくなっても約1か月にわたってウイルスを排出

咽頭結膜熱は症状がなくなっても、約1か月にわたって尿や便の中にウイルスを排出するといわれています。トイレやおむつ交換等で衛生に気をつけないと、感染を広げる原因となります。また、感染しても発病しない場合もあるので、保育園、幼稚園、小学校などでは流行時期には集団感染に気をつける必要があります。

登園の目安は?

厚生労働省が発行する「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版)」によると、罹患した子どもの登園の目安は「発熱、充血などの主な症状が消失したあと2日を経過していること」となっています。アデノウイルスに感染したことがない小さなお子さんは、感染を防ぐことは難しいですが、身の回りを清潔に保ち、体調が悪いときは無理をせずに休むなど、感染症にかからない、そしてまわりにもうつさないよう、日々過ごしましょう。

引用
国立感染症研究所:「IDWR速報データ2023年第39週」「咽頭結膜熱とは」「アデノウイルスの種類と病気」「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改定版)」
厚生労働省:咽頭結膜熱について

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏

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