厚生労働省が発表した第35週(8/28-9/3)の「インフルエンザの発生状況について」によると、全国の定点あたりの報告数は2.56。前週の1.40から約83%増となりました。なかなか減り切らないインフルエンザですが、東日本などで、増加傾向で、宮城県では、3.98と、前週比で3倍以上となりました。東京都でも、2.96と前週比で2倍以上となっています。インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられています。本来、インフルエンザの流行は、例年11月下旬から12月上旬にかけて始まり、1月下旬から2月上旬にピークを迎え、3月頃まで続きます。しかし、現在のように、前シーズンから継続的に患者報告が続くことは、珍しいとのことです。現在の状況について、感染症の専門医に伺いました。
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感染症の専門医は…
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「インフルエンザの患者報告が、前シーズンから継続的にあがっています。第34週(8/21-8/27)も増加しましたが、気がかりなのが、学校が本格的に再開する第36週(9/4-9/10)以降のデータです。全国的にも、インフルエンザによるとみられる学級閉鎖の情報も入ってきています。先日、大阪府の医師らとの会議で、流行開始の目安を超える定点辺り1.0を既に超えているが、前シーズンからの継続的な流行であり、『流行』と言っていいのか議論になりました。とは言え、現在は、例年の11月中旬から下旬の流行と同水準であり、注意が必要です。現状での予測は、難しいですが、10月ごろにはある程度まとまった数の報告があがるおそれもあります。昨年の欧米の流行状況もあり、秋に、大きな流行をみせる可能性は、否定できません。現在、高いレベルからの流行スタートラインに立っていると認識して、インフルエンザの流行に備える必要があります」としています。
インフルエンザとは?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの症状が比較的急速に現れるのが特徴です。あわせて普通の風邪と同じように、ノドの痛み、鼻汁、咳などの症状も見られます。子どもではまれに急性脳症を、高齢の方や免疫力の低下している方では、二次性の肺炎を伴うなど、重症になることがあります。
インフルエンザの予防
インフルエンザは、まずかからないことが重要です。予防には、外出後の手洗い、適度な湿度の保持(50〜60%)、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取、人混みや繁華街への外出を控える、そしてインフルエンザワクチン接種などが有効です。ワクチンは毎年10月頃から接種が始まります。ワクチンの効果が現れるのは接種から2週間程度かかるとされているので、流行前に接種を済ませることが重要です。インフルエンザワクチンは13歳以上の方は1回接種、13歳未満の方は2回接種と定められています。接種すればインフルエンザに絶対かからないというものではありませんが、発病の予防や発病後の重症化に関して一定の効果があるとされています。
インフルエンザをうつさない
そして感染した場合は、他の人にうつさないようにすることが重要です。一般的に、インフルエンザは発症前日から発症後3〜7日間は鼻やノドからウイルスを排出するといわれています。その期間は外出を控える必要があります。排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみなどの症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用するなど、周りの方へうつさない配慮をしましょう。
引用
厚生労働省:「インフルエンザの発生状況について」令和5年第35週(8/28-9/3)
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏