【感染症ニュース】2023年の梅毒感染者8000人超え 専門医「特に10代・20代の女性に知ってほしい」 妊婦の感染はおなかの赤ちゃんが先天梅毒になる可能性も…
2023年8月4日更新
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梅毒は妊娠中も治療が可能!
梅毒は妊娠中も治療が可能!
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年29週(7/17〜23) 速報データによると、この1週間の梅毒の感染者報告数は全国で179人。今年の累積報告数は8349人となりました。去年のこの時期(2022年19週)の累積報告数と比較すると、約1.3倍に増加しており、流行の拡大傾向は続いています。都道府県別では、東京都2052人、大阪府1142人、愛知県503人、福岡県437人、北海道420人、神奈川県384人と大都市圏が多く、茨城、埼玉、千葉、静岡、兵庫、岡山、広島、熊本、宮崎で100人を超えています。

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梅毒とはどのような感染症?

 梅毒とは、梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症で、主にセックスなどの性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。また、一度治っても再び感染することがあります。感染者の年齢は、男性は20〜50歳代、女性は20歳代が多くなっています。男性の場合、以前は同性間の性的接触による感染が多かったのですが、近年では異性間での性的接触による感染が多くなっています。

感染症に詳しい医師は・・・

 感染症に詳しい大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「梅毒は去年、13000人近くの感染報告がありましたが、今年はそれをさらに上回り2万人に迫る勢いとなっています。また、妊婦さんが感染している場合、流産や死産、そして生まれてくる赤ちゃんが先天梅毒になる可能性があります。先天梅毒の赤ちゃんは増える傾向にあり、なかなか流行に歯止めがかからない状況に憂慮しています」と語っています。

先天梅毒とは?

 先天梅毒の場合、胎盤を介して母親から胎児に梅毒トレポネーマがうつります。出生児には無症状のことが多いのですが、早期先天梅毒では生後数か月以内に水泡性発しん、斑状発しんなどに加え、全身性リンパ節腫脹、肝脾腫、骨軟骨炎、鼻閉などを呈します。晩期先天梅毒では、生後約2年以降にハッチンソン3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯)などを呈します。

梅毒に感染すると?

 梅毒に感染すると数週間後に、主に口の中や肛門、性器などにしこりや潰瘍ができることがあります。これらの症状は痛みが伴わないことが多く、治療しなくても自然に治ります。しかし、その間にも病気が進行する場合があります。感染から3か月程度すると、今度は手のひら、足の裏、体幹部などに淡い赤色の発しんがでます。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(しん)」とも呼ばれますが、この時にはすでに梅毒の原因である梅毒トレポネーマが全身に広がっています。しかしこの症状も数週間以内に自然に消えますが、治ったわけではありません。他にも肝臓や腎臓など、全身の臓器にさまざまな症状を呈することがあります。そして、感染後数年後には、ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や、筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。また、大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状・認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられることもあります。

早期発見、早期治療。梅毒は治る感染症

 梅毒は適切な治療を受ければ治る感染症です。内服薬での治療が一般的ですが、注射薬での治療もあり、早期の場合は1回の注射で済みます。

 安井医師は、「梅毒は症状がない期間が長く、知らないうちに進行していきます。梅毒の症状が疑われた場合は、すぐに保健所などで検査をして治療をしてください。特に、これからお母さんになる10代・20代の方には、梅毒に関する知識を身につけて頂ければと思います。感染した部位に腫れがみられますが、その症状は、いったん消えます。しかし、そのまま体内に病原体は残っています。以前、梅毒の患者は、性産業従事者など、かなり限定的な方の間で確認されていましたが、患者数の増加に伴い、一般にも広がりをみせています。妊婦さんは健診の際に血液検査で梅毒について調べますので、必ず健診を受けていただければと思います」としています。

引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年29週(7/17〜23) 、IDWR2022年第42号〈注意すべき感染症〉梅毒、妊娠梅毒の治療
厚生労働省HP:梅毒、梅毒に関するQ&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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