国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年25週(6/19〜25)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたり報告数は3.16。前週から約9%増え、7週連続の増加となっています。都道府県別に見ると、新潟(5.91)・宮城(5.22)・三重(6.04)・島根(5.83)・山口(6.23)・愛媛(5.59)・大分(7.69)・福岡(5.58)などで、高い値を示しています。
東日本でも増加傾向にあり、今後、首都圏などでも注意が必要です。
今回、『感染症・予防接種ナビ』には、愛媛県からの経験談が寄せられています。
(経験談)3歳・愛媛県
1~2日目
発熱はないが朝からゴロゴロしていることが多かった。少しだけ咳、鼻水は一切なし。食欲もあり。念の為、耳鼻科で鼻の状態とか咳の状態を伝える。咳はあまりなかったが、聞いたことのない咳を数回、ゴボっという重たい咳をしたので、クループかと心配。風邪かアレルギーかなということで、いつものタン切りの薬などを出してもらう。
3日目
朝から微熱。でも元気なので様子見。夕方から急に高熱。38.7℃前後をウロウロし、夕方から食事もせずに眠り続ける。食欲なし。下痢が始まる。たん絡みの咳が始まり、急に鼻水が出だす。
4日目
夜中~朝にかけて高熱が続く。熱は上がったり下がったり。37.7℃になって遊び始めたかと思えば、急に38℃後半になったりと、予測できない感じでした。小児科を受診する時には39.7℃あたりをウロウロしてグッタリ。RSウィルスの陽性反応。胸の音は綺麗なので、気管支炎などにもなってないと言われました。食欲はまあまああった。痰絡みの咳がひどくなり、夜中も咳き込む。鼻水はダラダラ止まらない感じ。下痢も継続。
5日目
朝から平熱に近くなった。たん絡みの咳は継続。特に横になるとひどい。鼻水も相変わらずダラダラ。食欲は落ちてきた。下痢も継続。(今ここです)
感染症の専門医は…
「RSウイルス感染症の流行が、ゆっくりと東日本にも広がりつつあります。人口の多い首都圏でも増加していますし、全国的な感染者数の増加はしばらく続きそうです。また、現在、流行している地域の周辺、愛知・静岡・岐阜なども注意が必要でしょう。RSウイルス感染症は、流行が始まってから、ある程度長い期間、流行が続きます。乳幼児がかかると、疾患のインパクトが大きく、入院するケースも珍しくありません。ヘルパンギーナも流行していますが、小さなお子さんがいらっしゃる家庭などでは、RSウイルス感染症の方がより注意が必要です」としています。
予防にはマスク着用・手指衛生を
RSウイルス感染症には特効薬はなく、感染した場合、治療は基本的には症状を和らげる治療=対症療法を行います。またワクチンはなく、飛沫感染と接触感染に対する予防が有効です。咳などの呼吸器症状がある場合は、飛沫感染対策としてマスクを着用して0歳児、1歳に接することが大切です。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系消毒剤などで消毒し、流水・石鹸による手洗いか、アルコール製剤による手指衛生が重要です。
周囲からの感染に注意
重症化しやすい乳児や基礎疾患のある子どもにRSウイルスをうつすのは、まわりの大人やきょうだいです。RSウイルスは生涯に何度も感染しますが、大人にとってはただの風邪か、無症状の場合もあります。特にRSウイルス感染症が流行している地域では、自分が感染している可能性もあると思って、乳幼児に接してください。
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏