国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年24週(6/12〜18)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたり報告数は2.9。前週から微増で、6週連続の増加となっています。
東日本でも増加傾向にあり、東京都は、2003年の調査開始以来、最も高い値を示した2019年と同様の傾向があるとして、注意を呼び掛けています。
また、2023年第1週から第24週までの患者の74%が2歳以下の乳幼児であったとしています。
RSウイルス感染症は、近畿では、患者数の伸びは、やや落ち着きをみせ始めていますが、流行地域は東日本に広がりつつあり、注意が必要です。
今回、感染症・予防接種ナビに寄せられたのは、岐阜県の方からの経験談です。
岐阜県・3歳
6/12 朝から軽い咳をしているが、熱がなかったので登園。お迎え時に担任から「RSなどで10人休んでいるから○○君も様子見してて下さい」と言われる。
6/13 念の為病院受診。病院で検温すると37.8℃ある。軽い咳、食欲はあり。夜から38.8℃に上がる。
6/14 朝39.2℃、昼39.8℃ ぐったりしていて呼びかけにも反応薄い。食欲全くなし。痰がらみの咳が酷い。夜39.6℃ 夜中も咳と鼻づまりで何度か起きてしまう。
6/15 朝38.8℃、昼38.6℃、夜39.2℃ 食欲なし。咳、鼻づまり酷い。
6/16 朝38.2℃、昼38.0℃、夜37.9℃ アイスだけ食べれるようになる。
6/17 朝37.8℃ ようやく高熱脱却。昼37.6℃ 少し食欲が出てくる。夜37.5℃。相変わらず痰がらみの咳はしている。
6/18 朝37.2℃、昼36.8℃、夜36.7℃。一日通して平熱に戻り一安心。咳は少し残っている。熱は下がりましたがまだ咳があるので、6/21までお休みさせました。
感染症の専門医は…
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「RSウイルス感染症は、近畿の患者数の伸びは、落ち着きをみせ始めています。今後、中部地方・関東地方の患者数の動向に注意が必要です。特に、愛知・三重・静岡・神奈川・東京の患者数の推移に注視しています。関東では、増加傾向にありますが、急激に増えている感じではありません。RSウイルス感染症の迅速検査は、保険適用の対象が1歳未満なので、出ている数字もどれだけ実態を反映したものか不明です。確かに、0歳児が重症化しやすいと言うのは分かりますが、現行の体制では、小児年齢でのRSウイルス感染症発症の実態は、つかみ切れていないと言ってもいいでしょう。今回、園の先生は、RSウイルス感染症の流行情報を適切に発信できていたと考えます。保護者の方も、先生の出しているチラシ・掲示板などの情報をもとに、お子さんに急激な体調の変化が無いかを確認するようにしてください。RSウイルス感染症が周囲で流行している場合、乳幼児は、特に注意が必要です」としています。
予防にはマスク着用・手指衛生を
RSウイルス感染症には特効薬はなく、感染した場合、治療は基本的には症状を和らげる治療=対症療法を行います。またワクチンはなく、飛沫感染と接触感染に対する予防が有効です。咳などの呼吸器症状がある場合は、飛沫感染対策としてマスクを着用して0歳児、1歳に接することが大切です。接触感染対策としては、子どもたちが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコールや塩素系消毒剤などで消毒し、流水・石鹸による手洗いか、アルコール製剤による手指衛生が重要です。
周囲からの感染に注意
重症化しやすい乳児や基礎疾患のある子どもにRSウイルスをうつすのは、まわりの大人やきょうだいです。RSウイルスは生涯に何度も感染しますが、大人にとってはただの風邪か、無症状の場合もあります。特にRSウイルス感染症が流行している地域では、自分が感染している可能性もあると思って、乳幼児に接してください。
引用
東京都福祉保健局2023年6月22日報道発表資料
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏