【感染症ニュース】専門医「今後のワクチン接種の在り方について議論が必要な時期」 新型コロナウイルスの流行株はXBB.系統へ 第122回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料から
2023年6月29日更新
半年以上前に更新された記事です。

梅雨明けに大流行?
梅雨明けに大流行?
 2023年6月16日、第122回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが開催されました。これは、新型コロナウイルス感染症対策を円滑に推進するに当たって必要となる、医療・公衆衛生分野の専門的・技術的な事項について、厚生労働省に対し必要な助言等を行うもので、新型コロナの流行が始まった2020年2月から始まりました。今回は2か月ぶり、5類になってからは初めての開催となります。公開された資料から、新型コロナの現状をお伝えします。

感染状況や医療提供体制の状況など

・新規患者数は4月上旬以降ゆるやかな増加傾向となっており、5類移行後も増加が継続している。

・地域別の新規患者数は36都府県で前週より増加傾向にあり、沖縄県で感染拡大の傾向がみられる。

・変異株の発生動向については、XBB.系統の割合が大部分を占めており、特にXBB.1.16系統は増加傾向。XBB.1.5系統は低下傾向、XBB.1.9系統は横ばいとなっている。

・新規入院者数や重症化数は、いずれも増加傾向になっている。医療提供体制の状況について、全国的にひっ迫は見られないが、沖縄の医療の状況には注視が必要。

今後の見通しは?

・過去の状況などを踏まえると、新規患者数の増加傾向が継続し、夏の間に一定の感染拡大が生じる可能性がある。また、感染拡大により、医療提供体制への負荷を増大させる場合も考えられる。

・自然感染やワクチン接種による免疫の減衰や、より免疫逃避が起こる可能性のある株の割合が増加、また、今後の接触機会の増加などが感染状況に与える影響についても必要。

今後の取組

・引き続き、感染動向等を重層的に把握し、特に、感染者数増加が経過する地域の医療提供体制を注視していく。

・地方自治体や医療関係者などと連携して、高齢者や基礎疾患を有する方など重症化リスクの高い方等について、ワクチンの接種を行うとともに、感染拡大が生じても必要な医療が提供されるよう、幅広い医療機関で新型コロナ患者に対応する医療体制への以降を引き続き進めていく。

・手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用など、基本的な感染対策を周知する。

感染症に詳しい医師は・・・

 感染症に詳しい、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「厚生労働省が毎週金曜日に発表している最新の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(令和5年24週6/12〜18)』によると、特に沖縄の患者数は、第8波に迫る勢いとなっています。梅雨時は湿気が高く、エアロゾル感染をする新型コロナが流行しにくい季節ですが、梅雨明けの7月から8月には、全国的に大きな流行の波が来るのではないかと危惧しています」と語っています。

ワクチン接種について、感染症に詳しい医師は・・・

 現在、ワクチン接種は『令和5年春開始接種』が行われていて、初回接種(1・2回目接種)を終了した65歳以上の高齢者、12〜64歳の基礎疾患を有する方、医療従事者等はオミクロン株対応2価ワクチンの接種を無料で受けることができます。この2価ワクチンは従来株とオミクロン株(BA.1対応型、BA.4-5対応型)に効果があります。

 しかし、第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は「現在の流行の主流である XBB.1 系統に対しては、既存2価ワクチンでは中和抗体価の上昇が低く、移行しつつある主流流行株に対してより高い中和抗体価を誘導するためには、最も抗原性が一致したワクチンを選択することが妥当である」と提言しています。

 これについて安井医師は、「現在流行が主流となっているXBB.系統の株には、現在開発が進められているXBB.系統に対応したワクチンを接種することが重要ということでしょう。今年の秋から接種が始まる『令和5年秋開始接種』には、XBB.系統に対応したワクチンを接種することが提言されています」

今後のワクチン接種の在り方は…

 しかし、安井医師はこうも話しています。

 「新型コロナが流行し始めた頃は、多くの方が亡くなりましたが、mRNAワクチンの接種が始まり、今では重症化する人が少なくなりました。このようにmRNAワクチンには一定の効果があったと考えられます。しかし、これから先、どのようにワクチンを打ち続けるかについては、議論が必要だと思っています。新たな流行株が現れるたびに、それに対応するワクチンを作り、接種し続けるのか。また、長期的な副反応などがまだわかっていないmRNAワクチンを子どもにも打ち続けることの影響も考えなければなりません。また副反応の少ないワクチンなど安全性の高いワクチンの開発も待たれます。より安全性の高いワクチンにシフトすべきとの考えもあるでしょう。メリットとデメリットを熟慮し、新型コロナワクチンの接種を考えていく時期に来ているのではないかと思っています」

引用
厚生労働省:第122回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年6月16日)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(2023年6月23日)、第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料(2023年6月16日)

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

関連記事


RECOMMEND