厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、2023年第21週(5月22〜28日)の全国の定点当たり報告数は3.63。前週の3.55から微増しています。都道府県別に見ると、沖縄が10.35と一番多く、次いで北海道、岩手、宮城、千葉、石川、山梨が5を超えています。
全国約5000か所の定点医療機関からの報告
このデータは、インフルエンザ定点医療機関からの定点報告です。インフルエンザ定点とは、内科定点数約2000、小児科定点数約3000、合計約5000の医療機関から成っています。
これについて感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「インフルエンザ定点は、子どもの間で主に流行するインフルエンザの流行状況を把握するために構築されたものであり、新型コロナウイルス感染症のように主に成人の間で流行する感染症の患者発生数の推計としては、やや正確性を欠いているかもしれません。それを踏まえた上ですが、流行は徐々にではありますが全国的に拡大傾向にあると言えます。私が勤務する病院には、毎日のように新型コロナの新規患者が入院しています。その多くは寝たきりの方だったり、あまり外に出られない方だったりするのですが、そういう方が感染するということは、社会のかなり広い範囲に感染が広がっているという印象があります」と語っています。
梅雨明けには大流行?
これから先の流行の予測について安井医師は、「すでに梅雨入りしている地方もありますが、湿度の高い梅雨時には、エアロゾルで感染する新型コロナは大きく流行しにくいのではないかと考えています。それでも患者報告数は増えているわけで、この先梅雨が明ける頃には、大きな流行の可能性があると予測しています」としています。
今も罹患後症状(いわゆる後遺症)に悩む人が・・・
また、今も新型コロナの罹患後症状(いわゆる後遺症)で悩んでいる方がいます。代表的な罹患後症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などがあります。また罹患後症状は、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状など、さまざまです。
いわゆる後遺症は、ウイルスが残存するから?
罹患後症状については、世界的に調査研究が進められている最中であり、まだ不明な点が多いですが、現時点の調査研究では、罹患後症状の多くは、時間の経過とともに症状が改善することが多いとされています。
安井医師は臨床医の立場から、罹患後症状の原因の一つとして、ウイルスの残存の可能性を指摘します。
「新型コロナの場合、発熱や咳などの症状がなくなっても、ウイルスが体内に残り、味覚障害や嗅覚障害ほか、様々な症状を引き起こしていることも考えられます。新型コロナウイルス感染症を、風邪と同じようなものだと甘くみてはいけないと思います」としています。
ワクチンはいわゆる後遺症の発症を減少させるとの報告も
新型コロナウイルス感染症の発症や重症化を予防する効果があるワクチンですが、罹患後症状についても発症を減少させる可能性を示唆するという研究が報告されています。またすでに罹患後症状がある方へのワクチン接種については、症状の変化を示すデータもあれば、示さないデータもあり、いずれも今後更なる検討が必要とされています。
いわゆる後遺症はどこで受診?
罹患後症状については、かかりつけ医等や地域の医療機関で十分に対処できる場合があるので、まずは相談してください。自治体によっては、相談窓口や罹患後症状の診療を行う医療機関リストを作成しているところもあるので、利用してください。
引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(2023年6月2日)、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏