【感染症ニュース】特徴的な咳と発熱で人工呼吸器装着のケースも マイコプラズマ肺炎に注意 青森県で増加傾向
2023年6月2日更新
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マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎
 マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマを病原体とする呼吸器感染症です。

 初期症状は、発熱、全身倦怠、頭痛などで、特徴的な症状は咳です。初発症状発現後3~5日から始まることが多く、乾いた咳が経過に従って徐々に増強し、解熱後も長期にわたって(3~4週間)持続します。感染経路は、飛沫感染による経気道感染や接触感染によって伝播すると言われています。感染には濃厚接触が必要と考えられており、保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭などでの感染伝播はみられますが、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くはありません。

 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年20週(5/15〜5/21)によると、全国のマイコプラズマ肺炎患者の定点あたりの報告数は0.08。定点辺りの報告件数は、38となっています。

 一方、気になるのが、全国の報告数の50%を青森県が占めていることです。

 また、青森県感染症情報センターの第21週(5/22-5/28)報告でも、20件の報告がされています。

青森県感染症情報センターは…

 青森県感染症情報センターによると「青森県むつ保健所管内から、報告があがっています。一般に、マイコプラズマ肺炎にかかりやすいのは、6~12歳の小児と言われていますが、青森県の過去5年間における年齢区分別の患者発生割合をみると、1~5歳の患者が占める割合が最も高く、次いで6~12歳となっています。年齢が上がるにつれて、かかりにくくなる傾向がありますが、過去に一度かかっていても、再感染するケースもありますので、13歳以上でも注意が必要です。主な感染経路は、飛沫感染と接触感染ですので、他の感染症対策と同様に、マスクの着用と手洗いを心がけてください。また、長引く咳などの症状があるときは、医療機関で診察を受けるようにしてください。今後の発生状況についても、注視していきたい」としています。

感染症の専門医は…

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は「マイコプラズマ肺炎については、2020年の今の時期辺りから、目立った流行は確認されていませんでしたが、ついに上がってきた感じがします。症状は、発熱や咳で、中には重症化するケースもあります。これまで診療した中でも、1週間寝ていても熱が下がらなかったり、人工呼吸器をつけなければならないケースもありました。子どもから大人まで感染し、流行りだすと厄介な病気のうちの一つです。3年ぶりの流行となると、感受性者が増えている可能性もあります。感染力はそこまで強いとは言えませんが、教室や家庭内などで、感染するケースはあります。今後の感染者数の動向には、注視が必要です」としています。

治療

 抗菌薬投与による原因療法が基本ですが、「肺炎マイコプラズマ」は細胞壁を持たないために、β-ラクタム系抗菌薬であるペニシリン系やセファロスポリン系の抗生物質には感受性はありません。蛋白合成阻害薬であるマクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)が第1選択薬とされてきましたが、以前よりマクロライド系抗菌薬に耐性を有する耐性株が存在することが明らかとなっています。近年その耐性株の割合が増加しつつあるとの指摘もあります。最初に処方された薬を服用しても症状に改善がみられない場合は、もう一度医療機関を受診していただくことをお勧めします。

診断

 特異的IgM抗体迅速検出キットが開発され、臨床現場において活用されてきています。

 幼児、学童の初回感染例では発病1週間以内では陰性を示すことが多く、また単一血清で高い抗体価であっても過去の感染の既往を示している可能性を否定できません。最近は、PCR法やLAMP法による遺伝子検出が次第に多くの検査機関で実施されるようになってきています。

参照
国立感染症研究所ホームページ「IDWR 2012年第35号<注目すべき感染症>マイコプラズマ肺炎」
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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