4月下旬、茨城県で麻しん患者が1名発生
4月27日、茨城県は海外渡航歴のある県内居住者(30代男性・日本国籍)の麻しん陽性が確定したと発表しました。男性は4月14日にインドから帰国、21日に発熱や咳などがありましたが、神戸市に移動。23日に発しんが出たため、神戸市から戻り医療機関を受診したところ、27日に麻しん陽性と判明。症状は発熱、発しん、咳、下痢がありましたが、すでに軽快しています。
5月上旬、東京都で麻しん患者2名発生
ところが、この茨城県の男性が4月23日に乗車した東海道・山陽新幹線(のぞみ50号)に乗り合わせていた東京都の30代の女性と40代の男性が、5月3日に麻しんを発病しました。症状としては2名とも発熱・発しん・咳があり、入院して治療を受けたということです。
麻しんを疑う症状がある方は、医療機関の受診を
麻しんの潜伏期間は約10〜12日で、最大21日間です。感染すると38℃程度の発熱や咳、鼻汁といった風邪のような症状が2〜4日続き、その後39℃以上の高熱とともに発しんが出現するといわれています。
茨城県、東京都はともに、今回の患者が感染性を有する期間に同じ公共交通機関を利用した可能性があり、麻しんを疑う症状が現れた場合は、事前に最寄りの保健所に電話連絡の上、保健所の指示に従い医療機関を受診するように呼びかけています。
麻しん(はしか)とは?
麻しんとは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。上記の症状のほか、肺炎や中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳症が発症するといわれています。死亡する割合も、先進国であっても1000人に1人といわれています。
感染力が非常に強い空気感染で感染が広がる
麻しんは非常に感染力が強く、空気感染でヒトからヒトへと感染が伝播し、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するといわれています。
ワクチン接種が最も有効な予防法
麻しんはワクチンで予防ができる感染症です。現在は定期接種となっており、1歳になった時と、小学校入学前の1年間の2回接種します(多くはMR=麻しん風しん混合ワクチンが接種されます)。ワクチンを接種すると1回で95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得でき、2回接種すれば、1回では免疫がつかなかった多くの方に免疫をつけることができるといわれています。
感染症の専門医は・・・
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「茨城県の男性はおそらくインドで感染されたのだと思いますが、海外では今も麻しんがまん延している地域もありますし、今後も観光客など海外の方が国内に麻しんウイルスを持ち込むという例も考えられます。今回東京都で発症された方はワクチンの接種歴がない、または不明とされていますが、感染しないためには、やはりワクチンで予防することが重要なのではないかと思います。近年、ワクチンの接種率が低下しており、2018年度には98.5%だったものが、2021年度には93.5%にまで低下しています。気がかりなのは、今回、乗り合わせていた方にも感染してしまったことです。免疫を持っている方が減ってきている可能性もあります。いつどこで感染するかわからないと考え、ワクチンで免疫をつけておくことが重要だと思います」と語っています。
定期接種の期間を逃してしまったら・・・
麻しんワクチン(MRワクチン)は決められた期間であれば公費で無料で受けることができます。その期間が過ぎてしまった場合でも自費になりますが接種することはできるので、かかりつけ医などにご相談ください。また、自治体によっては定期接種の機会を逃した方への接種費用の助成を行なっているので、お住まいの市区町村などにお問い合わせください。
引用
茨城県保険医療部感染症対策課:麻しん(はしか)患者の発生について(2023年4月28日)
東京福祉保健局:麻しん(はしか)患者の発生
厚生労働省:麻しんについて、麻しん風しん予防接種の実施状況
東京都練馬区:MR(麻しん風しん混合)の定期予防接種の機会を逃した方への接種費用の助成について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏