健康志向の高まりもあり、トレーニングを行う方などに、高たんぱく低カロリーの鶏肉は、人気の食材の一つとなっています。
調理後にパックされた鶏肉は、スーパー・コンビニなどでも売られていますが、ご家庭で、自ら調理される方もいらっしゃるようです。
中でも、ササミなどを「低温調理」したサラダチキンは、食感も柔らかく、人気とされています。
今回、「感染症・予防接種ナビ」に寄せられたのは、詳しい原因は特定できていませんが、自家製で「低温調理」をした食材が思わぬ感染症の引き金となった疑いがあるケースをご紹介します。
経験談(33歳・愛知県)
2023年1月
21日夜…レバ刺し鳥刺しを食べる
24日25日夜…自作のサラダチキンを食べる(低温調理)
26日昼…激しい頭痛と軽い腹痛の症状が出始める。帰宅後熱が上がり始め39.8℃まで上がり下痢が始まる。
27日…病院へ行きインフルエンザとコロナの抗原検査を受けるが陰性。ウイルス性の感染性胃腸炎と診断される。高熱と激しい頭痛、関節痛があった為カンピロバクターを疑う。
28日…再度病院に行き、鳥刺しを食べた旨を伝え細菌性胃腸炎に効く薬を処方してもらう。薬を飲むと熱が37℃台に下がり始める。依然腹痛と下痢、頭痛、関節痛、ふらつきがある。
※医師の診断を受けています
東京都の世田谷保健所が独自の実験
東京都の世田谷区世田谷保健所は鶏肉の「低温調理」について、独自に実験を行っています。
そのうえで、「インターネットの調理サイトに掲載されているレシピ通りであっても、食材の大きさや厚さ、鍋に同時に入れる肉の量、また湯量や鍋の大きさなど、調理時の条件が異なる場合があるため、注意が必要」としています。
また、「カンピロバクターは、原因食品を食べてから症状が出るまでに2~7日(平均2~3日)かかるため、加熱不足の料理により食中毒を起こしていたとしても、原因に気づかずに同じ調理方法を繰り返してしまう恐れがあります。
カンピロバクターによる食中毒にかかった後、自己免疫疾患のひとつであるギラン・バレー症候群を発症する場合があります。ギラン・バレー症候群は重篤な運動神経麻痺を起こす疾患で、手足や顔面の麻痺、呼吸困難等の症状が出ることがあります。
ご家庭で鶏肉などを調理するときは、じゅうぶんに加熱し、鶏肉を切った後、手や包丁・まな板は、しっかり洗浄・消毒しましょう」と呼びかけています。
「低温調理」の調理温度の目安は?
厚生労働省は、カンピロバクター食中毒の予防法として、第一に、食肉をじゅうぶんに加熱調理することを挙げています。
じゅうぶんな加熱とは、中心部を「75℃以上で1分間以上加熱」することです。
また、「75℃・1 分」と同等な加熱殺菌の条件として、「70℃・3 分」、「69℃・4 分」、「68℃・5 分」、「67℃・8 分」、「66℃・11 分」、「65℃・15 分」が妥当と考えられるとしています。
調理の現場においては、中心温度計の適切な使用により、食肉の中心部の温度が目標とする温度を下回らないことを確認し、確実な加熱殺菌が行われるようにする必要があります。
まとめ
今回のケースは、自家製「低温調理」のサラダチキンが原因なのかは、定かではありません。
しかし、じゅうぶんな温度管理を徹底しない中での「低温調理」は、リスクを伴うと言わざるを得ません。
カンピロバクターによる食中毒を防ぐためには、調理用温度計を使用するなどし、食肉の中心部まで十分に加熱されているかを確認してください。
引用:厚生労働省「食肉の加熱条件に関するQ&A」「カンピロバクター食中毒予防についてQ&A」
東京都世田谷区世田谷保健所「食中毒予防 カンピロバクターによる食中毒に気をつけましょう!」
取材:東京都世田谷区世田谷保健所