国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年15週(4/10〜16)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたりの報告数は0.87。前週と比較すると約1.6倍に急増。これで7週連続増加しています。都道府県別では、鹿児島の4.26を筆頭に、北海道、富山、福井、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、山口、福岡、佐賀、長崎、大分、宮崎で1を超えています。
西日本を中心に広がる流行!ゴールデンウィークでさらに感染が拡大?
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「15週は春休みが終わり、学校が再開したあとのデータですので、子どもたちの間で感染が広がっているということが考えられます。大阪では16週でさらに報告数が増加しており、他の都道府県でも同様の傾向にあると予測しています。今年は特に西日本から流行が拡大している傾向にあり、今は近畿地方や九州地方で報告数が多いですが、今後はその間に位置する中国地方などは、増加していくのではないかと思います。また、もうすぐゴールデンウィークが始まりますので、現在比較的患者の発生が少ない地域にも流行が拡大していくのではないかと懸念しています」と語っています。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症とは、RSウイルスを病原体とする感染症です。RSウイルスに感染している人の咳やくしゃみ、会話の際に飛び散るしぶきなどを吸い込むことによって感染する「飛沫感染」や、感染している人との直接の濃厚接触やウイルスがついている手指や物品(ドアノブや手すり、おもちゃなど)を触ったりなめたりすることで感染する「接触感染」で、感染が広がります。
症状は、軽い風邪のような症状から、重症の細気管支炎や肺炎など様々です。RSウイルスは世界中に存在するウイルスで、生まれてから1年以内に50〜70%が罹患し、3歳までにすべての子どもが抗体を獲得します。それからも何度も感染しますが、重症になることは少ないとされています。
潜伏期は2〜8日、典型的には4〜6日とされていて、発熱、鼻汁などの上気道炎症状が続き、その後下気道(気管、気管支、肺など)に症状が現れます。また、38〜39℃の発熱が起こることもあります。肺炎や細気管支炎など症状が重くなるのはほとんどの場合は3歳以下で、入院事例のピークは生後2〜5か月とされています。
特に注意が必要なのは、乳幼児の感染です。生後1か月未満の赤ちゃんがRSウイルスに感染した場合は、症状がわかりにくく診断が困難で、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。
乳幼児にRSウイルスをうつさない!
RSウイルス感染症の予防について安井医師は、「RSウイルス感染症は感染力が強いので、予防については風邪のような症状がある場合には、他の人に近づかないということが重要になります。特に重症化が心配される乳幼児にうつすのは、ご家庭の両親やきょうだい、あるいは保育の関係者など、乳幼児に直接接する方たちですので、なるべく近づかないようにする。そして世話をするときにはマスクをする、手洗いやアルコール製剤による手指衛生などを心がける必要があります。大人はRSウイルスに感染しても、軽い風邪や症状が出ない場合もありますので、流行が拡大している地域の方は特に注意を払っていただきたいと思います」としています。
保護者や医療スタッフ、高齢者も注意を
RSウイルスは大人がかかっても多くは軽症で済みますが、RSウイルスに感染した子どもを看護する保護者や医療スタッフは、一度に大量にウイルスを吸い込み、症状が重くなる場合があります。また高齢者においては急性の下気道炎をおこし、重症化することもあります。長期療養の高齢者施設などでは集団感染の事例もありますので、注意が必要です。
乳幼児、特に生まれて間もない赤ちゃんにとっては、命の危険があるRSウイルス感染症。幼い命を守るためにも、さらなる感染拡大に注意しましょう。
引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年15週(4/10〜16)、RSウイルス感染症とは
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏