4月に注意してほしい感染症について、感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師に予測を伺いました。
流行の傾向と感染対策を見ていきましょう。
【No.1】RSウイルス感染症
RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスによっておこる呼吸器感染症です。潜伏期間は2~8日、一般的には4~6日で発症します。特徴的な症状である熱や咳は、新型コロナウイルス感染症と似ており、見分けがつきにくいです。多くの場合は軽い症状ですみますが、重い場合には咳がひどくなり、呼吸が苦しくなるなどの症状が出ることがあります。
RSウイルス感染症は乳幼児に注意してほしい感染症で、特に1歳未満の乳児が感染すると重症化しやすいです。お子さんに発熱や呼吸器症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談してください。
感染経路は、飛沫感染や接触感染です。ワクチンはまだ実用化されていないため、手洗い、うがい、マスクの着用を徹底しましょう。家族以外にも保育士など、乳幼児と接する機会がある人は特に注意が必要です。
【No.2】新型コロナウイルス感染症
一時期の流行状況からは、落ち着きをみせていますが、新型コロナウイルス感染症が無くなった訳ではありません。
入院される方は少なくなったものの、症状が悪化され搬送されてくるのは、ワクチン未接種の方が多い印象です。
2022年9月から国内でも、オミクロン株対応ワクチンの接種が始まっています。
しかし、ワクチンを接種していても、感染しないわけではなく、周囲にうつさないわけでもありません。ワクチンを接種した後も、基本的な感染対策を続けるなど決して油断しないでください。体調不良の場合や医療機関・高齢者施設を訪問の際はマスクの着用は必須です。
2023年に入り新型コロナウイルス感染症を除く、他の感染症も流行をみせています。
気がかりなのは、今後、感染者数がどのように推移するかです。4-5月はこれまでも増えていた時期です。引き続き、注意が必要といえるでしょう。
【No.3】インフルエンザ
インフルエンザは集団生活の場で広がる可能性があり、感染動向に注意が必要です。2月末時点で、ピークアウトの兆候が見え始めた感もありますが、手洗い・マスクの着用など基本的な感染対策はとるようにしてください。
インフルエンザの予防には、予防接種を受けることが有効です。3シーズンぶりの流行となりましたが、乳幼児が初めて感染すると重症化しやすいとされています。
例年、春休み期間に、感染報告数は大きく下がりますが、これまで大きな流行のみられなかった地域は、注意が必要です。
【要注意】梅毒
梅毒は、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。
性別関係なく、患者報告数が増えています。特に女性では、梅毒に感染したと気づかないまま妊娠して、先天梅毒の赤ちゃんが生まれる可能性があるので注意が必要です。妊娠中でも治療は可能です。ほとんどの産婦人科では、妊婦健診の際に血液検査してもらえます。妊娠したら必ず梅毒の検査を受けましょう。
早期の投薬治療などで完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。また患者本人が完治しても、パートナーも治療を行うなど、適切な予防策を取らなければ、感染を繰り返すことがあるため、注意が必要です。
感染症の専門医は…
感染症の専門医で大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「RSウイルス感染症の報告数が、何とも言えない増え方をしています。2年前に流行した時期と比べ大きく増えている訳ではありませんが、九州地方や大阪を中心とした近畿地方、北海道で増加傾向にあります。今後、他の地方にも広がりをみせる可能性もあるため、注意が必要です」としています。
監修:大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏