【感染症ニュース】九州や大阪で本格的流行の兆し 乳幼児にインパクトが大きいRSウイルス感染症
2023年3月24日更新
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赤ちゃんを守るために
赤ちゃんを守るために
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年10週(3/6〜12)によると、RSウイルス感染症の患者の定点あたりの報告数は0.35。前週よりも0.01ポイント増加しました。都道府県別では、北海道の1.79をはじめ、佐賀と鹿児島で1を超えています。

RSウイルス感染症とは?

 RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。RSウイルスは日本を含め世界中に分布しています。何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに感染するとされています。

 通常は感染してから2〜8日、典型的には4〜6日の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁などの症状が続きますが、大人や何度も感染している子どもでは、発症しても軽いかぜ程度か、あるいは無症状な場合もあります。

大人には単なるかぜでも、乳幼児がかかると命に関わることも

 しかし、初めて感染する乳幼児では、約7割は鼻汁など上気道炎症状のみで数日のうちに軽快するものの、約3割では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などの症状が現れます。特に乳児期早期(生後数週間〜数か月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。生後1か月未満の赤ちゃんがRSウイルスに感染した場合は、非定型的な症状を呈するために診断が困難な場合があり、突然死につながる無呼吸発作を起こすことがあります。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「大阪府でもRSウイルス感染症は増加しており、定点当たりの報告数は、前週との比較で60%増でした。RSウイルス感染症は都市部で流行が始まり、地方へと広がっていく傾向があります。現在九州地方や、大阪をはじめとする近畿地方で増加の兆しがありますが、これから中国地方や東海、関東地方にも広がっていくと予測され、要注意の感染症です」としています。

2021年には大流行!今年は?

 RSウイルス感染症は、過去5年間では2020年を除いて毎年流行しています。2018、19年のピークは9月頃でしたが、2021年は7月頃にピークを迎え、定点当たりの報告数が6ポイントまで上がりました。去年(2022年)は6月頃から全国的に増え始め、7月にピークが。そしてその後も9月に再び増加傾向になるなど、流行は長引きました。

 安井医師は、「RSウイルス感染症は、かつては秋から冬に流行のピークがあったのですが、徐々に早まり出して、近年は夏にピークを迎えています。ですので、今年これからどのように流行が進み、いつピークを迎えるかという予測は大変難しいです。ただ参考にしているのは、2021年の流行で、この年も春のこの時期から大阪などの都市部でRSウイルスの患者数が増え始めました。新型コロナの影響による移動制限もなくなり、これからは旅行やビジネスなど、人の移動が活発になってくると思いますが、それに合わせてRSウイルスも全国的に広がっていくのではないかと思っています」と語っています。

感染経路、予防方法、治療方法は?

 RSウイルス感染症は予防が難しい病気です。感染経路は飛沫感染と接触感染で、感染している人の咳やくしゃみ、会話している時の飛沫を浴びることで感染します。また、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を触ったり舐めたりすることで感染するので、保育所などで集団感染が起こることがあります。

 予防についてのワクチンは現在ありません。接触感染の予防としては、子どもたちが日常に触れる部分(おもちゃや手すり)などはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤等で消毒し、流水・石鹸による手洗いかアルコール製剤による手指衛生が有効です。また特効薬はなく、治療は基本的には対症療法(症状を和らげる治療)になります。

少しでもかぜの症状があるときには、赤ちゃんに近づかないで

 安井医師は、「乳幼児はあまり外に行くことはないと思うので、RSウイルスに感染する原因は、外出先から帰ってきた大人やきょうだいからうつるということが多いと思います。赤ちゃんに接する人は、手指衛生などを心がけて、少しでも咳やくしゃみなどの症状があるときは、極力接しないようにする。どうしても接しなければならない時はマスクをして感染対策をするなど、とにかく乳幼児をRSウイルスから守っていただきたいと思います」と話しています。

引用
国立感染症研究所:感染症発生動向調査週報2023年10週(3/6〜12)
大阪府:感染症発生動向調査週報2023年10週(3/6〜3/12)
厚生労働省HP:RSウイルス感染症Q&A

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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