【感染症ニュース】口の中や性器にしこりや潰瘍(かいよう)… 流行中の梅毒の可能性 検査はどこで?
2023年3月23日更新
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検査は医療機関や保健所に相談を!
検査は医療機関や保健所に相談を!
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年10週(3/6〜12) 速報データによると、この1週間の梅毒の感染者報告数は全国で200人。今年の累積報告数は2,573人となりました。去年のこの時期(2022年10週)の累積報告数と比較すると、約1.4倍に増加しており、流行の拡大傾向は続いています。年齢別では男性が20〜50代、女性では20代が多くを占めています。

梅毒とは?

 梅毒とは、主に性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接すること)などによってうつる病気です。梅毒トレポネーマという細菌が原因の感染症で、梅毒の病変部位と直接接すること、具体的には、性器と性器、性器と肛門、性器と口の接触などでうつります。

 検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。また、妊娠している人が梅毒にかかると、流産や死産を招いたり、赤ちゃんが梅毒にかかった状態で生まれる先天梅毒になることがあります。決して軽く考えてはいけない感染症です。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「2020年の新型コロナウイルス感染症の流行が始まって以来、他のさまざまな感染症の流行がおさまっていましたが、患者数を伸ばした数少ない感染症の一つが梅毒です。去年(2022年)はついに報告数が1万人を超えましたし、2020年と比較すると約2.2倍に増加しています。流行のスイッチは入ったとみており、引き続き警戒が必要です」と語っています。

病期によって異なる症状が

 梅毒は、病気によって症状の出現する場所が変わります。

 まず、感染後数週間に主に口の中や肛門、性器などにしこりや潰瘍ができることがあります。これらの症状は痛みが伴わないことが多く、治療しなくても自然に治ります。しかし、その間にも病気が進行する場合があります。

 感染から3か月程度すると、今度は手のひら、足の裏、体幹部などに淡い赤色の発しんがでます。小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(しん)」とも呼ばれますが、この時にはすでに梅毒の原因である梅毒トレポネーマが全身に広がっています。しかしこの症状も数週間以内に自然に消えますが、治ったわけではありません。他にも肝臓や腎臓など、全身の臓器にさまざまな症状を呈することがあります。

 そして、感染後数年後には、ゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や、筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。また、大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状・認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられることもあります。

梅毒は治療が可能な感染症

 安井医師は、「梅毒はペニシリン系などの抗菌薬で治療できます。ご自身だけでなく、パートナーの方にもうつしてしまう可能性がありますので、気になる方はきちんと検査を受け、もし感染していたなら、適切な治療を受けていただきたいと思います」と語っています。

気になったら、まず検査を

 梅毒は血液の中の抗体を調べることで、感染しているかどうかがわかります。検査は医療機関のほか、各自治体の保健所などでも受けられます。予約が必要な場合もあるので、事前に問い合わせてください。また、匿名・無料で受けられる場合もあります。結果は1〜2週間後にわかる通常検査のほか、その日にわかる即日検査があります。

東京都では「とくべつ検査(梅毒即日検査)」を実施

 東京都では3月、新宿など都内4か所で各1日ずつ、特別に検査会場を開設し、匿名・無料で検査が受けられ、当日に結果が出る即日検査を実施しました。

 東京都福祉保健局感染症対策部防疫・情報管理課によると、「各会場とも定員40名で予約を受け付けたのですが、どの日も予約でほぼ一杯になりました。キャンセル待ちの状況だったため、実施日を3日追加しました。東京都では普段でも都内の保健所や検査・相談室で検査を受けることができるのですが、皆さんの身近な場所でこうした機会を設けたことによって検査が受けやすくなったのではないか」とのことです。

 また、普段でも夜間や日曜日などの受けやすい時間に検査を行っている自治体もあります。梅毒は早期発見・早期治療が重要です。気になる方は、まず検査してみましょう。

引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年10週(3月6日〜12日) 、「梅毒とは」
厚生労働省HP:梅毒Q&A
東京都:リーフレット『「東京都とくべつ検査(梅毒即日検査)」を行います。』

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏
東京都福祉保健局感染症対策部防疫・情報管理課

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