【感染症ニュース】今年は2万人? 梅毒が昨年を上回るペースで増加中 早期治療が肝要  東京都では無料検査も
2023年3月2日更新
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小さなバラの花のような発しんは、梅毒の特徴!
小さなバラの花のような発しんは、梅毒の特徴!
 国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2023年7週(2/13〜19) 速報データによると、この1週間の梅毒の感染者報告数は全国で201人。今年の累積報告数は1,687人となりました。昨年の同時期(7週まで)と比較すると、約1.4倍になっており、流行が拡大している可能性があります。

昨年の報告数は約1万3千人

 2010年の1年間の報告数はわずかに621人。その後年々増加し、2019年と2020年に減少に転じたものの、2021年から再び増加。昨年(2022年)の梅毒の報告数は12,966人でした。

感染症の専門医は・・・

 感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師も、梅毒の感染者の増加に注目しており、「今年もこのペースで増え続けると、1年間の感染者数は2万人に迫るのではないかと予測しており、流行のスイッチが入ったのではないかという印象を持っています。梅毒は性感染症で、性風俗産業の中でも感染者が出ています。少しでも不安がある方は、まず検査をされることをすすめます」と語っています。

梅毒は感染症。その症状は?

 梅毒とは、梅毒トレポネーマという細菌が原因の感染症で、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつります。梅毒は病期によって症状の出現する場所や内容が異なります。

・感染後数週間(Ⅰ期顕症梅毒)
 主に口の中や肛門、性器等にしこりや潰瘍(かいよう)ができることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることがあります。これらの症状は痛みが伴わないことが多く、治療をしなくても症状は自然に治ります。しかし、その間にも病気が進行する場合があります。

・感染後数か月(Ⅱ期顕症梅毒)
 感染から3か月程度経過すると、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれます。この時期に小さなバラの花に似ている「バラ疹(しん)」とよばれる淡い赤い色の発しんが、手のひら、足の裏、体幹部などに出ることがあります。その他にも、肝臓や腎臓など、全身の臓器に様々な症状を呈することがあります。発しんなどの症状は、数週間以内で自然に治りますが、病気はさらに進行していきます。

・感染後数年(晩期顕症梅毒)
 感染後数年程度経過すると、ゴム種と呼ばれるゴムような腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。また大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下などを伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆(せきずいろう)がみられることもあります。

脳や脊髄に感染が及ぶと、神経梅毒に

 また、脳や脊髄など中枢神経に梅毒トレポネーマが入り込むと、髄膜炎や脳梗塞などが起こることがあります。これは、感染のどの病期にも起こるとされています。

妊娠している女性が感染すると、赤ちゃんが先天梅毒になることも

 さらに、妊娠している女性が梅毒にかかると、胎盤を通して胎児に感染し、死産、早産、新生児死亡が起こったり、生まれても先天梅毒といって、様々な障害が出る可能性があります。

予防、そして検査を

 梅毒の予防としては、粘膜や皮膚が梅毒の病変と直接接触しないようにすること。具体的には、性交渉の際にはコンドームを適切に使用することが重要です。しかし、コンドームで100%予防できるわけではありません。

 梅毒はペニシリン系などの抗菌薬で治療することができます。そのためには、きちんと検査をして、感染しているかどうかを確かめることです。検査は血液検査で、保健所などで匿名・無料で行っている地域もあります。東京都では2023年3月、4つの会場で特別検査を実施するとのことです。事前予約が必要ですが、匿名・無料で検査が受けられ、結果は当日に知ることができます。

引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年7週(2月13日〜19日)
厚生労働省HP 梅毒
東京都福祉保健局感染症対策部防疫:パンフレット「東京都とくべつ検査(梅毒即日検査)を行います」

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏

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