厚生労働省は、今年3月13日以降のマスク着用の考え方の見直しについて発表しました。現在は屋外では原則不要、屋内では原則着用となっていますが、この日以降、マスクの着用は個人の主体的な選択を尊重し、マスク着用は個人の判断が基本となります。しかし、新型コロナウイルスの感染を周囲の方に広げないために、またご自身を感染から守るために、マスクの着用が推奨される場面もあります。ではどのような場面においてマスクをした方がいいのでしょうか。
着用が効果的な場面
高齢者など重症化リスクの高い方への感染を防ぐために、次のような場面ではマスクの着用が推奨されます。
・医療機関を受診する時
・高齢者など重症化リスクの高い方が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設などを訪問する時
・通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバスに乗車する時(新幹線や高速バスなど、概ね全員の着席が可能であるものを除く)
症状がある場合などには着用を!
また発熱や咳など新型コロナウイルス感染症の症状がある方、検査で陽性となった方、同居する家族に陽性者がいる方などは、やむを得ず外出する場合にはマスクの着用で周囲への感染を広げないようにすることが重要です。
感染症の専門医は・・・
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「新型コロナウイルス感染症第8波の感染者数は全国的に減少しており、当医院の入院患者も減少しています。しかし、今でも院内感染・クラスターの発生の可能性はありますので、病院内でのマスク着用は必須と考えています。高齢者施設など、新型コロナにより重症化する方がいる場所では、従業員・利用者に関わらず、これからも引き続きマスクの着用をすることが、予防につながると思います。社会は、健常者だけで成り立っている訳ではありません。弱者を守るという視点を持つことも大切です。」と語っています。
学校でのマスクの着用は?
今回厚生労働省が発表したマスク着用の考え方の見直しは、学校においては4月1日から適用されることになっていますが、それより前に実施される卒業式においては、卒業式の教育的意義を考慮し、児童生徒等はマスクを着用せず出席することを基本とするとしています。
卒業式におけるマスクの取扱い
この件に関し、文部科学省ではさらに詳しい通知を発表しています。
・児童生徒及び教職員については、入退場、式辞・祝辞等、卒業証書授与、送辞・答辞の場面など、式典全体を通じてマスクを外すことを基本とする。来賓や保護者等はマスクを着用する。
・国歌、校歌等の斉唱や合唱を行う時や、複数の児童生徒によるいわゆる「呼びかけ」を実施する時は、マスクの着用など一定の感染症対策を講じた上で実施します。なお「呼びかけ」の時に歌を歌う場合も同様です。
・基礎疾患があるなど様々な事情により、感染不安を抱きマスクの着用を希望する。また、健康上の理由によりマスクを着用できない児童生徒もいることなどから、学校や教職員がマスクの着脱を強いることのないようにする。また、児童生徒間でもマスクの着用の有無による差別・偏見等がないよう適切に指導する。
・幼稚園や認定こども園では、小学校就学前の幼児についてはこれまでもマスク着用を一律に求めないとしてきましたが、卒園式についても同様で、地域の感染状況などを踏まえ、学校の卒業式に準じてマスクを取扱う。
飲食店・イベントなど各業種でマスク着用のルールの見直しが
また、飲食店やイベントなど各業種でマスク着用のルールの見直しが行われます。飲食店では必須項目としていた「食事中以外のマスク着用の推奨」が削除。イベントでは主催者等が出演者や参加者等に対して、必ずしも「マスクの着用」等を働きかける必要はなくなります。
しかし、新型コロナウイルスの感染の可能性は、全くなくなったわけではありません。自身が感染しないように、また周囲にうつさないために、マスクを上手に使うことが重要です。
引用
厚生労働省:マスクの着用について
文部科学省:卒業式におけるマスクの取扱いに関する基本的な考え方について(通知)
内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室:マスク着用の考え方の見直し等に伴う、「業種別ガイドライン」「第三者認証制度」「イベント開催制限」の事務連絡について
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏