新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)。
未だ原因が不明な点も多くあり、世界的に調査研究が進められています。
症状の多くは、時間の経過とともに改善することが多くある一方で、一部の方に長引く症状があることも分かってきました。
最終回となる今回、広島市立広島市民病院の松村俊二・総合診療科部長に、これまでお話しいただいた症状の現状での治療法などについて前回に続き、解説していただきます。
不眠 生活リズム整えて
コロナにかかると自宅療養や入院が必要になるので、睡眠のリズムが乱れます。まずはそのリズムを元に戻すことが大切です。子供や学生は気持ちを落ち着けるため、寝る前にテレビやスマートフォンを見ないようにしましょう。睡眠薬は、どうしても眠れない場合に副作用の少ないものを短期間だけ処方します。
嗅覚・味覚障害 命にかかわるケースも
新型コロナウイルスによる味覚・嗅覚障害は、ウイルスが嗅神経を傷つけることが原因で起きると考えられています。そのため風邪などの時と違い、鼻づまりや鼻汁という症状は出ないことが多いです。
嗅覚に障害があると、汗や便の臭いが分かりません。そうすると自分の健康状態に変化があっても気づきませんよね。ガスが洩れていたり、料理が焦げていたりしても気づかないので、一歩間違えると命にかかわる危険があるのです。
味覚障害の60~80%は2週間以内に自然に改善すると言われています。2回目でもお話ししましたが、嗅覚と味覚は密接に関係していています。子供さんが給食を食べられなくなったら、医師や学校と相談し、子供さんが食べられる物をお弁当として持っていけるようにしてください。
脱毛 ストレスが原因
コロナにかかってから2ヵ月後くらいから始まり、だいたい100日後まで続くことが多いとされています。コロナにかかった精神的・肉体的なストレスが原因と考えられています。入浴時に排水溝が塞がるほどごっそり抜けるので、特に女性の方は不安になると思います。しかし髪の毛は健康な時でも毎日約50〜100本が抜けています。その脱毛時期が早まっただけです。たいてい半年以内に収まりますので安心してください。
治療としては以下の対応があります。
①発毛・育毛成分ミノキシジルを含む市販薬を塗布したり、皮膚科に相談する。
②男性の場合にはアンドロゲン性脱毛症(AGA)治療薬の内服
※ED(勃起障害)などの男性機能低下や肝機能障害などの副作用もありますので医師とよく相談してください。
まとめ
コロナ後遺症は、感染と後遺症の因果関係が不明な場合も多くあります。
一方、診察にあたる松村医師は、診察での経験から、症状と治療法について解説して頂きました。
今回で、いったんシリーズは、最終回となります。
しかし、今後も、コロナ後遺症に関する情報は引き続き、取材して参ります。
コロナ後遺症は、自治体によっては、相談窓口を設けている所もあります。
体調に不安を感じている方は、行政機関やかかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。
「感染症・予防接種ナビ」では、医師との研究活動の一環として、コロナ後遺症の経験談を募集しています。
また、コロナ後遺症について詳しく知りたい方は、広島県医師会が2022年9月に発行した「救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症」をご覧下さい。
取材:広島市立広島市民病院 松村俊二総合診療科部長
参照:救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症(広島県医師会)