新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)。
未だ原因が不明な点も多くあり、世界的に調査研究が進められています。
症状の多くは、時間の経過とともに改善することが多くある一方で、一部の方に長引く症状があることも分かってきました。
シリーズ第5回となる今回からは、広島市立広島市民病院の松村俊二・総合診療科部長に、これまでのお話しして頂いた症状の現状での治療法、お話に出なかった症状などについて解説していただきます。
咳・痰 漢方薬の効果があるケースも
感染症による炎症で細い気管支がふさがったり組織が固くなったりすることで、咳が長引くことがあります。コンコンという乾いた咳もあれば、ゼーゼーというアレルギー性の咳もあります。
治療としては一般的な咳止めや去痰薬、喘息などに用いる吸入薬が有効です。抗不安作用を持つ半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など漢方薬の併用も効果がある場合があります。子供さんは服用量を量を大人の4分の1から2分の1に減らしてください。
また、レントゲンやCT検査などで異常が見られない場合には、精神・心理的要因が原因かもしれません。
倦怠感、筋肉痛・関節痛 十分な休息を
第2回でもお話ししましたが、一番効果的なのは十分な休息を取ることです。無理して職場復帰すると余計に悪化して起き上がれなくなることもあります。職場などと相談して休職し、体調を見ながら徐々に復帰することを勧めます。薬物治療をするなら、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの漢方薬を使います。
筋肉痛などには鎮痛剤を服用し、抑うつ状態が見られる場合には、精神科に相談して抗うつ薬を処方することもあります。
また、感染でホルモンの分泌が少なくなると、うつ症状や倦怠感、筋力低下など、更年期障害と同じ症状が出ます。この場合は亜鉛製剤や補中益気湯などの漢方薬を使います。症状が強い場合は、泌尿器科や婦人科と相談して、ホルモン補充療法を行うこともあります。
頭痛 長引く場合は検査を
当院に「コロナは治ったのに頭痛が収まらず、学校に行けない」という高校生の患者さんが来られました。CT検査の結果、脳梗塞を起こしていることが分かり「まさか、こんな若い人が」とびっくりしました。コロナにかかってから6ヵ月以内は、脳梗塞や脳出血を発症することがありますので、頭痛が長引く場合は若い方でも油断せず、検査を受けるようにしてください。
まとめ
コロナ後遺症は、感染と後遺症の因果関係が不明な場合も多くあります。
一方、診察にあたる松村医師は、診察での経験から、体調不良が治まらない方へ医療機関で検査を行うよう呼び掛けています。
自治体によっては、コロナ後遺症についての相談窓口を設けている所もあります。
体調に不安を感じている方は、行政機関やかかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。
「感染症・予防接種ナビ」では、医師との研究活動の一環として、コロナ後遺症の経験談を募集しています。
また、コロナ後遺症について詳しく知りたい方は、広島県医師会が2022年9月に発行した「救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症」をご覧下さい。
取材:広島市立広島市民病院 松村俊二総合診療科部長
参照:救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症(広島県医師会)