新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)。
未だ原因が不明な点も多くあり、世界的に調査研究が進められています。
症状の多くは、時間の経過とともに改善することが多くある一方で、一部の方に長引く症状があることも分かってきました。
シリーズ4回目となる今回も、広島市立広島市民病院で、コロナ後遺症の診察にあたる松村俊二総合診療科部長を取材。国民のみなさんへのメッセージをいただきました。
弱者を思いやる行動を 重症化を防ぐためにワクチンを
現在、コロナが重症化しにくくなっていることは事実です。しかしそれはワクチン接種が進んだからであり、弱毒化した訳ではありません。高齢者や基礎疾患を持つ人、アレルギーなど健康上の理由からワクチン接種が受けられない人達にとって、命取りになりかねない病気であることは変わっていません。実際に、現在入院が必要となる患者さんのほとんどはそういった事情を持つ人達であり、重症化して亡くなられる人もいます。広島県でも亡くなられる患者さんのほとんどが高齢者などの弱者です。
最近では、ウイズコロナと言われています。しかし、お年寄りに感染させたらどうなるのか、亡くなったり重症化したりする可能性が高いということを我々医療者も皆さんも十分に意識して、そういった人達を守るために、思いやりを持った行動を取ってください。
ある高齢の女性が、2年近く会っていない孫と自宅で会食をして感染したことがありました。もちろん窓を開け、ソーシャルディスタンスを取っていました。コロナ禍になって、ほとんど外出はしない方だったのですが、ワクチン接種は受けておられず、感染してしまったのです。PCR検査で陽性の結果が出た時は、がっかりしながらも「よくなりますよね」とおっしゃっていましたが、残念ながら亡くなられました。このことはお孫さんの心にも大きな傷を残したと思います。
コロナ症状重ければ後遺症も…
おじいちゃん、おばあちゃんに会うなとは言いません。高齢者は会話がなくなれば認知能力が衰え、身体の機能も低下するということがあります。しかし、会うのであればお互いワクチンを打って(出来れば3回以上)、感染症対策もしっかり取っていただきたいと思います。
パンデミックは収まる兆しを見せず、今は誰でもコロナにかかる世の中です。飲み薬や注射薬などいろいろな薬が出てきました。でもかかってしまったら中等症、重症になる可能性はあるわけです。そうすれば後遺症も強い症状が出ます。
後遺症に確立された治療法なし だからこそ…
後遺症には確立された治療薬がなく、漢方薬も人によって効いたり効かなかったりです。コロナはかからないのが一番ですが、万一かかってしまったら無症状、軽症で終わるようにぜひワクチンを打ってください。
当院の患者さんで言えば、3回以上ワクチンを打っておられる方はほとんどが症状を残さずに帰られます。しかし2回しか打っていない、全く打っていないという方は肺炎を起こしたり重症になったりするケースが見られます。
広島県内では今も毎日感染者が何千人と発表されますが、県民はもう慣れてしまっていますよね。でもよく見てください。毎日何人か亡くなっています。たいていは高齢者です。もしかしたらその中に自分の身内が入るかもしれない、と考えていただきたいです。国は行動制限を出していませんが、みなさんにはぜひ、高齢者や弱者を思いやる行動をとっていただきたいと思っています。
まとめ
厚生労働省によると、罹患後症状(後遺症)の代表例として、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などが挙げられています。
コロナ後遺症の診察にあたる松村医師は、診察での経験から、新型コロナに感染し中等症・重症となった場合、強い後遺症が出る可能性を指摘しています。
感染時の重症化リスクや後遺症から、自分と周囲を守るため、ワクチンの接種を検討してみてはいかがでしょうか。
「感染症・予防接種ナビ」では、医師との研究活動の一環として、コロナ後遺症の経験談を募集しています。
また、コロナ後遺症について詳しく知りたい方は、広島県医師会が2022年9月に発行した「救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症」をご覧下さい。
取材:広島市立広島市民病院 松村俊二総合診療科部長
参照:救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症(広島県医師会)