正月休みも終わり、職場や学校などが通常に戻った今、新型コロナウイルスの新規陽性者数が再び増加傾向にあります。1月11日に厚生労働省が発表した全国の新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数は198,873人。1週間平均は181,847人で、前週平均よりも約6万6千人増加しています。1月12日には、全国の死者数が1日の発表としては過去最多の489人を記録しました。インフルエンザとの同時流行も懸念される中、新型コロナの感染にはまだまだ注意が必要です。
医療機関がひっ迫、感染症の専門医は・・・
感染拡大とともに、医療機関のひっ迫も心配されています。1月4日のデータでは、病床全体のひっ迫具合は59.4%、うち重症者用病床のひっ迫具合は29.7%。いずれも前週の数字を上回っています。
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「当病院も大阪府からの要請を受けて、1月6日から2病棟を新型コロナの専門病棟にしました。現在は45〜6名の方が入院されていますが、先日94歳の方が亡くなられました。入院患者には高齢者の方が多く、心筋梗塞や脳梗塞などの症状で入院し、検査をしてみると新型コロナに感染していたというケースもありました」と話しています。
新型コロナウイルスは、どのように感染するの?
新型コロナウイルスは、感染者の口や鼻から、せきやくしゃみ・会話などのときに排出されるウイルスを含む飛沫、またはエアロゾルと呼ばれる更に小さな水分を含んだ状態の粒子を吸い込むか、感染者の目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内の近接した環境において感染するとされていますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分・混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。
冬の乾燥・温度低下に要注意
また空気が乾燥すると、新型コロナウイルスに感染しやすくなると言われています。
安井医師はこの理由について、「空気が乾燥すると、せきやくしゃみなどに含まれる飛沫が小さくなります。そうすると、肺に届きやすくなるので、感染しやすくなるのではないか言われています」
さらに、冬場の温度低下も、要注意です。厚生労働省が発表した新型コロナに関する資料によると「低い室内温度により、呼吸器系と循環器系の疾患の罹患率と死亡率が上昇することについて多くの報告があることを踏まえると、『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気と、室温を適切に維持することを両立することは重要である。(中略)常時、居室における温度及び相対湿度を18℃以上かつ40%以上に維持する方法が望ましい」としています。※相対湿度=ある温度のときに、空気中にどの程度水分が含まれているかを示す値。天気予報や一般的な家庭用の湿度計などで用いられています。
窓開けの工夫、加湿器の利用で、温度低下・乾燥を防ぐ
とはいえ、窓を大きく開けると、室内の温度が下がってしまいます。室内の温度がなるべく下がらないように換気をするためには、
・短時間に窓を全開にするよりも、一方向の窓を少しだけ開けて常時換気を確保するほうが、室内変化が抑えられます。
・暖房器具の近くの窓を開けると、入ってくる冷気が温められるので、室内の低下を防ぐことができます。この場合カーテンなどの燃えやすいものを暖房器具から遠ざけるなど、火災の予防に留意してください。
・人のいない部屋の窓を開け、廊下を経由して、少し暖まった状態の新鮮な空気を人のいる部屋に取り入れる(2段階換気)
などが有効です。
また、部屋の乾燥を防ぐためには、加湿器の利用も有効です。
関東地方を中心に、太平洋側では雨が少なく、乾燥した状態が続いています。火の用心とともに、感染症対策もお忘れなく。
引用
厚生労働省:データからわかる新型コロナウイルス感染症情報(令和5年1月12日)、
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)、
冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について(令和2年11月27日)
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏