厚生労働省発表の「インフルエンザの発生状況について第49週(12/5-11)」によると、インフルエンザの定点当たり報告数は0.25。前週の0.13から数字を伸ばしました。例年であれば、本格的な流行が始まるこの時期。新型コロナとともにインフルエンザの流行が気がかりです。
岩手県では流行シーズン入り
岩手県では第49週(12/5-12/11)の定点あたりの報告数が1.57となりました。「定点あたりの報告数」とは、一つの医療機関でこの週に何人の患者が発生したかという平均値ですが、1を超えると「流行入り」、10を超えると「注意報レベル」、30を超えると「警報レベル」となります。岩手県では、第49週に県全体で流行シーズン入り。地域でも盛岡市、県央、宮古、釜石が1を超える流行入りとなっています。中でも盛岡市で前週第48週の1.55から6.36と急増しています。
各地でインフルエンザによる学級閉鎖の報告が
盛岡市では12月に入り、小学校や高校で延べ4クラスが学級閉鎖となりました。厚生労働省の統計によると、今シーズンはすでに17の都府県で学級閉鎖が報告。第49週も大阪の5クラスを始め、岩手、秋田、群馬、埼玉、東京、富山、兵庫、沖縄で報告がありました。
感染症の専門医は・・・
感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「インフルエンザの定点あたりの報告数は、12月に入り増加傾向にあります。私が勤務している大阪府でも、第49週には大阪市北部や堺市で流行期入りの目安となる1を超えました。都道府県別で見ると、大阪、京都、東京、神奈川など大都市圏でも報告数が多くなっています。これから年末年始に向けて、帰省や旅行などで大都市圏から地方へ人の移動があると思いますが、それと同時にインフルエンザの流行も全国的に広がっていくのではないかと懸念しています。」と語っています。
インフルエンザの予防法は
インフルエンザの予防法としては、次のものがあります。
・外出後の手洗い(流水または石けん)
・適度な湿度(50〜60%)の保持
・十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
・人混みや繁華街への外出を控える
・流行前のワクチン接種
ワクチン接種は重症化予防に効果あり
インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気で、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの症状が比較的急速に現れるのが特徴で、普通の風と同じようにノドの痛み、鼻汁、せきなどの症状も見られます。多くの場合は発症後1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症などの重い合併症が現れ、入院治療や死亡する場合もあります。
インフルエンザワクチンの最も大きな効果はこの「重症化」を予防することで、国内の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。
インフルエンザワクチンは13歳以上の方は1回接種、13歳未満の方は2回接種を原則としています。すでに接種済みの方も多いと思いますが、子どもや高齢者、免疫力の低下している方は重症化リスクが高く、流行前にワクチンによる予防をすることが重要です。
ワクチン接種の副反応にも正しい知識を
インフルエンザワクチンの副反応としては、接種した約10〜20%の方に接種した場所の赤み、はれ、痛みなどが。また全身性の反応としては、発熱、頭痛、寒気、だるさなどが接種した5〜10%の方に起こりますが、どちらも通常2〜3日で消失します。またまれに、ショック、アナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、発赤、かゆみ、呼吸困難など)が見られることがあります。接種後30分間は接種した医療機関内で安静にし、またその後に異常が認められたときには速やかに医師に連絡してください。
引用
厚生労働省: インフルエンザの発生状況について第49週(令和4年12月16日)、インフルエンザQ&A
岩手県感染症情報センター:感染症発生動向調査第49週速報
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏